中は思っていたより広々としていた。
壁際には大きな観葉植物が並べられ、天井からは小さなオレンジ色の照明がいくつもぶら下がっていて、落ち着いた空間を醸し出していた。
俺たちは真ん中あたりの席まで案内され、ゆったりとしたソファに腰をおろした。
アンティークな木材を使ったテーブルの上には、キャンドルが置かれている。
ユラユラと揺れる炎を眺めながら
「ゆっくり落ち着けて、良いところですね。」
『気に入ってもらえて嬉しいです。
ランチもすごく美味しいですよ。
高橋さん、メニューはどうしますか?』
金谷さんがテーブルに広げてくれたメニューを2人で見ながら
「これ美味しそう。」
『期間限定も惹かれますねぇ。』
「…いやでも、唐揚げは昨日食べたもんなぁ。」
なんてお喋りしながらメニューを決め、結局、金谷さんはサーモンのクリームパスタを、俺はハンバーグセットを注文した。
ご飯を待っている間、自己紹介も兼ねてお互いのことを話し合う。
金谷さんの名前は「りお」さん。
年齢は俺より3つ下で26歳。
小さい頃から物を作ったり、デザインしたりすることが趣味な彼女は、大学時代にアルバイトをしていた今の雑貨屋さんで、そのまま正社員として働いているらしい。
『自分が良いなと思って仕入れた物をレジに持ってきてくれたりとか…。
毎月開催している体験コーナーで、物作りの楽しさを知ってもらえた時とか、すごく嬉しくて。
私、今のお仕事が大好きなんです。』
そう語る彼女の表情は凛としていて、ドキッとしてしまった。
「金谷さん、若いのにしっかりしてるんだね。偉いなぁ。」
…なんか俺、おじさんみたいだな。
そう思ったのは彼女も同じみたいで、俯き加減で笑うのを堪えている様子だった。
「…さっきの、おじさんみたいって思っただろ。」
『……っ、はい。…ふふっ』
「遠慮せずにもっと笑えば良いのに。」
『だって、せっかく褒めてもらったのに…あははっ』
結局堪え切れなかった彼女はしばらく笑いが止まらなくて、つられて俺まで止まらなくなった。
2人で笑い合っていると、カフェの店員さんが注文したランチを持ってきてくれた。
いただきますをして、早速ハンバーグを食べてみると、熱々のジューシーな肉の旨みとソースが口の中に広がり、「うまいっ!」と思わず声に出してしまう。
それを聞いた金谷さんは嬉しそうに頷いてくれていた。
「りおちゃ…」
俺は言いかけて止まる。
いくら仲良くなったとは言え、いきなり馴れ馴れしいよな。
「金谷さんってさ、毎日そんなに笑ってんの?」
『高橋さんが面白すぎるせいですっ。
…あと…………』
「ん?」
『……りおちゃんで大丈夫です。』
少し顔を赤らめてそんなことを言われたら、俺まで照れてくる。
「ありがと。
俺のことも、好きなように呼んでいいよ。」
『いいんですか?
…えっと、じゃあ……んーっと…』
眉間に皺を寄せて真剣に悩むりおちゃんを見ていると、なんだか意地悪をしたくなってきた。
「ほんと、なんでもいいよ。今のままでもいいし、遼君でもいいし、高橋兄貴でも低橋くんでもいいし。笑」
『なんですかっ、低橋君って!笑
…名前、変わってますよ!』
またツボに入った彼女は、しばらくパスタが喉に通らないほど笑いが止まらなくなっていた。
ようやく落ち着いたりおちゃんは、笑い過ぎて涙目を浮かべながら
『私も下の名前で、遼君って呼ばせてもらいますね。』
と言って、照れ隠しなのか黙々とパスタを口いっぱいに頬張りだした。