『一利を興すは一害を除くに若かず』

―興一利不若除一害―

 

 

<十八史略>

元代の名宰相 “耶律楚材(やりつ・そざい)”の言葉である。亡くなった大平元首相がこれを座右の銘にしたといわれる。

 

元は騎馬民族モンゴルの建てた王朝で、とかく収奪をこととする傾向が強かった。そのなかにあって耶律楚材は民生の安定を重視し、収奪政策にブレーキをかける役割を果たした。しかも、太宗(フビライ)の信任も厚く、元の廟堂に重きをなしたといわれている。かれの横顔を『十八史略』はつぎのように伝えている。

 

「楚材毎(つね)に言う、一利を興すは一害を除くに若かず、一事を生ずるは一事を減ずるに若かず、と。兵居妄(みだ)りに言笑せず。士人に接するに及んでは、温恭の容、外に溢る。その徳に感ぜざるなし」

 

かれの時代は、「一利を興す」すなわち新規の事業を始めるのは、ただちに民衆からの収奪を意味することが多かった。この言葉も、そういう背景のなかで生まれてきたのである。現代でも、健全経営をはかる指針として参考になるかもしれない。

 

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