『福(さいわい)は微なるより生じ、禍は忽(おろそか)にするより生ず』
―福生於微、禍生於忽―
<説苑>
「微」は、些細な善行。今のことばで言えば、小さな親切といってよいかもしれない。
「福」は、物質的な幸いだけでなく、精神的な満足感も含んでいる。それは、ほんのちょっとした心遣いによっても得られるものだというのが、前半の一句。
しかし、これとは違った解釈も成り立つ。後半の句と対照させることによって、「福」は成功、「禍」は、失敗と解するのである。すると全体の意味は…
「成功は細事を忽(ゆるがせ)にしないことから生まれ、失敗は細事を忽にすることから生まれる」
となる。
『説苑(ぜいえん)』もこれに続けて 「日夜恐懼(にちやきょうく)し、ただ卒(おえ)ざるを恐る」と語っているから、こう解釈するほうが全体として意味が通っているかもしれない。
「忽(こつ)」は、慣れや油断から生まれる。いつも、気持ちを引き締めて仕事にあたれば、「禍」を避けることができるというのだ。
※ 恐懼(きょうく): おそれかしこまること。
守屋 洋 (著)
文庫: 409ページ
出版社: PHP研究所 (1987/12)
ISBN-10: 4569563805
ISBN-13: 978-4569563800