『呉越同舟』
―呉越同舟―
<孫子>
数年まえ、中国を旅行して蘇州に寄ったとき、地元の若通訳氏から、「呉越同舟の出典はなんですか?」と聞かれたことがある。ところが昨年行ってみると、別な通訳氏ではあったが、「呉越同舟」という言葉を織り交ぜながら、ずいぶんと要領よく蘇州の説明をしていた。
蘇州はむかし呉の都のあったところだが、蘇州の歴史を説明するには、この言葉を使うのが親切なのである。
ところで、「呉越同舟」という言葉は、現在ではたんに中の悪い者同士が同じテーブルにつくことを意味するだけだが、原典の 『孫子』 の意味は、これとはだいぶ違う。
呉の人間と越の人間はむかしから憎しみあっている。その彼らがもし同じ船に乗り合わせ、大シケにあって難破しそうになったらどうするか。助かりたい一心で、憎しみなど忘れて一致協力するに違いない。
※ 組織の活性化をはかるのもこれと同じ要領だと、その譬えとして 「呉越同舟」 が使われているのである。
守屋 洋 (著)
文庫: 409ページ
出版社: PHP研究所 (1987/12)
ISBN-10: 4569563805
ISBN-13: 978-4569563800
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