『安居(あんきょ)なきに非(あら)ず、我に安心なきなり』
―非無安居也、我無安心也―
<墨子>
心さえ満ち足りていれば、どんな境遇におかれても安らかに暮らすことができる。安らかに暮らすことができないのは、我が心に問題があるからだ、というのである。
『韓非子』に、こんな話がある。
斉の国の慶封(けいほう)という重臣が国許で反乱を起こし、失敗して越の国に逃げようとした。それを見た親族のものが、「晋のほうが近いのに、どうして晋に逃げないのか」とたずねたところ、慶封は、「越のほうが遠いから、身を隠すのに都合がいい」と答えた。
これを聞いて、親族の者は語ったという。
「心さえ入れ替えたら、晋に居ても恐れる必要はない。肝心の心がそのままでは、越まで逃げていったところで、安心はできない」
※ むろん環境の大切なことは否定できない。だが、どんなに環境に恵まれても、心が不安定では、真の安らぎは得られないということである。
守屋 洋 (著)
文庫: 409ページ
出版社: PHP研究所 (1987/12)
ISBN-10: 4569563805
ISBN-13: 978-4569563800
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