『遠水は近火(きんか)を救わず』
―遠水不救近火也―
遠くにあるものは、役に立たないことのたとえである。日本で言えば、「遠くの親戚よりも近くの他人」というのが、これに近いかもしれない。
むかし、魯の国は、隣の斉という強国から圧力を受けて苦しんでいた。そこで魯の王様は息子たちを晋と楚に仕えさせ、いざというとき、この両国の援助に期待をかけようとした。それを見て、犁鉏(りしょ)という重臣がこう語ったという。
「ここに溺れかけている者がいるとします。越の人間は泳ぎがうまいからといってわざわざ助けを求めに行っても、間に合うはずがありません。火事が起こったとします。海の水はいっぱいあるからといって、わざわざ引いてこようとしても、これまた間に合いません。遠水は近火を救わず、です。晋、楚はたし かに強国ですが、なにぶん遠方でございますから、隣国の斉に攻められたときに当てにすることはできません」
韓非について
韓非(かんぴ 紀元前280年頃? - 紀元前233年)は中国戦国時代。戦国時代の政治家。法家の代表的人物。
もとは韓子と呼ばれていたが、唐代の詩人韓愈を韓子と呼ぶようになり、それからは韓非子と呼ばれるようになった。
韓非は韓の公子の末流であり、若い頃に李斯と共に荀子に師事した。
韓非の母国韓は戦国七雄の中でも最弱国であり、隣国の秦に日に日に領土を削られていた。韓非の理想はどうにかこの弱い母国を強国へと生まれ変わらせる事であった。韓非は生まれつき吃音で演説は上手くなかったが、その文章は天才であり、度々韓王に対して国政改革の上書をしたが、受け入れられず、その思想を 『韓非子』に著した。
守屋 洋 (著)
文庫: 409ページ
出版社: PHP研究所 (1987/12)
ISBN-10: 4569563805
ISBN-13: 978-4569563800
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