『患いは忽(ゆるが)せにする所より生じ、禍は細微より起こる』
―患生于所忽、禍起于細微―
 

<説苑>

 ちょっとした気持ちのゆるみから、大きな事故が起こるのだという。よく工事現場などに「油断一秒、怪我一生」などといったポスターが貼られていたものだが、『説苑』がここでいわんとしているのも、そういったことにほかならない。

 人間のしでかす失敗の本質は、昔も今も、あまり変わっていないのかもしれない。

 これは誰でもそうだが、難しい仕事をかかえ、それに一生懸命打ち込んでいるときには、緊張感で張り詰めている。気持ちのゆるみが起こるのは、むしろ仕事が順調に運んでいるときだ。

 また、これも人間の犯しがちな過ちの一つだが、なにか問題が起こっても、これはまぁ些細な問題だからと、目をつぶろうとする。その結果、問題をこじらせて、いよいよ解決を難しくしてしまうのである。

 好調なときこそいっそう気持ちを引き締め、些細な段階のうちに禍の芽を摘み取るのが賢い処世なのかもしれない。

※ 芥川龍之介のことばを借りれば「富士山登山の道、半ばは五合目ではなく九合目」と思え、と。故事成語の中にも「百里の道を往く者は九十九里をもって半ばとせよ」というのと同じく、仕事でも「九合目をもって半ばとせよ」というような言葉もございます。

まさにそこが一番大変なところなのです。

 

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