『貧しくして怨むなきは難く、富みて驕(おご)るなきは易し』
―貧而無怨難、富而無驕易―

 

<論語>

  財産もあり地位もあるとなれば、自分ではずいぶん気をつけていても、ついそれが表に出て、人を見下すような態度をとりがちだ。だから、そのような恵まれた状態にあっても人を見下すような態度をとらないのは、なかなかできた人物である。

 しかし、孔子に言わせれば、それはまだ易しい。むずかしいのは、貧しくても僻(ひが)み根性をもたないことだという。

 人間は誰でも不遇な状態におかれると、なんでおれだけこんなみじめな思いをしなければならないのかと、人を怨み、天を怨みたくなる。これは人情の自然であって、その逆は、よほど出来た人間でも難しい。

 孔子という人は、逆境に育った人である。幼い時に父を失い、小さいときから生活の苦労に耐え、貧乏暮らしの辛さ、苦しさをつぶさに嘗(な)めながら成長した。

※ この言葉には、そういう人物の実感がこめられている。人間学の至言と言ってよいだろう。

 

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