茶トラ -2ページ目

茶トラ

観劇大好き!映画大好き!本大好き!
観劇、本、DVDの感想中心のブログです。

 

 

作 古川健

演出 小笠原響

 

1972年、日本復帰直前の沖縄・・・復帰運動のリーダーとして皆に慕われている島袋亀太郎(下條アトム)は引退を決意していた。

彼の望んだ本土復帰はアメリカ軍の基地のない復帰だ。基地がそのままでは、本当の復帰とは言えない。じくじく足る思いと、自分の不甲斐なさを噛みしめていた。

彼を支えてきた妻俊子(島田歌穂)や覚めた気持ちで父を見てきた息子悟(原田祐輔)、彼を慕う運動家の仲間たち(鳥山昌克、高橋洋介、真栄田春子)は戸惑う・・・。

 

それぞれが抱えた戦争の傷、それぞれが胸に抱く故郷への強い想いが、ひしひしと伝わってきます。

彼らは兵士ではなかった。武器を持たない一般人だった。逃げまどい、飢え、傷つき・・・戦争が終わったら、帰る土地さえも奪われていた…なんて理不尽なことでしょうか。

喜んでいいはずの本土復帰は、アメリカ軍基地はそのままで、農民の奪われた土地は還っては来ず、軍用機の轟音もそのままだった。

基地のない、平和な沖縄・・・それが、復帰運動をした人たち、沖縄の人たちの願いだったのです。

落胆し、挫折したリーダーの下條さんの苦悩と怒り・・・あきらめから、仲間の家族の励ましと支えでまた立ち上がっていく様子はにこぶしを握りしめました。

 

下條リーダーを支えた妻の島田歌穂さんの肝の据わった逞しさが、とても力強かったです。

苦難をプラスに変えたおおらかさと強さが、頼もしかったです。

 

本当の平和は、沖縄に基地がなくなること・・・・世界から、武器や基地が消えたら、人が諍いをやめたら、政治家たちが本当の国民の幸せとは何かを考えることを始めたら…いろいろ考えた舞台でした。

ありがとうございました。

 

 

 

 

 

策・演出  楢原拓

 

2013年の特定秘密保護法の施行をテーマに作られた作品で、再演だとのことです。

 

お笑い芸人になって苦節20年・・・どうにも芽が出ない小島圭(熊野義啓)は、ベテラン芸人だけが出れるお笑いコンテストの出場準備に余念がなかった。明日が本選!という日、彼は突然公安に逮捕される。まるで訳が分からない・・・。

自衛官だった弟と間違えられたのだ・・・ネットにアップされた中東で死んだ自衛官たちの死の真実・・・それは国の秘密だった・・・。

突然消えた圭に仲間たちは心当たりを探し回るが見つからない…どんどん時間は迫っていく。

そこに彼を訪ねてきた新聞記者、女性たち・・・そして、妹。

女性たちは死んだ自衛官たちの遺族だった。彼女たちにも知らされなかった愛する人たちの死の真実・・・国が秘密にしたがるその真意とはどこにあるのだろうか?

 

お笑いの世界という、まるでこの世の闇とは一番遠いところにある世界を舞台にしたのが面白いと思いました。

でも、お笑いの世界も見えるところは派手だけども、その後ろには何人もの悔し涙や血がにじむような思いがある・・・見える所だけが世界じゃないそんな気がしました。

圭の行方を捜しながら、弟の人となりが見えてくるという演出がすごく良かったです。

彼を追いながら、時代も見えるし、何よりも彼の閉そく感、苦しみが伝わってきました。

私たちが知らなくていいことは、政治家たち(それも一部のトップにいる)が知らせたくないことなのかもしれない・・・彼らの手足となっている公安の人たちは、同じ日本国民として疑問は持たないのでしょうか。

 

ベテラン刑事と新米刑事のコンビの丸尾聡さんと阿比留丈智さんの掛け合いが,すごく面白かったです。

それから、お笑い第七世代風の大島・新島・三宅島もツボでした。

 

うすら寒さを感じる永田町の空気、劇場ならではの挑戦、問いかけをこれからも期待します。

素晴らしい舞台を、ありがとうございました。

 

 

 

 

 

今年の観劇はじめは、新国立劇場バレエ団の舞台からです。

テレビ放送も終わってしまい、さらりと感想を・・・。

 

「セレナーデ」

音楽 ビョートル・イリイチ・チャイコフスキー

振付 ジョージ・バランシン

ステージング パトリシア・ニアリー

 

寺田亜沙子 柴山紗帆 細田千晶

井澤駿  中家正博

渡部与市 飯野萌子 川口藍 中田実里 

赤井綾乃 今村美由紀 加藤朋子 

菊池飛和 北村香菜恵 古村美沙

関晶帆 中島春菜 原田舞子

土方萌花 廣川みくり 山田歌子 横山柊子

宇賀大将 清水祐三郎 趙載範 浜崎恵二郎

 

 

美しい!!!この一言に尽きます。

バランシンは新国にとても合っていると思います。

オーケストラの素晴らしい音楽とダンサーさんたちが見事に融合し、美しさが増幅していきます。

ブルーの美しい衣装、美しい照明もあって、私は静かな湖の朝もやの中で踊る精霊たちを思い浮かべました。

人間ではない透き通った美しさがあります。

それが一番感じられるのが、細田千晶さんです。彼女の重力を感じさせない軽やかさ、妖しい輝きも感じました。透き通った美しさは、ドキドキします。

寺田亜沙子さんも素晴らしかったです!!!

彼女には人間にあこがれた人魚姫みたいなイメージを持ちました。悲しいくらいのあどけなさがあった気がします。

中家さんのサポートは、なんて頼もしいのでしょうか!伸びやかなダンスも美しい!

 

「ライモンダ」

音楽 アレクサンドル・グラズノフ

振付 マリウス・プティパ

改定振付・演出 牧阿佐美

 

小野絢子&福岡雄大

 

鉄板の二人!堂々と貫禄たっぷりな二人のダンスは、見ごたえがありました。

 

米沢唯&渡邊タカフミ

 

この二人には物語を感じました。

ライモンダとジャンが、紡いで来た愛の軌跡がそこにありました。

ロミオとジュリエットの感動を思い出しました。

 

「海賊」

音楽 リッカルド・ドリーズ

振付 マリウス・プティパ

 

木村優里&速水渉悟

 

初組み合わせの二人、若々しくて、初々しくてとても微笑ましく感じました。

優里ちゃんの大輪の花のような美しいダンスとエネルギッシュで逞しい速水君のダンスは、本当に楽しかった!!!

速水君、5月のドン・キホーテでバジルデビューです。楽しみ~~。

 

 

「DGV」

音楽 マイケル・ナイマン

振付 クリストファー・ウィールドン

 

第1区 本島美和&中家正博

第2区 小野絢子&木下嘉人

第3区 米沢唯&渡邊タカフミ

第4区 寺田亜沙子&福岡雄大

池田理沙子、木村優里、奥田花純、玉井るい、広瀬碧,増田裕子,朝枝尚子、

井澤諒、福田圭吾、速水渉悟、原健太、小柴富久修、中島駿野、中島瑞樹,渡邊拓朗

 

日本初演の演目です。

フランスの高速鉄道TGVのパリとリール区間開通を記念して作られた作品だそうです。

旅がテーマで、音楽もスピード感があって楽しいし、ダンスもユニークでスタイリッシュでとても楽しかったです。

そして、パートナーの組み合わせが、目新しくて、意外性があって、すごく良かったです。

キャスティングはウィールドンさんですよね。

新しいパートナーと組むことで、それぞれにまた違った魅力が出てくるのが感じられました。

 

とにかく楽しい3日間でした。

素晴らしい舞台をありがとうございました。

 

3月には、「マノン」の公演があります。

楽しみです!!!

 

 

脚本・演出  タカイアキフミ

 

ガンで余命半年を告げられた父(三上市朗)は、覚悟を決めて、それまで黙っていた家族の秘密を打ち明ける。

それは長男・康介(須貝英)が養子であったこと・・・次男・亮二(加藤ひろたか)も戸惑うが、愛情深い両親の心に家族は心を一つにして、父の治療に協力する。そして、3年・・・父は死ななかった。治療が成功したのだ。しかし、家族の状況は大きく変わっていた。母(美津乃あわ)が脳梗塞で倒れ、寝たきりになった。次男は家を出た。長男は、屈託を抱えたまま芝居の道をあきらめ、警備の仕事をしながら、次男の婚約者(橋爪未萠里)と交替で母の介護をしていた。

その頃、父はといえば・・・・。

 

三上お父さんの辛い気持ちが伝わってきます。

死ぬのは自分のはずだったし、その覚悟はできていた。

なのに最愛の妻が脳梗塞の後遺症で寝たきりになってしまって、その事実を受け入れがたく、息子たちの母への献身をしり目に、酒を飲み、タバコを吸い、風俗に通う・・・・その姿は息子たちにはどうしようもなくだらしなく、情けなく映る。

でも、彼が何度も冷蔵庫からそうめんを取り出し、妻がやってくれたと同じように氷を入れ、練り梅を入れて食べる姿は、妻への愛を感じて、とても切なくなりました。彼は本当に彼女を頼りにしていたんだなぁ。

風俗嬢に求めるのも、妻の面影であったり、妻との生気にあふれた生活の思い出だった気がする。

クールでちょっと投げやりで、いい具合にすさんだ風俗嬢の大塚由祈子さんが、三上お父さんの哀れを引き立てました。

ラスト近くのお父さんのうたた寝のシーンには、泣いてしまいました。とても素敵な演出でした。

 

須貝お兄ちゃんを観ていると、両親がとても愛情をこめて育てたことがわかるし、長男としての責任感も感じました。

加藤弟の下の子だなぁ・・・ちょっと要領が良くて、兄貴を頼りにしていて・・・・兄弟の仲の良さも心の救いでした。

ただ弟は母の今の姿は見たくないようでした・・・・それもわかる気がします。私も母の衰えた姿は見たくなかったし、記憶には元気な時の姿を置いておきたかった・・・。

 

とても楽しかったのは、お兄ちゃんの友達の佐久間の用松亮さんでした。

暗くなりそうになると、彼が登場し、笑わせてくれて、悲しいことがあってもすぐそこには笑いがあり、安らぎがある…なんて、思って観てました。

 

狭い劇場に家族の居間を中心に病院、居酒屋、ホテルの一室などをうまく配置していて、いつでも彼らの帰る場所があるように思いました。

この舞台を思い出すと、切なくて、温かな気持ちになります。

皆別れる日が来ます。残るのは、愛した記憶、愛された思い出・・・そんな愛を残して、そんな愛を持って、この世を後にできたらいいな。

 

素晴らしい舞台でした。

ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

小野絢子&福岡雄大、米沢唯&井澤駿、木村優里&渡邊タカフミの3キャストを観ました。

、もうだいぶ時間がたってしまったので、ざっくり簡単な感想を・・・。

 

新制作の「くるみ割り人形」も回を重ね、このバージョンがようやくこのバレエ団に定着したような気がしました。

ダンサーさんの体が自然に動いているような(こういう表現でいいのかわかりませんがな)柔らかさがあって、それぞれが物語の中で、舞台の上で、とても楽しげで、光を放っていました。

 

ねずみの王様は悪者ですが、愛すべきキャラクターです。

奥村康祐くん、渡邊タカフミくん、井澤駿くんの王子様たちが、演じました。

個性豊かでとても楽しいです。

奥村君のやんちゃで、爆発力抜群なパワフルさは可愛らしさがのぞきます。憎めない~~。

王子、やっつけないでよ!と思っちゃいます(笑)

カリスマ王様なのはタカフミ君です。慕われてるギャングの親分みたいで、子分に慕われ、子分たち思いでした。

仕草が大きいので、迫力あります。チャラリラリラリラ~~と、「ゴットファーザー」のテーマ曲が浮かんだりして(笑)

駿君も以前よりたくましさが増していて、頑張ってるなぁ・・・と。

 

パーティーシーンでの見どころ(?)は、ルイーズを取り巻く3人の中の老人です。

スコットランドの衣装で、タータンチェックのスカート姿・・・・なんでルイーズの恋の争奪戦にいるのかが謎なんですが、老人ですよ。

福田圭吾君と高橋一輝君のWキャストでした。

二人ともキレキレなダンスで、とても楽しいです。特に圭吾君は、老人の時と踊る時の落差が激しいので、お、おじいちゃん・・・すごいびっくりな感じで、笑っちゃいます。

そして、彼が老人をやらない日は、クララのおじいさんを演じます。

杖をついて足元もおぼつかない感じ、パーティーのお部屋の上手に座ってます。座るまでもおばあさんや給仕さんと何やらやり取りしています。いろいろ注文がうるさそうです(笑)。パーティーのお客の品定めをしたり、ルイーズのダンス日本語感心したり、フィリッツかな?男の子がもらった剣でチャンバラごっこ(?)をして、切られてあげたり・・・・死ぬマネが長いので、男の子が心配になっちゃうのです・・・シャンパンをこぼしたりと、もう目が離せないのです。毎回同じではないので、見逃せません。

息子夫婦と踊る時もお茶目で、息子に対して威厳を保とうとしているのも微笑ましいです。

お相手の菊池飛和さんが、またとっても可愛らしいおばあさんです。

このパーティーは、新国立劇場バレエ団のダンサーさんたちの美男美女ぶりも楽しみです。

衣装がとてもシックで上品でゴージャスで、お部屋のあちこちで歓談している彼らは美しいの一言!

 

この演目の見どころの雪の結晶たちのコールドは、あまりの美しさに涙が出ます。

故郷の雪の降る夜の美しさを思い出します。

 

2幕の蝶の踊り花何であるんだろうか?は、私の中で謎なんですが、奥田花純さんのダンスは素晴らしいです!!

温かみがあり、しなやかで美しくて、大好きです。

 

ロシアの踊りは、なんといっても福田圭吾君が好き!

ダイナミックで、キレキレで、周囲との調和もばっちりです。

 

アラビアの踊りは、安定のゴージャスさと輝きの本島美和さんにうっとりです。

木村優里ちゃんが、前回よりも格段と成長し、華やかさと色気を増し、とっても良かったです。彼女は公演のたびに成長を見せてくれるので、本当に楽しみなダンサーさんです。

 

中国の踊りは、女性陣の奥田花純さん、五月女遙さん、広瀬碧さんは、それぞれ可愛らしいし、表現力も抜群で素晴らしかったです。

男性陣は安定の高橋一輝君、とっても可愛らしい渡部義樹君がいいです。

 

花のワルツの黄色とオレンジの衣装は大好きです。

お花をそのまま履いているようなスカートが可愛いし、グリーンと金をあしらった衣装とぴったり合います。

ここは華やかで、のびのびのした明るさを感じて、とても素敵でした。

さすが前田文子さんキラキラ

 

簡単な感想ですが、とても楽しくて、素晴らしい公演でした。

ありがとうございました。

 

来シーズンの12月は、また「くるみ割り人形」です。

新キャストもあるんじゃないかと、楽しみにしています。

 

 

 

 
 

作 オーウェン・マカファーティ  翻訳 平川大作

演出 鵜山仁

 

初演から9年・・再々演のベルファストの町は、シアタートラムと広くなりました。

舞台の上に広がる遠い街並み、客席にも飛び出してくるモジョとミキボーのエネルギーに胸が熱くなります。

 

文学座の浅野雅博さんと石橋徹郎さんの二人で17役を演じ分けます。

二人の持ち味、旨味が満載で、芝居の面白さが詰まっている舞台です。

何回観ても面白くて、ますますこの二人(役も役者さんとしても)が好きになります。

 

北アイルランドのベルファスト、1970年の夏、プロテスタントとカトリックが住み分けをしにらみ合う中、二人の少年は出会った。

二人とも学校が居ずらく、仲間と呼べる友達がいない。

モジョの家はプロテスタントで中流家庭だが、夫婦仲がよくない。

ミキボーの家はカトリックで夫婦は仲が良いが、貧しい。

ちょっと背伸びして、ちょっと粋がって、映画の「明日に向かって撃て」のプッチとサンダースにあこがれた彼らの冒険と夏が過ぎていきます。

とても楽しそうな彼らの背後には、いつも大人の争いの影が付きまといます。

そして、突然断ち切られる彼らの子供時代・・・・ラストのミキボーの悲しいまなざしには胸が痛みます。モジョのまだ理解できない子供らしさに切なくなります。

なんて悲しいのでしょうか・・・。

 

とても素晴らしい戯曲で、とても素晴らしい舞台でした。

また彼らに会えることを楽しみにしています。

ありがとうございました。

 

 

 

作  ノゾエ征爾

演出 木野花

 

ぶっ飛んだ感じで始まった舞台、何々?な感じで、食いつく。

老人たちがスーパーの駐車場でもめてる・・・・。

お互いの話を聞いているようで、全く聞いていなくて、思い思いに自分のことばっかりしゃべってる・・・どこかで見たようなあせるあせる

そこに挟まれる猿子(高田聖子)を中心にした思い出が、それが過去をスライドか、古びたフィルムを観ているような感覚になる。

息子のことすら忘れてしまう、彼らの過去の記憶の数々に笑いながら、とても切ない・・・・。

笑かしに来たな~と思ったら、見事な返しがありました。

ノゾエ征爾さんのセンスに脱帽です。

 

高田聖子さんの笑顔がとてもいい!

山超え,谷超え、川に流されて、な人生でも最後の時にはあっけらかんと笑っていられたらいいなと。

 

体当たりの川上友里さんととぼけた入江雅人さんに笑い、猿子とまるこ・めるこの池谷のぶえさんのやり取りに笑い、竹井亮介さんの不思議な存在感に笑い、一人現実を生きる青年の大鶴佐助さん大熱演に拍手しました。

 

ずしんと来るものがある舞台でした。

ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作 ラジブ・ジョセフ  翻訳 小田島創志

演出 小川絵梨子

 

暗い中、二人の若い衛兵が守っているのは、タージマハールの建設現場。

夜が明けると16年間も建設中だったタージマハールが完成し、その姿を現す。

最初にその姿を見るのは、偉大なる皇帝閣下シャー・ジャハーン・・・彼らは後ろを振り向くことさえ許されない。

生真面目でえらい父親を持つフマーユーン(成河)と貧しい育ちで自由な発想の持ち主のバーフル(亀田佳明)は、大親友だった。

一番下っ端の彼らは、いつかここを脱出したいと思っている。

しかし、彼らが皇帝陛下に下された命令は、二度とタージマハールのような美しいものを作らないように建設に携わった人間たちの手を切り落とすこと…2万人の手、4万本の手・・・・・。

 

1幕の二人のやり取りにでは、育った環境が違えど、物事のとらえ方がちょっと違ってもお互いを理解し大事に思っているのがよく伝わって来て、二人の関係がとても微笑ましく、温かく思えました。

でも、二人のいる世界は絶対的な支配者に支配された世界・・・特にフマーユーンには逆らうことのできない強い父親がいる。

権力と支配の中で、亀田バーブルの遠くまで見える目と成河フマーユーンのどこか怯えを持ったような目が印象的でした。

しんとした人気の感じない暗闇の向こうに白く美しく光るタージマハールがぼんやり見えるような気がした一幕のラストは、私もドキドキしました。

 

2幕、血みどろの舞台…とても凄惨でした。あまりにリアルで、恐ろしくもありましたが、彼らがおかれた状況、この世界の残酷さが体感できた気がします。想像だけでは補えない・・・・・。

黙々と4万本の手を切り落とし、傷口を焼き続け・・・・その血の海の中で、二人の若者は己を失うまいと必死にしゃべり続けます。

権力が正義と思えば、その残虐さが違ったものになる・・・・でも、その正義が、正しいわけではない。そのことに気が付いてしまうと、考えはどこに行き着くか・・・・。

フマーユーンの目とバーブルの目が変わっていき、二人の心がどんどん離れていく・・・・。

あまりに辛すぎる・・・と苦しくなりました。

バーブルは死んでしまったのかな・・・・フマーユーンは友を切り捨て、自分の心も殺してしまったような気がします。

一人で警備についているフマーユーンの姿はとても小さく感じました。

 

キャスティングが素晴らしい!!!

研ぎ澄まされた感性を感じる二人、大好きです!!!

 

暗闇、照明、音の反響のさせ方、地下室(かな、腕を切り落とした場所)の空気の澱み方などの演出もすごく良かったです。

二人の残酷な人生がとてもドライに演出されていた気がして、それが余計二人を際立だせていたように思いました。

 

素晴らしい舞台でした。

ありがとうございました。

 

 

「バグダッド動物園のベンガルタイガー」もまた観たいです。

 

 

 

 

 

 

脚本・演出   中村ノブアキ

 

舞台奥にはさびれ表彰台らしきものがあり、舞台の脇をぐるりと囲んでいるのは各国の国旗を掲揚するポールだろうか、それもさびれている。そして、物語は2023年の日本、東京オリンピックの賑わいはもう遥かかなた・・。

経済は後ろ向き、日本の失速は人々を飲み込んでいく・・・。

 

蒲田のプレス工場では、仕事が減り、リストラを余儀なくされていた。苦楽を共にした従業員のリストラは社長にもとって辛いものだった。

そんなところに離婚届けを置いて家出したベテラン社員の妻で、社長の妹が突然帰って来た・・・・。

木更津の小さなコンビニでは、深夜営業をやめていたが、本社の営業からセルフレジを使っての無人の深夜営業を勧められていた。

不景気で治安も悪く、景気も悪い・・・元ギャングだった店員の協力で何とか経営は成り立っていた。その店員と店主の娘は結婚を考えていたが・・・。

札幌の空港では和風旅館を営んでいた父の49日を終えて、東京に帰ろうとする二人がいた。

二人は豊洲の発展を見込んで彼女の父の出資で洒落たリストランテを開いたが、豊洲に人は集まらず、客足は遠のく一方だった。

 

3つの物語が交互に展開し、それぞれに今と過去をも行ったり来たりして、彼らの時代に振り回された生活、人生が描かれている。

とてもうまく構成されていて、それぞれの場面の人たちの生活や選択してきた人生の岐路がよく見えた。

そして、身近な人たちだった。

ああすれば良かった,こうすれば良かったと失敗した時に思うけども、その失敗から何か新しい希望の光をつかめたらいいなと観ていて思った。

 

WOWOWで1964年の東京オリンピックのドキュメンタリー映画を観たのだけども、立ち直ろうとする日本のエネルギー、一心に前進していくエネルギーは今の比較にならないものを感じる。

オリンピックが始まれば素直に選手たちを応援するけども、2020の東京オリンピックには冷めた思いがある。

メディアがオリンピック、オリンピックと煽るのを見るたびにどこかよその国の出来事のように思え、空々しい。

 

とてもタイムリーで、これからの日本の課題、問題も盛り込まれたいい舞台でした。

ありがとうございました。

 

 

 

 

作 松原俊太郎

演出 今井朋彦

 

この物語の感想をどう表現したらいいのか・・・。

固有の名前を持たない様々な状況の人物たちが登場し、それを6人の役者さんたちが演じるのです。

着古した(?)衣装を着、白塗りなどこかすさんだ感じのするメーク・・・彼らは一様に疲れている?迷っている?すさんでいる?そんな彼らは、無表情に無感情にとめどなくしゃべり続けるのです。

知らない同士が行き会った交差点・・・そこから何かが始まるのか、何かが終わるのか・・・。

心の中が言葉になって、駄々洩れになっているような気がしました。

この言葉たちはいま生きている人たちの物でもあり、この世から姿を消してなお思いを残している人たちの物でもあるように聞こえます。

散文のように、詩のように、時には歌うかのように言葉は舞台からあふれて、あふれてきます。

棘のように刺さるし、やすりでこすられているような気もしました。

とても共感する言葉や引っかかる言葉がたくさんあって、日頃感じる不満やら、不安やら、行き場のない憤りやらが、彼らの口から飛び出しているようでもありました。

 

この「メモリアル」に登場している人たちも私も歴史の記憶には残らない、ただ時代の一部として消化されるだけ・・・・時々、人混みを歩いていると感じることがありませんか?今はもういない人たちの声なき声・・・どこかで昔と今がつながっているような不思議な感覚。

 

 

脚本の松原俊太郎さんの感性はすごいです!

「山山」は、舞台は見逃したのですが、脚本を読んで、その物凄さに圧倒されました。

原発事故の後処理の話なのですが、タッチは「メモリアル」です。

膨大なセリフ、コミカルでシニカルで、とらえどころがないようで現実を容赦なく描いていて・・・・ただ、ただ凄い。

舞台、観たいです。

 

役者さんたちも凄かったし、今井さんのシンプルな演出がセリフを際立たせ、観ている私たちにこの物語を考え、受け止める自由を与えてくれたと思います。

 

凄い舞台でした。

ありがとうございました。