作 ヘンリック・イプセン 翻訳 原千代海
演出 西川信廣
作曲・音楽 上田享
作詞 宮原芽映
土居裕子さんのノラは、ものすごく可愛らしくて、夫に献身的で、無邪気な一面とちらりと見える強さがありました。
そして、美しい歌声!
大場泰正さんのヘルメルは背が高くて、イケメンで、この二人の夫婦は絵に描いたようなお似合いな夫婦・・・なんですが・・・。
ただただ愛でるように妻を慈しむヘルメルですが、本当に彼女を愛していたのか?
彼女の犯した過ちは、彼が重病の時に亡き父のサインを偽造してお金を工面したこと・・・・・そのお金があって、彼女の手厚い看護のおかげがあって、夫は健康を取り戻し、銀行の仕事も成功し、幸せに暮らせた・・・・しかし、秘密はいつかばれる。お金を貸してくれたのは夫の嫌う同僚のクロクスタ(畠中洋)だった。彼は銀行のリストラに引っかかり、何とかそれを逃れようと、借用書の偽造サインをネタにノラを脅してきた。
ノラは夫に何とか知られないように努力するが・・・。
まあ、腹が立ちましたね!
自分の所有物のように妻を扱っているのも、最初からちょっとイラッとしてましたが、妻の不正を知った時に自分の立場しか考えず、おたおたし、ノラを責める大場ヘルメルをどつきたくなりました(笑)
悪いことだけど、自分のために間違いを犯した妻の切ない心の内に耳を傾けようともせず、彼女を愛しているようすもない・・・。責め続け、自分の立場、保身の言葉しかはかない夫の横で、どんどん冷めていくノラの表情が印象的でした。
彼女は一度として、自分を中心に物事を考えたことが無かった。全ては夫のため、家族のため、夫の好きな服を着て、夫の好むような生活をして・・・ようやく自分は何だったの?と、気がついたのですね。彼女の中の愛も義務感だったのかも知れない・・・。
そして、彼女にあった強さが目を覚ました気がしました。病気の夫と幼い子どもを抱えて、その難局を切り抜けることが出来た彼女が弱いはずがない!と、思います。
これからの生活も彼女なら、きっと何とか頑張るに違いない!と思いました。
夫のほうが腑抜けになるかも・・・。
あの時代の物語と思うけれども、この時代でも娘、妻、母の名称に縛られる自分がいます。
男性も同じかも・・・・。
そして、その名称のくくりでしか見てくれない世間も同じです。
やれやれ・・・だけど、夫は捨てられても、子どもは置いて行けないだろうなぁ。
と、ちょっと子どもたちを案じた私です。
舞台セットがとても素敵でした。
筒状(?)の壁の正面にクリムトの絵が描かれていて、側面にはミュシャの絵があり、クリムトの壁がぐるりと開くと居心地の良さそうな居間があり、居間の上の部分は欄間のようになっていて、多分ノルウェーの素朴な景色が彫られているのかな・・・。
とても素敵でした。
この居心地のいい家はノラが居てこそ成り立つものだけど、それに気がついていないヘルメルは愚かです。
そうそう、畠中さんがジョニー・ディップに見えてしょうがなかったです。
音楽劇という形態が、この物語にはすごくあっていたように思いました。
素晴らしい舞台をありがとうございました。

