渡りきらぬ橋 温泉ドラゴン 6.26(水)ソワレ | 茶トラ

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作・原田ゆう

演出・シライケイタ

 

男性たちが演じた、明治、大正、昭和の地位向上に奮闘した日本女性初の劇作家長谷川時雨の半生。

この舞台を観るまで、長谷川時雨の存在を知りませんでした。

樋口一葉を敬愛し、作家として成功し、劇作家としても名を成した彼女・・・彼女の生きていた時代は、男社会です。女は家に縛られ、社会的な発言力も無く、ともすれば商品として扱われていました。恵まれた家庭に育った彼女も例外ではなく、親の取り決めた結婚をしますが、相手はお金持ちの放蕩息子で、彼女を妻として、対等な人間として扱いませんでした。体を壊し実家に帰るも離婚するまでに3年もかかります。

その後の彼女は、年下の彼女のファンと恋仲になるも上手くいかず、彼女に小説を送ってきた若い作家と内縁関係となり、彼を流行作家に育てます。そんな中で、彼女は同士の女流作家たちと雑誌「女人芸術」を創刊し、女性の社会進出の後押しをするのですが・・・・。

 

舞台に作られた白木の日本橋の川向こうは見えません・・・このセットがすごく素敵でした。

彼女が目指したことは、令和の時代でもまだ達成されていないかもしれません。まだ、私たち女性は橋を渡っている途中なのかもしれないと舞台を観終わって思いました。男女平等といいながら、共働き夫婦の女性の負担は大きいし、職場での地位や女性の待遇にはまだまだ差別があります。でも、声を上げてくれた先輩たちがいたから、前に進みこそすれ、後退することはもう無いでしょう。

 

男性たちが演じたこの舞台、とても冷静な視点がそこにあったし、もしかしたら男性たちが感じている窮屈さに共感もあるのかもしれないと感じました。観ていて、違和感はまったく無かったです。

 

当たり前のように妾を囲い、当たり前のように女を遊ぶ・・・その当たり前という感覚がとても良く描かれていました。出てくる男たち、そして最初のうちの女性たちもその感覚を持っているのが、ざわりとしました。なんておぞましいことか。

後に夫が若い妾を囲い、そのことに時雨はとても傷つき、怒りますが、彼女はその妾の面倒もみるのです。私は、彼女はお金で買われた彼女にじくじく足る気持ちを持ちながら、庇護せずには要られなかったのではないかと思いました。でも、あまりに辛い心のうちもわかりました。

長谷川時雨(本名長谷川ヤス)を演じた筑波竜一さんが、素晴らしかったです。

 

小嶋尚樹さんは親戚のおばちゃんにそっくりで、一人大うけしてしまいました。

カゴシマシローさんの林芙美子、エネルギッシュで、おおらかで、二回のでんぐり返りは素晴らしい!(笑)

皆さん着物の所作がとてもきれいでした。特に、時雨のお母さんの成田浬さんの年季の入った江戸っ子母さんの所作はとても自然で、女性が演じているのかと一瞬思ったほどです。

 

時代の流れを「徹子の部屋」のパロディを使って、どんな時代が後にあったか、どんな人たちが彼女を支えていたか、そんなことを笑わいも交えて見せてくれる演出がとても良かったです。

 

シライケイタさんの演出は何本か拝見しているのですが、温泉ドラゴンは初めてでした。

またこの次ぎ観たいと思います。

素晴らしい舞台を、ありがとございました。