新正午浅草 荷風伝  劇団民藝   4・25(木)ソワレ | 茶トラ

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実は、永井荷風の作品は読んだことがありません。

この風合いのあるチラシと若手で頑張っている梶野稔さんの出演ということで、観に行ってきました。

 

明治12年に生まれに昭和34年に79歳で亡くなった永井荷風・・・最晩年から物語は始まります。

永井荷風を演じたのは、水谷貞雄さんです。パンフ、劇場ロビーに貼られた荷風の写真にそっくりです。

飄々とし、孤高の気高さがあり、ちょっと偏屈で、愉快な荷風・・・同業者との付き合いを嫌い、遊女たちの世界に入り浸り、父の期待を裏切り、自由に生きた荷風・・・優しくて、ロマンチストな雰囲気もあったし、とても冷静な目も持っていた荷風がいました。

とても好きな場面は、夢で父親(伊藤孝雄)と話すシーンです。父の期待を裏切った荷風ですが、二人の間には温かな絆があったのが感じられました。愛おしいシーンです。二人の表情がとても心に残ります。

 

晩年の荷風を追い掛け回したカメラマン(みやざこ夏穂)の存在は、作品から作られたイメージの荷風と実際の荷風の違いを見るようで、とても興味深いものがありました。

 

銀座のカフェのシーンで、第二次世界大戦に突入せんとする浮き足立ち、きな臭い日本の空気がものすごく伝わってきました。

荷風はすでにこの歴史の裏側が見えていた人です。彼の冷静な意見と戦争を待ち望むような世間の空気の温度差が、この時代の異常さを感じさせてくれました。とても恐怖を感じました。

ここで出てくる梶尾稔さんの壮士風の男が、かなり存在感がありました。台詞は無かったのですが、ぎろりとした目つきに不穏なものを感じました。

 

帰りの電車の中でパンフをじっくりと読んで、荷風を演じた水谷貞雄さんが85歳と知り、驚きました。

老舗の劇団の好きなところは、役者さんたちの年齢層の幅が広いことです。

年齢にあった方が演じるとやはり深みが違うと思います。

観ている私たちも得るものが多いし、演じている若手の方達も得るものが多いだろうなと思います。

 

明治、大正、昭和・・・・令和という新しい時代を迎え、日本が近代化を突き進んだ時代をきちんと振り返ることがとても必要な事ではないかと思いました。

 

素晴らしい舞台を、ありがとうございました。