2009年の「ヘンリー6世」3部作、2012年「リチャード3世」、2016年「ヘンリー4世」2部作、そして、2018年「ヘンリー5世」で、このシリーズ最終章を迎えました。同じ座組みで、役者さんたちもほぼ同じで、主役のヘンリーは浦井健二くんがずっと演じました。国立の劇場ならではの壮大な企画だったと思います。それを最後まで観る事が出来た幸せを思い、シェイクスピアの元に旅だった中嶋しゅうさん、大家仁志さんを偲びます。
ヘンリー5世は、ヘンリー6世のお父さんで、ヘンリー4世の息子です。王子時代は市井の者たちと交流を持ち、いかがわしい酒屋に入り浸り、ファルスタッフなどの行状よろしくないものたちとバカ騒ぎを起こしては、父王を心配させていました。
しかし、戴冠し王になるとうって変わったように国事に打ち込み、旗色の悪かったフランスとの関係を逆転させます。
きらめくような笑顔が魅力で陽気な子馬のようだったハル王子が、威厳を持ち、責任感にあふれ、堂々たる王になりました。
真っ白な衣装で、真っ白な王冠をいただいた王・・・・・フランスとの戦争、国と王のプライドをかけた戦いに血が流されるたびに、彼の衣装は血に染まっていきます。最終的には、王冠も血に染まりました。
英国の国威を知らしめた王で、市井の人々との交流もあったからか、今でもとても人気のある王様だそうです。
だけど彼が強さを発揮したぶん、子どもの6世にその反動が来たんだと思いました。
6世のあの混乱の治世の種がここにあったんだ・・・・。
浦井健二くんのどんどんと王としての威厳、責任の重さを感じて行く様子は素晴らしかったです。
そして、その彼を観ているとヘンリー6世の気弱で、重圧にもがいていた心細そうな様子が思い出されました。
あざなえる縄のごとく・・・そんなことも考えました。
一人、一人の役者さんたちが、とても魅力的でした。
年齢層も幅広くキャスティングされているのも、魅力です。
経験豊かな役者さんたちに混じって、四人の若手役者さんがいました。
小姓を演じた田中菜生さん、ピストルたちの振り回されながら、なかなか賢くて、したたかそうな小僧でした。
文学座の鈴木陽丈さんは、グロスター公、騎士トマス・グレー説明役を演じ、きりりとしたグロスター公が素敵でした。
小比類巻諒介さんは、アレグサンダー・コート、伝令、説明役を演じ、突き刺さるようなまなざしが印象的でした。
玲央バルトナーさんは、フランスの貴族のランピュアズ、説明役を演じました。髪型を気にして鏡ばっかり見ている気取り屋貴族は笑えました。少比類さんとバルトナーさんは新国立劇場演劇研修所出身で、この舞台が初舞台だそうです。
皆さん堂々たるものでした。
衣装はヘンリー6世の時から、前田文子さんです。
ユーモアもたっぷりあるこの舞台に現代風なアレンジもあったり、古風な雰囲気もあったりと観ていてとても楽しい衣装です。
どれもとても素敵で、どの人にもとても似合っていました。ディテールがとても細かいし、どれ一つとして同じ衣装が無くて、すごいと思いました。パンフレットの他に衣装の本もあったらいいのにと、思いました。
壮大なるこのシリーズ、是非また再演してほしいと思うし、BSやWOWOWで放送してくれないでしょうか。
新国立劇場の舞台は、オペラ、バレエ、演劇ととても質の高い物を上演しているのに、国営放送のNHKが放送しないのは何故?といつも思っています。
このシリーズを全部観終わって、私の中で印象深いのは6世のときの父を殺した息子と息子を殺した父のシーンです。
人形を使っての演出でしたが、それが余計に残酷で、悲しかったです。
岡本健一さんのリチャード三世もいつまでも忘れられません。あのラストがとても好きです。
素晴らしい経験をさせていただきました。
ありがとうございました。

