デンジャラス | *

音楽聴いたり、映画観たり、本読んだり

桐野夏生著。
谷崎潤一郎の妻松子の妹重子の視点から、谷崎と彼にまつわる女性たちを中心に描いた作品。
ん~、谷崎があまり得意ではないので、彼の文体の底にある何と申しましょうか、サンダルで不用意に踏みつけてしまった軟体動物みたいな感じがどうしても受け付けないので、谷崎の作品はあまり読んでいない。
が、この作品は面白かった。谷崎が最も崇拝するのは妻の松子(あるいはその陰影としての重子)であるはずなのに、新しく登場する若い女(妻の息子の結婚相手)がその平穏を波立てる感じとか、それに抗おうとする妻・妹連合とかの女の性情が何とも言えずえぐい。私的には近づきたくない世界なのだが、へ~~、こういう(女の)世界ってあるんだな~と感心しました。谷崎にあるエロスというよりもっとぐちょぐちょした湿った感情が巧く漂っていると思いました。苦手な世界。
松子、重子は『細雪』の蒔岡姉妹のモデルなのでもっと着物のこととか詳述してほしかった。多分桐野さんって着物に興味ないのかな?と思ってしまった。