ArmA本編のレビュー&連載を務めた百戦錬磨のソルジャー虎武須氏が,当然のごとく追加拡張パック「クイーンズガンビット」にも挑む。氏にかかれば,逃亡した大統領も反乱軍も蜂の巣同然……かと思いきや,今回はかなり手ごわい内容らしい。前作も十分手ごわかったはずだが,果たして?
ArmA待望の追加拡張パック「クイーンズガンビット」
今では非常に数が少なくなったリアル系タクティカルFPSとして,2007年に発売され人気を博した「アームド アサルト」(以下ArmA)に,追加パックが発売された。大ヒット作,「オペレーション フラッシュポイント」(以下OFP)の,ブランドではなく実倜妞扦吾峋@作でもあるArmA本編については,すでにレビュー記事や週刊連載記事で扱っているので,もはや説明の必要はないだろう。
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キャラクターや兵器のリアルな挙動,頭部や胸部を撃たれると即死というシビアさなど,緊迫したリアリズムあふれる戦場を体験できるArmA。そのArmA初となる追加パックが,「アームド アサルト ?クイーンズガンビット?」(以下ArmAQG)だ。
ArmAQGでは,2本の新しい公式キャンペーンをはじめ,新しい島マップや武器/兵器データなどが追加される。キャンペーンの紹介など交えつつ,追加パックの内容に迫ってみたい。なお,ArmAQGは追加拡張パックであり,単体では動作しないので注意が必要だ。
新キャンペーンが2本追加
?ラーマニ紛争
新キャンペーン「ラーマニ紛争」は,ArmA本体のキャンペーンの“続編”という設定だ。
ArmA本編のオリジナルキャンペーンでは,北サーラニ共和国の突然の侵略によって,苦渋を舐め続けたアメリカ軍とRACS軍。キャンペーン後半になってようやくアメリカ軍の援軍が駆けつけ,SLA軍を追いやり北の首都Bagangoを制圧した。ところがこの戦闘においてSLA軍の一部の部隊が,西部の森へ逃げ込んだのだ。
そこで特殊部隊「NightWolf」チームが,逃れたSLA軍の探索に向かうことになった。ところがSLA軍の姿はどこにも見当たらず,島から忽然と姿を消していたのである。
これはもうサーラニ島に程近い“ラーマニ島”に逃げたに違いない……。ということで,本隊の上陸作戦を支援すべくNightWolfチームが先行して島に上陸する,というのがキャンペーンの始まりだ。
のちに判明することだが,実はこのSLAの残党を率いているのは,死亡したと思われていた北サーラニ共和国のリカルディクス大統領だったのである。この大統領率いるSLAの残党を追って,ラーマニ島,ポルト島を移動していくことになる。サーラニ島での紛争を終結させるためにも,統一されるであろうサーラニの安定化のためにも,なんとしても暴走を続ける北の元大統領を捕らえなければならない。三つの大規模なミッションで構成されたキャンペーンで,オリジナルキャンペーンの本当の完結編といったものといえるだろう。
キャンペーンを構成する三つのミッションは,単純に数だけ見れば少ないと感じるだろう。しかしArmAは,シミュレーションの要素を加味したリアル系FPSということで,もともと通常のFPSに比べて難度が高めであるうえに,今回は5人の特殊チームだけで任務をこなさねばならず,一様に難度の高いミッションばかりだ。3本だからといって,すぐクリアしてしまって物足りないということはないだろう。
新マップであるポルト島は,市街地を中心とした平坦な地形で,道路が縦横無尽に交差している。ArmAのような急所に当たれば即死というシビアなFPSで,非常に反応の良いNPCを相手に市街で戦うのは,かなりの難度である。逆にいえば,フィールドでの戦闘以上にプレイヤースキルを問われることになるだろう。ともあれ,かなり手ごたえのあるキャンペーンであることは間違いない。
?ロイヤルフラッシュ
二つめの追加公式ミッション「ロイヤルフラッシュ」は,サーラニ本島で起きた紛争から2年後という設定だ。ArmA本編のオリジナルキャンペーンでは,アメリカ軍とRACS軍の連合軍によりSLA軍を打ち負かしており,これによって2国に分裂していた島は統一された。
しかし新国の王となったジョセフ3世は,息子も同乗していたヘリコプターの墜落事故により死去してしまう。このためイザベラ親王が王位を継承したのだが,aion RMT,ここで貧困にあえぐ北の不満が爆発する。北では反乱軍が結成され,政権打倒に向けた準備が進められていた。
イザベラ親王はこうした事態を秘密裏に収拾すべく,国外の傭兵会社に任務を依頼。ところが任務を進めていくうちに,プレイヤー率いる傭兵チームが見たものとは。そして反乱軍を率いていたのは。あるいは本当の悪は誰なのか……? といった感じの,詳しくはいえないが,なかなか劇的なストーリー展開となっている。
ロイヤルフラッシュは,これまでArmAのキャンペーンでは見られなかった,分岐型である点が特徴だ。重要な場面で二者択一の返答を選択することにより,その後の展開が変わってくるというもの。これまでのOFPやArmAでは見られなかった興味深い点ではあるものの,ただ一つ難点なのはやはり言語の問題だ。このキャンペーンはテキスト量が多いため,よほど英語に堪能なプレイヤーでなければストーリーも理解できず,やみくもに選択を迫られることになる恐れがある。ミッションを進めるに当たってさほど支障にはならないかもしれないが,そういった点での注意は必要だろう。
マルチプレイでも新シナリオが追加
ArmAQGではキャンペーンだけではなく,さまざまな要素が追加されている。とはいえ,そのいくつかは先にリリースされたパッチ1.08で追加されたものなのだが,大きく変わった点もあるので,ここで包括的に紹介しておきたい。
目新しい点では,ro rmt,「The Armory」というゲームモードが追加されている。これはパッチ1.08で追加された要素であり,武器?兵器の外見や性能などを見たり,実際に使ってみたりできるモードだ。だがそれだけではない。多くの武器?兵器の閲覧は最初ロックされており,まずはあらかじめ開放されている武器や兵器を使って,ちょっとしたミニゲームをクリアすることでポイントが溜まり,徐々にほかの兵器をアンロックしていけるという仕組みだ。ArmAでミニゲームなどとは考えてもみなかった要素ではあるが,これはこれで楽しめるものとなっている。
前述のようにArmAQGでは,武器/兵器がいくつか新登場している。武器はM16A4とそのアクセサリ付きバージョンなど,乗り物では民生用HMMWVであるHMMWV Limousine(あえてハマーではない),機愀钉豫氓ⅴ氓抓去楗氓–OYOTA製,Sundat製),A-10,Su-34などが追加された。
またマルチプレイでは「ポルトの戦い」「市街地強襲」という二つのシナリオが新たに収録されている。ポルトの戦いは,新マップ「ポルト島」を戦場とする最大40人が参加可能な「占領して維持する」(いわゆるCapture and hold)タイプのシナリオだ。このミッションではスタート地点にヘリや車両などが豊富に用意されており,両陣営とも持てる戦力のすべてを投じて戦うという,白熱したゲームが展開される。
もう一つの市街地強襲は,最大6人の特殊部隊チームで敵軍の施設を破壊するというCo-opのミッションだ。道路の入り組んだPorto市の市街戦となるため,チームが連携して任務を遂行することが勝利のカギとなる。
ただし2007年12月現在,ArmAのマルチプレイ事情はユーザー制作ミッションパックの「Evolution」と,RPGミッションが楽しめる「Sahrani Life」に人気が二分されており,「ポルトの戦い」「市街地強襲」はあまり見かけないというのが実情だ。Evolutionでも,ミッション名に「QG」と付いたものはArmAQGが必要となる。
OFPでは本編および2本の拡張パックによって,アメリカ軍,ロシア軍,市民といった3本のキャンペーンが用意され,一つの戦争に身を置いた両陣営の兵士,そして一般市民という三つの側面を体験できた。
ArmAでも同様の試みが今後なされていくのかは不明だが,ファンとしては期待したいところ。もっとも,サーラニ紛争とはまるで関係のない“傭兵”を持ってきたあたりや,一つの戦争を時系列はそのままに側面から見るのではなく,サーラニ島での紛争の直後,そして2年後という時間の経過を辿れるのも,新しい見方のできる構成といえるだろう。
新キャンペーンだけでなく,新マップや新マルチプレイシナリオなど,多くの要素が追加されるArmAQGは,ArmAファンなら必携の追加パックだ。正直,今回のはミッションが難しすぎるのではないかという気もしたが,これはまぁArmA好きの猛者達には問題ないはず。
「Game2.0」と呼ばれていたArmAの後継作も,正式に「ArmA II」に決まり,開発は順調に進んでいるようである。OFPシリーズがそうであったように,ArmAも相変わらずユーザーコミュニティが中心となって盛り上がっている気はするが,マルチプレイは現在も盛んで,一定の人気を保っている。数少ないリアル系FPSとして,今後もArmAシリーズからは目が離せないだろう。
ちなみに現在,直販サイト「イーフロストア」では「アップグレード優待販売」と題した割引キャンペーンを行っている。これはArmA本体の日本語マニュアル付き英語版を購入した人だけの特権で,通常価格6090円(税込)のArmAQBが,優待価格4200円で購入できる。これを利用しない手はないので,ぜひこの機会にArmAQBを入手しようではないか。
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