銀二貫 | フランス語学習ブログ
大阪の書店員らが大阪ゆかりの小説の中から「ほんまに読んでほしい」本を選ぶ「Osaka Book One Project」(実行委主催)の第1回受賞作だそうです。
読んでみて、ほんまに大阪らしい人情味と商人のええ話!と思いました。
ほんまに、大阪出身の人にはぜひ読んでもらいたいです。

銀二貫/幻冬舎

¥1,000
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江戸時代だから色々と今よりも不便なことはあって、電気もないし化学成分のこともわからないし輸送手段も舟だし電話もないから火事が起きても安否確認もできない時代なのに、商人たちはくじけず、強く信念を持って一生を商品に捧げ、人との関わりにお金や自分の犠牲を惜しまず、誠意を持って真面目に生きていきます。
それが何十年もたって報われた時の謙虚さ。まさにプライスレスの喜び。
銀二貫はそういう便利な世の中の人が忘れがちな、大事なものを教えてくれました。
大阪商人だけにわかることも沢山ありました。
というのは私の父方の祖先が、武士の末裔だったのを明治維新後、呉服商人となったいきさつもあり、この本の主人公の鶴之輔が侍から寒天商人となったのと重なり、戦後はさらに銀行員となったので半沢直樹が他人と思えないのです(笑)

とにかく商売を通じて人に貢献するというか、商売と見せかけての社会奉仕のような一種の照れ隠しが見え隠れしたので共感できました。
災いを転じて福となすようなところも。
産地偽装や信頼を裏切ることを絶対許さず、損を覚悟で取引を停止したり、アイディアたっぷりな商売改革をする反面信仰心に厚かったり、一つのことに執着して温めていた特許ものの発明を広く人に共有しようとしたり、潔く方向を決めたら倍返しなんていうスタイルはまさに商人魂の痛快さでした。

もちろん恋愛要素もあり、泣ける場面もたくさんあって、本当にこれこそ本屋さんが選ぶ本の大賞にふさわしい、お宝発掘的な一冊でした。
ああ、羊羹が無性に食べたい!