世界の言語入門 (講談社現代新書)/黒田 龍之助
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大好きな黒田龍之助先生の世界の言語エッセイです。
これは各言語の学術的な解説とか使用人口とか地域のデータではなく、黒田先生の思いつきの気楽なそれぞれの短い言語コラム、という試みなので、興味ある言語からランダムに読みました。
ここはやはりフランス語を最初に読んでみたら…
やっぱり、スラブ系専門のせいか、フランス語に対してありがちな、間違った偏見をお持ちだったんですね(笑)
フランス語教師が好むことば「明晰でないものはフランス語ではない」(リヴァロル)
これを冒頭に取り上げて、逆にフランス語の厄介な箇所を例に出し、「どこが明晰かさっぱりわからない」と結論づけているだけでした(涙)
・フランス語は統語論に支えられているのが論理的なのだろうか。
・基礎語彙が少ない(多義性を持っている)のは、それって明晰?
・異形同音異義語が多い、それって明晰?
などと、フランス語の特徴を聞きかじって、フランス語の専門家がフランス語の明晰性を自慢していると、読む気をなくす、もっと肩の力を抜いたら?
とけなしてあるのです。なんかなあ、的外れな批判?
ふーん…要するにフランス語が嫌いな語学研究者だったのねん
もっと、ちゃんとフランス語のことを研究してくれたまえよ。
あえてこっそり反論を。(別に私は明晰だからフランス語が偉いとは思ってませんが)
・リヴァロルが明晰だと言っているのはあくまで語順の厳密性です。それ以外のことは触れてません。
・時制の定義がどの言語よりも厳密だから、国際条約の締結時にフランス語が採用されている。
まあスラブ系はあんまり私も知らないけどお~、文法に関してはフランス語は比較的きちっとしている印象があるなあ。
英語みたいに「これもアリ」「別に間違いじゃない」っていうの少ない気がするし。
発音だって、わりと表記と発音の規則性が決められてますよね。長い歴史の間に統一されて来たんだろうけど。ま、これは私の浅い感想ですが。
韓国語とか、イタリア語とかやっていた時は、「ああーフランス語だったらもっとちゃんと決まってるのに」ってイライラすることがよくありました(笑)
それにフランス語の先生みんなが、「フランス語は明晰だから優れている」なんて言ってないと思うなあ。
私が今まで習った先生(大学の教養の先生)、一人もそんなこと言ってなかったし(笑)
ただ「フランス語って奥深いなあ」とは思ったのです。
むしろ、私が印象深いのは、大昔に京都の関西日仏学館で行われた、仏検の授賞式でフランス人政府の偉い人がはなむけの挨拶に言っていた言葉です。
「教養のある人はフランス語を話せるべきだ」って。
これも、昔の誰かの言葉の引用でした。
昔、英語の前にフランス語が世界の共通国際語だった時代の誇り高い伝統を、受け継いでくれとかなんとか…(言ってたような記憶がうっすら)
そうなのかー、フランス語が話せる人は教養があると思われるんだ~、へへっ照れるなあ(私はそんな話せませんが)
別に明晰じゃなくてもOK牧場、全然いいのだよ~~ん。
「教養」だよ、チミ~
「フランス語の明晰性」をこれだけ国民的に有名にして持ち上げてるのって日本人だけのような?
石原都知事は「数が数えられない」とかわけのわからんことを言ってますが。
Ce qui n'est pas clair, n'est pas français.
これは、一種の美辞麗句というか、大げさというか、Ce qui構文の定番の例文として暗記されられるために有名になっただけじゃ(汗)と思いたいです。
でも、哲学で厳密な論理を文章で表記するのにはフランス語は必須らしいですね。
哲学専攻の人に聞いたことあるってだけのこれまた聞きかじりですが。
あ、でもこの本は色々な言語に触れていて面白かったです。フランス語を除いてね。