カレの告白に戸惑ったのは一瞬でした。

その言葉を素直に受け取って良いのだろうか。

長年レスのカレにとって、同じくレスで別居までしている私はちょうど良い相手だったんじゃないか。

頭の中に悪いことがたくさん浮かびました。

でも、そんなの吹き飛ばすのなんて一瞬。




「私は、ずっと好きだった。本当に。だから、簡単にお遊びで、とかはできないよ?」

そんなわけないだろ、って台詞を期待する言い方です。

後からこう文字にすると、ドラマかよ、ってツッコミいれたくなりますけど。笑
あの時は、空気に酔ってたのかな。

本気で言ってました。




カレは期待通りの台詞と共に、改めてハグしてくれました。

35歳。

ぶっちゃけ、ものすごく適当な恋愛しかしてこなかったので、初めての片思い成就に緊張したのを覚えています。




人を好きになる、ってことがよく分からなかったんです、今まで。

気が合う、一緒にいて楽、それがバロメーターのようなもので。

恋人よりも、親友と呼べる友達への気持ちの方が深かったように思います。

恋愛関係はいつか終わる関係。
友情は一生物。

その考え方は、ちょっとした男性不信だからかもしれませんが、青春時代と呼べる頃から変わりません。




夫と結婚したのは、干渉されない関係が楽で、ドライで自由な夫となら結婚生活もやっていけそうだという理由。

うちの夫婦は特殊かもしれませんが、好きだと言い合ったこともなく、お互い「これくらいが楽でいいよね」と言ってしまえるほど、友達のような関係でやってきました。

二人とも恋愛をちゃんとしてこなかった人間で、人の色恋沙汰を見聞きしてめんどくさいなって思っていたタイプ。

それなりに遊びもして、もうそろそろいいかなと、って言っても二十代前半だったのですが、互いに家庭事情やら何やらで結婚を急かされるうちに「じゃあ…」くらいの感覚で入籍、という感じでした。




うまくいかなくなったのは、一番は、性生活が合わなかったからだと思います。

性欲はあるけど、あなたとは…。

お互いそう思った(後々話し合って知りました)ことでレスになり、その辺りからうまくいかなくなった気がします。




話は戻って。

それから、カレとはプラトニックなお付き合いが二週間。

キスは翌日にしちゃいましたが、それ以上はなく。

学生のようなLINEを送りあったり、夜に家を抜け出して手を繋いで散歩したり。

このまんまでいいんじゃない?!
と思うほど、楽しくて満たされた日々でした。




まぁ、いい大人ですから、そんなの続かないんですけど。




初めてのそれは、なんと、カレの宣言で決行されました。
ほんと面白くて、真っ直ぐな人だなと思ったんですが。

『明日の夜、会える?』

休憩が一緒になった日、二人きりの喫煙所で言われました。

『会えるよ。どっか行く?』

すると、とても真面目な顔で…

『ホテル、行こ』

と。

笑ってしまいました。

なんかそんな空気が全然なかったので、これは酒の勢いとか何かないと一線を越えることはないかもしれない、と思うほどだったんです。

『我慢してただけで、早くそうなりたかったけど、タイミングとかないから誘うしかなかった』

なんであんなストレートなお誘いだったの?って後日聞いたら、そう言ってました。




正直なところ、ヤッたら終わるかもな、と思いました。
そこの相性って、気持ち云々じゃないだろうと思っていたので。

それに男の人って、一度そうなったら少し冷めるんじゃないかなって。





プラトニックがあまりに楽しかったので、そのお誘いは嬉しいよりも不安の方が大きくて、あまり楽しみにはできませんでした。




続く。