おはようございます
前々回から引く美学編おまけ第2弾という形で様々な箏の調子について分析し、既存のコードスケール上で再現可能な条件があるかについて中空系・雲井系(一部は今回検証)まで調査してきました
中空系は平調子(フリジアンスケール由来)から始まり、エオリアンスケール由来へと姿を変え、二十中空調子に至った際にはドリアンスケールと似た構成に変わっていきましたが、雲井系はロクリアンスケール由来に変わっていくというマイナー系のコードスケールに関連して変化している感じが全体的に見えてきました
今回は雲井系から更に派生した岩戸系に加え、これらのグルーピングが分からないその他のものを調査し、引く美学編を締めたいと思います
前々回以降のブログから掲載している特殊例を除いてコンパクトにまとめた全体MAPを再度掲載します
前回のブログでも話しましたが、今回の岩戸系が種類が少ない関係で雲井系の時に解説しなかった本雲井調子に加え、四上り調子を除くその他シリーズの楽調子・乃木調子を含めた計6種類について分析・検証していきます
雲井調子を開始点とした岩戸系の簡易調子MAPです
2ルートに分岐しますが雲井系の時のように複数分岐はないのでそれぞれのルート毎で検証していきたいと思います
なお、調弦については雲井調子がフリジアンスケールとロクリアンスケールを混合しているような感じなので、以下の通り平調(主音弦:E)に加え、盤渉(ばんしき)(主音弦:B)も用意しました
この状態でまずは二十雲井調子へ発展するルートからいきます
六斗上り雲井調子は雲井調子の「六」「斗」を1音(2半音)上に調整した調子です
名前通り「六」「斗」が変更になったのみで他は変わりないため、中身の構成は、
完全1度・短3度・完全4度・減5度・完全5度・短7度
のヘキサトニック構成となります
中空系の時は「六」「斗」が半音上になる長2度への変換はありましたが、ここで初めて短3度が登場しました
これまで僕のブログを読んできた方々なら何となく察しはついたかと思いますが、このヘキサトニック構成により、
m7 or m7(♭5)
になる事が予想されます
つまり、m7か、m7(♭5)をダイアトニックコードにするコードスケールであれば該当する可能性があるわけですので、六斗上り雲井調子は解釈次第では様々なコードスケール上で再現する事が可能になるかもしれません
それとも、これが言葉通りの希望的観測に終わり、蓋を返せばフリジアン、もしくはロクリアン由来のまま選択肢が増えないままなのか
そんな期待を胸に、四上り半雲井調子の時のように、
1オクターブ上に向かう2度・6度・減5度抜き…完全1度・短3度・完全4度・完全5度・短7度→似非上行形
1オクターブ下に向かう2度・6度・完全5度抜き…完全1度・短3度・完全4度・減5度・短7度→似非下行形
という2パターンのペンタトニックの条件で一気にまとめて検証してみましょう
こちらです!!
似非上行形…完全1度・短3度・完全4度・完全5度・短7度
ドリアンスケール:Ⅱm7
フリジアンスケール:Ⅲm7
エオリアンスケール:Ⅵm7
ドリアン♭2・スケール:Ⅱm7
似非下行形…完全1度・短3度・完全4度・減5度・短7度
ロクリアンスケール:Ⅶm7(♭5)
ドリアン♭5・スケール:Ⅱm7(♭5)
ロクリアン♮6・スケール:Ⅱm7(♭5)
エオリアン♭5・スケール:Ⅵm7(♭5)
あぁあって感じですよね(^^;笑
まぁ短2度から短3度に変わった事でダイアトニックコードがハッキリしてしまったのでm7系(ドリアン・フリジアン・エオリアン)、m7(♭5)系(ロクリアン)のコードスケールほぼ一通り齧るなんてなっても不思議ない話ですからね笑
一旦メジャースケール関連だけささっと確認しておきましょう
まず、ドリアンスケール・フリジアンスケール・エオリアンスケール・ロクリアンスケールの4つですが、これらのニロ抜きについて調べた結果、
ドリアンスケール→初
フリジアンスケール→ニロ抜きフリジアン・ペンタトニックスケール(イヨ抜き長音階ファミリー)
エオリアンスケール→ニロ抜きマイナーペンタトニックスケール(ヨナ抜き長音階ファミリー)
ロクリアンスケール→ニロ抜きロクリアン・ペンタトニックスケール(サナ抜き短音階ファミリー)
なんと、ここでドリアンスケールのニロ抜きペンタトニックVer.が初めて登場しました笑
という事は皆さん、都節音階-上行形が含まれるサナ抜き短音階ファミリーに属するヨナ抜きVer.のドリアン・ペンタトニックスケールが、
ヨナ抜きペンタトニックVer.≠ドリアン・ペンタトニックスケール
OK?笑
思わぬところでニロ抜きVer.のドリアン・ペンタトニックスケールに出会う事が出来ましたので、似非上行形の検証はドリアンスケールとドリアン♭2・スケールの2つだけ行います
仮名として、ニロ抜きペンタトニックVer.群を「サナ抜き短音階ファミリー」としました
さぁ、このサナ抜き長音階ファミリーでやりたい事は何でしょうか?
アイオニアンスケールの長3度Eと長7度Bを抜いた事でⅠM7感がなくなり、単にパワーコード(完全1度・完全5度)+テンション・ノート(9th・13th)+sus4みたいな感じになりましたが、全体を見通してみるとⅢm7とⅦm7(♭5)がなくっています
ここから推測される事は、
メジャー・マイナーの明暗化
よく見てみると、アイオニアンスケールとリディアンケールは完全音程を除いて残っているのがみな長音程、ドリアンスケールと
エオリアンスケールは完全音程を除いて残っているのがみな短音程になっています
ミクソリディアンスケールは長2度と短7度をそれぞれ残しているのでⅤ7らしい長短のハイブリッド型になっていますね
そもそもメジャースケール自体がⅢm7とⅦm7(♭5)も合わせてマイナー寄りのダイアトニックコードが集まっているので、これらのコードに該当する音程を取り除けばそうした偏りがなくなり、より明暗がハッキリするという事が言えるのでしょう
いずれにせよ、ここでようやくニロ抜きVer.のドリアン・ペンタトニックスケールに出会いましたので、今後は、
ヨナ抜きドリアン・ペンタトニックスケール
ニロ抜きドリアン・ペンタトニックスケール
と使い分ける事にします
ドリアン♭2・スケールのファミリーについては掲示した画像をご参考下さい
と思いきやっ!
先程の画像の□が目に留まった方は僕のブログを隅々までよく見ていただいていると証拠なのですが、何とこのサナ抜き長音階ファミリーの中にヨナ抜きVer.のリディアン・ペンタトニックスケールも隠れていたのです
元々都節音階-下行形が属するヨナ抜き短音階ファミリーの中にニロ抜きVer.のリディアン・ペンタトニックスケールが存在し、それが一般的なリディアンスケールのペンタトニックVer.という風に言われていましたが、
ヨナ抜きVer.ありましたね?笑
という事でこれでリディアンスケールも
ニロ抜きペンタトニックVer.≠リディアン・ペンタトニックスケール
である事が証明されましたので、
今後は、
ヨナ抜きリディアン・ペンタトニックスケール
ニロ抜きリディアン・ペンタトニックスケール
と使い分ける事にします
これでついにメジャースケール(ナチュラル・マイナースケール)内の全てのダイアトニックコードのヨナ抜き・ニロ抜きペンタトニックスケールを明かす事が出来ました
いやぁ、正直これ全部見つけられるのか不安でしたが、早々に決着がついて良かったですw
次は似非下行形の検証ですが、先程ロクリアンスケールがサナ抜き短音階ファミリーに属するニロ抜きロクリアン・ペンタトニックスケールである事を確認したので、残ったドリアン♭5・スケール・ロクリアン♮6・スケール・エオリアン♭5・スケールの3つだけ確認して次に行きたいと思います
ご参考下さい
次は二十雲井調子ですね
二十雲井調子は、六斗上り雲井調子の「五」「十」を半音下に調整した調子です
「五」「十」が変更になった事で黄5つの中から完全1度は消えましたが、「一」が残っていますので、中身の構成は、
完全1度・短3度・完全4度・減5度・完全5度・短7度・長7度
のへプタトニック構成となります
…もはやカオスですね笑
と言いたいところなのですが、実はこれ、この後引く美学編が終わった後に話す予定となっているブルーノートスケールの中身にそっくりなのです
詳しい話はブルーノート編で改めて話そうと思いますが、先の六上り雲井調子と二十雲井調子はブルースっぽい要素を兼ねているのかもしれませんね
そういって終わらせるのも難なので、ここでは、
①完全1度・短3度・完全4度・完全5度・長7度
②完全1度・短3度・完全4度・完全5度・短7度
③完全1度・短3度・完全4度・減5度・長7度
④完全1度・短3度・完全4度・減5度・短7度
の4パターンのペンタトニックスケールとして調査しようと思います
が、②と④は六上り雲井調子の時に調査済みなので、ここでは、
①完全1度・短3度・完全4度・完全5度・長7度→長7度Ver.似非上行形
③完全1度・短3度・完全4度・減5度・長7度→長7度Ver.似非下行形
と称して既存のコードスケールと合致するものがあるか見ていきます
いやぁさすがにこれは厳しいでしょうと思ったのですが、
いやあんのかいっ!( ゚Д゚;)
一応長7度Ver.似非上行形の方で
ハーモニック・マイナースケール:ⅠmM7
メロディック・マイナースケール:ⅠmM7
の2つが該当しました
一応二十雲井調子の一部分再現はこれらのコードスケール上で可能という事になりますね
ではモードチェンジしてみましょう
細かい違いはあれど、ニロ抜きである事は同じなので、中身の雰囲気はそっくりです
ですが、あくまでこれは一部分を抜き取っての話なので綺麗な形ではありません
二十雲井調子がハーモニック・マイナースケールやメロディック・マイナースケールで再現出来る!といった誤解はされないようご注意下さい
ここからは岩戸系の2つ目のルートの解説をしていきます
まずは雲井系の時にお預けにしていた本雲井調子からですね
本雲井調子は雲井調子の「巾」を半音下に調整した調子です
これにより、完全5度がなくなったため、
完全1度・短2度・完全4度・減5度・短7度
のペンタトニック構成となります
↑↑の岩戸音階解説時に本雲井調子がロクリアンスケール由来というのは分かっているのですが、その他の既存のコードスケールに該当するものがないか調べるというのはやっていないので、今回改めてその検証を行います
が!
片雲井調子の似非下行形と同じ構造をしているため、既に検証済み案件という事で次の岩戸調子に進みます笑
せっかく今回の岩戸系のためにとっておいたのですが、何ともあっけなく終わってしまった本雲井調子orz
次の岩戸調子をもって岩戸系の検証が完了します
改めて、岩戸調子は本雲井調子の「五」「十」を半音下、「六」「斗」を1音(2半音)上に調整した調子です
元々の参考資料元であるJ-Stageには載っていないので僕の方で追加したのですが、岩戸系を名乗るに相応しい感じで一気に様変わりしました
一見複雑そうに見えますが、
二十雲井調子の「巾」を半音下に調整したものとも言えますので、
完全1度・短3度・完全4度・減5度・短7度・長7度
のヘキサトニック構成と言えます
二十雲井調子の時から気になってはいましたが、やはり岩戸系はブルース系の要素を兼ね備えているんでしょうかね?
もう答えは分かっているのですがあっさりいきますが、
完全1度・短3度・完全4度・減5度・長7度→…長7度Ver.似非下行形→×
完全1度・短3度・完全4度・減5度・短7度…短7度Ver.似非下行形→六上り雲井調子
をご確認下さい
さて、これにて中空系・雲井系・岩戸系の検証を全て完了しました
残すはその他扱いしていた
楽調子
乃木調子
の2つのみです
この2つの検証をもって箏の世界で言われる主要な調子を一通り網羅出来ますので、最後まで駆け抜けていきたいと思います
全体MAPを少し修正して簡易MAP化しました
大まかに見れば平調子を開始点として、
片雲井調子→楽調子
半中空調子→乃木調子
という分岐ルートで変更されていきますが、最終的には楽調子に至るところから楽調子は中空系・雲井系の2つの要素を兼ね備えたハイブリッド型の調子と言えるのでしょう
ですので、
ここでは半中空調子を開始点として乃木調子→楽調子という順番で解説していきます
なお、調弦は大元の平調子に倣い、平調(主音弦:E)で話を進めていきます
早速ですが乃木調子を確認していきましょう
乃木調子は半中空調子の「四」「九」を半音上に調整した調子です
名前通り「四」「九」が変更になった事で短6度が長6度に変わりましたので、
完全1度・長2度・完全4度・完全5度・長6度
のペンタトニック構成となります
ここにきて急にメジャー感強めな調子が出てきました笑
特殊例らしいので今回は紹介しませんが、夏山調子がこの乃木調子をベースにしているそうなので、これまでの調子の中で唯一のメジャー系調子なのかもしれません
それがこうして主要な調子の1つとして存在している事で音楽の方向性の偏りも減りますし、幅広い世界観で日本の伝統音楽が伝承される大事な要素になると思いますので、そういう意味でも乃木調子は知っておかないといけない調子かもしれません
ではいつもの通り、このペンタトニック構成に該当し得るものがあるか探してみましょう
調べた結果、以下4つのコードスケールが該当しました
アイオニアンスケール:ⅠM7
ドリアンスケール:Ⅱm7
ミクソリディアンスケール:Ⅴ7
メロディック・マイナースケール:ⅠmM7
いやぁこれは素晴らしい
拍手喝采ものですね
リディアンスケールは残念でしたが、ここでついにアイオニアンスケールとミクソリディアンスケールが登場しました
これで日本の伝統音楽がマイナー系ばかりではないという事を証明出来ました
ですがここからが重要なミッションです
まずはこれまでに学んできたペンタトニックスケールの中に該当するものがあるかを探してみましょう
調べた結果、
アイオニアンスケール→サナ抜き長音階ファミリー(四上り雲井調子似非上行形)
ドリアンスケール→イヨ抜き長音階ファミリー
ミクソリディアンスケール→ヨナ抜き長音階ファミリー(律音階)
メロディック・マイナースケール→四上り雲井調子似非上行形
何と偶然にもメロディック・マイナースケールも四上り雲井調子似非上行形に登場していました笑
どうやらドリアン♭2・スケールのニロ抜きの大元であるヨナ抜き短音階ファミリー的な位置づけで該当していたようですので、あっけないのですが乃木調子の調査はこれで終了します笑
さぁ、箏の有名な調子を分析し、既存のコードスケールに再現可能かを検証する対象もついにこれが最後です
楽調子は乃木調子の「四」「九」を更に半音上に調整した調子です
長6度が短7度に変わりましたので、
完全1度・長2度・完全4度・完全5度・短7度
のペンタトニック構成となります
あららら、また短音程が混ざりましたね笑
楽調子になった事でまた別の意味で選択肢が増えてそうな感じがするのですが、既存のコードスケールに該当するものがあるか探してみましょう
調べた結果、以下4つのコードスケールが該当しました
ドリアンスケール:Ⅱm7
ミクソリディアンスケール:Ⅴ7
エオリアンスケール:Ⅵm7
ミクソリディアン♭6・スケール:Ⅴ7
ミクソリディアンスケールが残り続けている事に驚きですが、伊達にメジャーとマイナー両方の音程を兼ね備えていませんね
先程の乃木調子同様、これまでに学んできたペンタトニックスケールの中に該当するものがあるかを探してみましょう
調べた結果、
ドリアンスケール→ヨナ抜き長音階ファミリー(田舎節音階-上行形)
ミクソリディアンスケール→サナ抜き長音階ファミリー(四上り雲井調子似非上行形)
エオリアンスケール→イヨ抜き長音階ファミリー
ミクソリディアン♭6・スケール→四上り雲井調子似非上行形
あれ?これも全部既に登場していたもの達のようですね笑
…え~、という事で楽調子の調査もあっけなく終了しました笑笑笑
せっかくですので、先程のその他シリーズの簡易MAPの別分岐ルートの変更点を書き加えたものを最後に掲載しておきますので、ご参考下さい
最後にもう少しだけっ!!!m(_ _)m
このままでは終われない事情があるんです
それは、
リディアンスケールが1度も出てきていない
増4度を持っている関係でこれまでの話の中で唯一まともに参加出来ていないんです
このまま終わらせるわけにはいかないのですが、リディアンスケールが参加出来る条件が実はあるんです
減5度→増4度
日本雅楽の階名…変徴→増4度
って事で、減5度を持つ調子達を対象に、リディアンスケールのためにもう少しだけお付き合い下さい(>人<)
…と言いたいのですが、対象が雲井系・岩戸系ばかりで数が多いので一回ここで区切ります笑
次回で引く美学編を完結させますので、結果的に4回分になってしまった事、次のブルーノート編を楽しみにしている方々に対し、お詫びを申し上げて一度締めさせていただきますm(_ _)m
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
次回のブログでまたお会いしましょう
(^ ^)ノシBye Bye
参考情報元の数々↓↓
「不器用な想いを音で描く」を信条に、SoundCloudにオリジナル楽曲と東方自作アレンジを公開中です
興味があれば聴きに来て下さい♪