雨も上がり、再び晴れ間が戻った午後の街道。
一行は都を目指して再び進み出していたが、緩んだ地面に差しかかると、
「おっと……!」
伊織の乗る馬が前足をぬかるみに取られ、動けなくなってしまった。
「馬が……!これはまずいな」
伊織が声を上げると、すぐさまハジメとあすけが駆け寄った。
「任せてください!俺たちの腕力、見せるときっすよ!」
ふたりは馬の脇に回り込み、声をかけながら後ろ足の方向へ体重をかける。
泥がぬるぬると滑る中、力強く支えながら引き上げようとするが──
「ぐぬぬぬ……重いっ……!」
その様子を見て、キヨシが口を開いた。
「ちょっと待ってください、ぬかるみの抜け道を作ればいいんです。棒と板……ありました!」
近くの枝と荷車に使っていた板を集め、足元に敷いていく。
「これで、少しだけでも踏ん張りが効くはずです!」
「おおっ、キヨシくん、ナイスだ!」
再び力を合わせて押し上げると、ズズンッと泥を飛ばしながら、馬の足が抜けた。
「やったー!助かった!」
伊織が安堵の笑みを浮かべ、馬を撫でる。
そのころ──
ヒトミは後方で包みを抱えながら動いていた。
「皆さん、おつかれさま。お茶、どうぞ」
手渡された湯気の立つ茶器に、皆が「ありがたい……」と声をもらす。
「ヒトミちゃん、天使か……」「茶が五臓六腑に染みわたる……」
笑いと感謝の声があちこちに広がる中、
一同の疲れも、泥も、秋風とともに流れていった。
こうして、小さな“ぬかるみ事件”は、皆の協力で乗り越えられたのであった。

連続投稿 875日目。