かえでの嫁入りが決まり、城内は慌ただしくもどこか華やいだ空気に包まれていた。
その日、奥の座敷では、かえでとヒトミが並んで針仕事をしていた。
けれど、話題はもっぱら縁談のこと。
「……なんだか、まだ夢みたいで」
と、かえではそっと頬を染める。
「最初はまさかと思ったの。でも、あの方と目が合った瞬間、何かが胸の奥にスッと入り込んだ気がして……」
その言葉に、ヒトミは目を輝かせながらうなずいた。
「……いいなぁ、かえで様。わたし、かえで様の話を聞いてるだけで胸がドキドキしてきちゃいました」
「ふふ、ヒトミちゃんも、きっとすぐよ」
「えへへ……そうだといいな。ハジメくんがね、最近すごく頼もしく見えて……」
ふたりは顔を見合わせて笑い合い、ふわりと春風のような雰囲気が座敷に広がる。
縁談の準備が進むなかで、恋する心と、未来への小さな夢が交差する。
ヒトミの頬はほんのりと紅に染まり、胸のなかには、まだ誰にも話していない想いが、そっと育ち始めていた。
連続投稿 862日目。
