夏前にヒッチハイクしてた

あれはたぶん大学の先生のなんやらかんやらの映像作りの道中だったと思う


暇だったし、まずまず遠かったけど金なかったから、ヒッチハイクしてた

当然の成り行きだよね

雨が降るから水がたまる

腹が減るから飯を食う

金がないからヒッチハイクする

自然の摂理だよね


で、乗せてもらった


だんまりしてるわけにもいかないから、まあしゃべる

しゃべるのは得意じゃないけど、まあ一応程度に


乗せてもらった人が40すぎのおじさんと70くらいのおばあちゃん


親子だね 直観鋭いおれはそう思ったね

だいたいヒッチハイク上での会話っていうのは決まってる

マニュアルっていうのがね ある程度ある


若い人とは趣味やら出身やら旅行の話をする

中年には子どもやら仕事やらの話

年寄りは孫と天気の話


まあこんな感じで 30分~3時間ほど持たせる

もうね そのへんのキャバ嬢より会話持たせる自信がある

天気と孫の話で数時間とか達人だろ、と思う


それでも持たない場合は 必殺技を使う




「寝たふり」


その瞬間から、おれはマリオのスター状態になれる

水を得た魚

スターを得たマリオ

バイクを与えた本田

寝たふりをしたヒッチハイカー


向かうとこ敵なし


まあそんなヒッチハイクの細々としたテクニックはいいんです

たぶん、大方の人生で人はヒッチハイクなどしないだろうし

有名な戦場カメラマンが言ってたよね

「私の仕事がなくなるような世界になればいい」とね

まあそういう感じですよ

ヒッチハイクの伝道師でもあるぼくの仕事がなくなればいいんですよ←伝道師気取り



で、今回乗せてくれたばあさんはこう言ったわけ

ばあ「私、昔大阪のほうで易者をやってたんですよ」

これは珍しい 

ばあ「ちょっと見たげるわ」

この有無を言わせない圧力が大阪っぽいね

手相を見るわけでも、目をつぶり宇宙と交信することもなく顔をじっと見た


ばあ「ふむ」

ふむ?


ばあ「これはダメだ」

ダメ?


ばあ「あんた 夢がないね」

まあ、そんなにないかなぁ


ばあ「意地もないね」

そうかな? まあ


ばあ「地位もないね」

ないかな?


ばあ「家内もないね」

それはないね



ないないないばっかりじゃないかよ!

その占い、後ろ向きすぎない?大丈夫?

金取れる?


あのね、占いとかってさ 

「現状を(より)よくするもの」であるわけじゃん?

ていうか そうじゃないといけないものやん

それをね「ないない」ばかりじゃね どうしようもならんでしょ

「緑の生き物を持つと運気が上がる」とかさ「粘着質のものを持てば、意地も出てくる」とかさ

(限りなくカエル)

そういう前向きな言葉が必要なんじゃないかな

占いをやったことのないおれでも分かるよ、それくらい




あのなあ ばあさん

聞いて驚くな


おれな



「就職先もないんだ」