私の身近であったお話。


私の同僚であり、今は定年して委託社員として働いているネズミおじさんは、私の会社では勤続年数も長い、もうじい様。

このおじさん、長らく独身、子も孫もいないのですが、とにかく気前がいい。

高いものをくれるとかではなく、身内や同僚の、とくに子供におやつを買ってあげたり、気遣いおじさんなのです。
私も何度も、残業中のコーヒーなどの恩恵を賜ってきました。


そんなおじさんに、幼き頃より可愛がってもらっていた上司の娘・Aちゃんがおりまして、彼女が数年前に大学の卒業旅行でグァムへ行き、おじさんにお土産を買ってきました。

日本で買ったら500円くらいだろう、男性向けの柄のマグカップでした。


おじさん、幼かった彼女からの大人の気使いに大喜びしたのでしょう、大事に大事にマグカップで毎日お茶を飲みました。


そして、つい最近のことなのですが、おじさんがちょっとしょんぼりしながら出社してきました。

そして私に「陶器を直す方法はないか」と言うのです。

おじさん、そのもらったカップをうっかり割ってしまったのです。

上記のやり取りを知らなかった私、訳を聞いて考えてみるも、高価な陶器などには金(きん)で接ぐという方法があるらしいのは「美味しんぼ」でみたことがあるのですが、普通のマグカップに通用するのかわからず、とくに助言もできませんでした。

見せてもらったそのカップは、大事に使っていたことが伺える、経年劣化も原因じゃないかと思われる様子。
おじさん、欠けたところをボンドでつなぎ合わせたりしましたが、どうしても隙間から水がじわじわ漏れてきてしまうそうな。


そのまま黙って別のカップに代えても問題ないでしょうが、Aちゃんのプレゼントしてくれた気持ちを思ってしょげているおじさんは、それじゃ気がすまない。

なので、上司の奥さん、つまりAちゃんのお母さんでもある人に正直に言ってみたらどうかと提案してみました。

おじさんはAちゃんに「割ってしまってごめんね」と謝りたいんだろうと感じたので。

奥さんはもちろん、怒るどころか私が感じたように、「数年間大事に使ってくれたのだから、Aちゃんもよろこぶと思う。」と言って、奥さんからAちゃんに伝えてくれることになりました。

その数日後、Aちゃんからおじさんに、プレゼントがありました。


話を聞いて、Aちゃんがおじさんに渡したものは、割れたカップの代わりの、新しいマグカップ。

それも、約10倍の5000円もする作家の一点もの。


大人になって社会人数年目になっていたAちゃんは、お母さんから話を聞いてすぐに、「じゃあまた次のも私が買うね」と言ったそうです。


それも、学生の時よりグレードアップしたものを贈るとは、Aちゃんすごいぞ。

おじさんは見返りを期待した訳じゃなく、Aちゃんもそれがわかっているからこその、
二人のやり取りだったのかな、と思いました。

私はただ話を聞いただけなのですが、いい話だなあと思ったのです。
Aちゃんのことは私も幼いころを知っているだけに、ちょっとホロリでした。


♪ 完全無欠のロックンローラー   アラジン