亀戸線編、あと一回ですが都合により一回休み、

先週土曜日の小話など。

1月中旬は毎年、亡くなった父の命日があるのでお墓参りに参ります。

一通りの法事はやったので、後は母と二人で墓参りだけで済ませてしまってます。

うちは親戚づきあいが頻繁ではなく、父の兄弟もお歳を召して、来るのも大変でしょうから。
というお約束になってます。


それでうちのお墓事情というのがちょっと変わってまして。

最近はそう珍しくはなくなってきたのですが、実は墓石の下に眠る墓所ではなく、いわゆる納骨堂なのです。

簡単に言えば、ロッカー式。

形態はいろいろありますが、うちの父が入っているのは、骨壺を入れる数に応じた大きさのロッカーがありまして、そのロッカーの大きさごとに区分けた大きな部屋で墓参りをします。

一族の大ぜい、10人くらいが入るような大型のものから、一人用まで。

うちのは父と母の二人用。

一人用と二人用がやはり需要は多いようです。

イマドキの納骨堂だと、参拝室というのかな?墓参りに来た人がボタンを押すと、目的の骨壺が自動的に目の前の祭壇に持ってこられるタイプとか、

あえてロッカーなど無く、地下のシェルターみたいに作った大穴に骨を直接入れる共同墓地タイプとかあるみたいですよ。


うちはおおきなロビーの受付で名前を記入すると、係の方がフロアについてきてロッカーのカギを開けてくれます。
そして扉を開いて直接骨壺を見ながら、用意されているお線香をあげるのです。

扉にはポストカードを入れるポケットがついていて、写真やお手紙を入れているお宅もあります。
ロッカーの中にも、家の仏壇にやるようなお供え物を一緒に入れている人が多いです。
ただし、生ものとか腐ったり強いにおいを発したりするものは当然ダメ。

密閉されてればいいので、うちではお酒好きの父のために、缶ビールを入れ替えるようにしてます。


さて、その日。

たまたまよそ様の法事なども何もないようで、納骨堂はのんびりした雰囲気でした。
お坊さんも作務衣姿です。

納骨堂のエントランスロビーに入ると、いつものように一角にお供えグッズを陳列しているワゴンが置いてありました。

5~6センチ四方くらいの小さな正方形の透明ケースに、お菓子や食べ物、飲み物などを食品サンプルのように作ったろうそくが入っているものが多いです。

母がそちらに目が行っていたので、私が受付をすまそうと名前を書いていました。


そうしたら突然、ロビーに響く「ビール一つください」の声。

居酒屋でもないのに場違いな!誰だ?

と、声の主を探すと、当然いたのはうちの母のみ。

エントランスにいたお坊さんが母に対応してくれました。

つまり、ビールの入ったジョッキの形のろうそくを買おうとしていたわけですね。


お支払いは事務所で~と、受付横の扉を開けて、お坊さんはいったん事務所の中へ。

私が母に「びっくりしたよ~」などと言ったその時、事務所の中で、


「ビール一杯いくらでたっけ?」と、割と大きな声が響きました。

声は当然、先ほどの作務衣のお坊さん。

モノはろうそくなんだから、一杯じゃなくて一個じゃないか?
などと細かいツッコミを言いそうになってひっこめつつ、静かで神聖なる納骨堂に響く「ビール」の文字が、何だかシュール。

事務所に数人いた女性たちもウケたようで、クスクス笑っています。

そして、お坊さんから酒を買うという、これまた珍しい光景。

本当のお酒じゃないし、たまたまいたから手伝ってくれてるだけなんだけど、なんかおかしくて楽しい。

その和やかな雰囲気のまま、そのお坊さんが地下にあります納骨堂へ案内してくれました。

広い納骨堂にて、ロッカーの扉が開けられ、父と久々のご対面。
仏壇なら毎週参ってますけどね。

まずは買ったばかりのそのビール型ろうそくを置いてしまおうと、前回備えた缶ビールを取り出し、交換しました。


そこまではいいのですが、そういえば、この缶ビール、あとはどうしよう?
うちは、母も私もビールを飲みません。
賞味期限はまだあるけど、人にあげるのもなあ・・・。

と、思ったら、ちょうどいいところに、まださっきのお坊さんがいましたよ。

ではごゆっくり、と、去りかけたところを引き留めて、相談!

結果、そのお坊さんにもらっていただくことに。

お坊さん、丁寧に父に「では、ありがたく頂戴いたします」と、神妙に拝んでから「ではこれで」と去って行かれました。


しかし、きこえちゃったぞ~。

納骨堂から地上へ戻る階段の上あたり、他の職員さんにあったらしいお坊さん。

「ビールもらっちゃいました♪」と、ルンルンした声が!

思わず私と母、声を抑えて大笑い。


もちろん、お役目の時はきりっとして立派に勤めなさるだろう、物腰丁寧な紳士なお坊さんがちょっとかわいくなってしまいました。


そんな、のんきで和やかな、父の命日一日前でした。




♪  熱き心に   小林旭