給食の牛乳は瓶でした。


年に数回、給食中に瓶を落下させ割れてしまう事がありました。


刺激の無い山奥の小学生に取って、瓶が教室で派手に割れるバイオレンスなサウンドは、まるブルーハーツの『終わらない歌』のように聞こえたものです。


誰が犯人だ、誰のせいだと、帰りの会はフィーバーします。


犯人を押し付け合う子供達。


押し付けられて泣き出す女の子。


その様子はまるで倒産した証券会社の株主総会。


生贄になりたくない私は、給食配膳の際、異常な集中力を発揮します。


ホストの時は机の真ん中に置く。


ゲストの時は置いてもらう。


慎重に慎重を重ね、私の小さい両手で瓶を包み込みます。


そんな夏のある日、後ろの席のT君に話しかけられたのです。