日経メディカルからの情報シェア
この医学雑誌にはボクも先代の編集長時代にずいぶん記事や論説を書いたので、今だに献本をいただいていますし、
副編集長のひとりは、かつてカナダ🇨🇦の『マクマスター大学医学部・臨床疫学大学院』のEBM指導者養成コースにて、
聖路加財団のフルブライト留学派遣で同級生だったこともあって、すごく親近感があるのますが…
( ̄_ ̄|||)
編集長が替わってから、すいぶん親しみやすいコラム的な記事が増えた反面、学術的あるいは格調の面で、質的に些かレベルが低下した感は否めません。
… 少なくとも、こういう患者さんの誤解を招くような記事(タイトル)はいけませんな💢
ボクはこれまで、四半世紀にわたって、
通算26件の医療過誤訴訟の被害者側鑑定に携わって来ています。法廷にも、何度も立っています。
医療過誤事件を年に1件ペースというのは、弁護士でもそうそう経験者はいないでしょう💧
四半世紀を通して、いろいろな経験をしてきましたが…
● 医療従事者も人間ですから、明らかなミスはあります!〔きっぱり!〕
● 技術や知識が稚拙だったり、不勉強なために起きる事故もかなりあります。
● 一方、例えば、アナフィラキシーショックのような、予見不可能な事故もあります。
更に、
● 患者自身や親族、あるいは弁護士の訴訟誘導によるたちの悪い、医師への恐喝紛いのケースも見て来ています。
しかしいずれの場合でも、訴訟までのトラブルに発展するケースに共通しているのは、
★ 訴訟に至る過程に、医療者側と患者側との
ミスコミュニケーションがある
ということです。
● 医療側が頑なに証拠提出を拒んだり、証拠隠滅を図って、民事だけでなく刑事訴訟にまでこじれるケースが多くみられます。
逆に、
● ボクの鑑定の結果を踏まえて、やっと過失に気がついた医療機関が過失を認めて謝罪して、遺族の意向を汲んで
「損害賠償の金額は問わない」
という、大岡裁判のような判決に至った事件も実際に経験しています。
信頼関係の破綻という側面を踏まえて、医療過誤事件に際して、
最も重要なことは、
★ 医療者側が、患者さん側に対して、
誠実かつ丁寧に対応すること
に尽きます。
● 愛のある良識的なコミュニケーションを心がけていれば、
患者さん側の誤解なら必ず解けるし、
仮に恐喝でも、法外な金銭的要求などの理不尽は、法〔裁判所〕が必ず退けて守ってくれます。
そして、特筆しておきたいのは、
● 裁判というと「怖い」というイメージが先行しがちですが、我々一般人が抱くイメージよりも、
実際の司法の現場はずっと人間的です。
突然患者さんや親族、代理人から不信感をぶつけられても、動揺して逃げたりせずに、初動の段階で、きちんと対応することが出来るかどうかで、その後の予後がかなり変わります。
医師・医療者側に対して、ひとことアドバイスすると…
★『医療事故損害賠償保険』に、
必ず加入して下さい❗️
補償額は保険会社により若干の差がありますが、だいたい『一事故2億円、年間3件まで』というのが多く、
(そんなに事故を起こさないのが当たり前ですが、どうやら、リピーター医師というのも存在するようです…💧)
学会や医師歯科医師協同組合などの団体加入で、掛け金は年間5万円弱の掛け捨てです。
ただし❗️
この損害倍賞保険は、医師が保険会社に責任転嫁をさせるものでなければ、患者さん側に好きなだけ損害倍賞請求をさせるものでもありません❗️
高額な損害賠償を伴う医療過誤では、必ず司法の専門家の目を通して公平に賠償が行われますので、保険に入っておけば保険会社から弁護士を紹介してもらえます。
解決までの話し合いの場には、① 裁判、② 調停、③ ADR(裁判外紛争解決機関)の3つがあります。
費用や時間の問題に加えて、医療は専門性が高くて法律家にも理解が難しいと言うことで、日本弁護士連合会が、全国の弁護士会と協力して『医療ADR』という紛争解決機関を設置しています。
★日本弁護士連合会 医療ADR
http://www.nichibenren.or.jp/activity/resolution/adr/medical_adr.html
ボクが実際に法廷で鑑定結果に基づいて質疑応答をしたケースで、大企業の産業医2名が健康診断の結果で悪性腫瘍を見落としてしまい、医療過誤訴訟に至ってしまったのですが、産業医が2名とも前述の損害賠償保険に加入しておらず、過失割合を巡って、医師2名がそれぞれ個人で弁護士に依頼したところに、会社の弁護士も加わって、3名の被告が法廷で見苦しく😓
お互いに責任をなすりつけ合うという光景を目の当たりにしました。
医療訴訟では、お決まりのように、鑑定人の証言能力をディスカウントするという不愉快な想いをするのですが、案の定💧…
「どの段階で悪性腫瘍を診断しなければいけなかったのか?」という部分で、ボクの証言が過失割合に大きな影響を及ぼしますので、被告医師側の弁護士による、代わる代わる僕に対する悪口尋問から始まるという、極めて不愉快な裁判でした。
(品のない弁護士は、ヤクザやチンピラ以下です💧)
2人の医師は損害賠償保険に入っていなかったため、弁護士も自腹で雇わなければいかず、雇われた弁護士としても、過失割合によって損害賠償額が大きく左右されますから、専門家証人(鑑定人)のディスカウントから、お互いの責任のなすりつけ合いも熾烈を極めていました。
このような事態を回避するためにも(ひいては不幸に見舞われる被害者・患者さんのためにも)、臨床医ではない産業医や、検診のバイトをしている基礎系の先生方も、決して自己の臨床能力を過信せずに、前述の損害賠償保険には必ず入っていただきたいと思います。
以上、医療過誤事件・訴訟に際して必要なことは、
【1】突然の通知にも動揺せずに、患者さんとの誠実なコミュニケーションを心がけること
【2】医療事故損害賠償保険に加入すること
この2つに尽きます。
=== 以下記事本文引用 ===
(医師限定で表示できないことがあるので)
医療過失の95%を回避する術、教えます
訴訟大国と呼ばれる米国では、ほとんどの医師が訴えられた経験を持つといわれるが、国営の医療サービスが普及している英国でも医療訴訟は珍しくない。
『Avoiding errors in General Practice』によると、国営の医療サービスに対する過失訴訟を扱う団体(NHSLA)の報告で、2010年に8億6300万ポンド近く(1ポンド140円換算で約1200億円!)が医療過失に対して支払われており、2010/11年度の過失訴訟件数は8655件に上るという。加えて、係争中や今後表面化すると予想される訴訟による賠償額も含めた潜在的な合計額は168億ポンド(2011年現在、2兆3500億円!!)に達すると推計されている。 こうした推計を出すにとどまらないのが、英国の合理的なところ。実は既に英国では、どのような医療過失が一般的に生じているのかという大規模な調査が行われ、どのような点に注意すれば医療過失による訴訟を回避できるかが明確に示されている。
例えば、総合診療医(GP)における医療過失として最も多い病態はたったの40例に絞られ、その40例がGPにおける医療過失訴訟の95%を占めることが分かっているというから驚きだ。
この40症例には、肺塞栓症やクモ膜下出血など、頻度は高くなくても見逃すことで致命的な影響を患者に生じ得る疾患が含まれる。また、診断のどこに落とし穴があるかも分かっている。多くの医療過失は前医もしくは自分自身の過去の診断に引きずられる形で、最初に考えられた診断と相反する症状が出てきているにもかかわらず、診断に立ち返らないことから生じている。
医療過失による訴訟を回避するためには、この40例を熟知し、一度、胸膜炎や片頭痛と診断・治療し、一時的に患者が回復していたとしても、患者を再診した際は、再度、診断に立ち返り、これら致命的な疾患が本当に除外できるかを考える――という基本に立つ、これに尽きるのだ。
日本でも医療訴訟は珍しいことではなくなっている。現在、日経メディカルでは、この40例を中心に、医療過失に至るプロセスを綿密に分析した上で、医療過失を回避する方法を指南した『Avoiding errors in General Practice』の翻訳作業を進めている(邦題『医療過失を回避するための技術』[仮])。翻訳者は、『JAMA版 論理的診療の技術』(日経BP社、2010)を始め多数の医療書の翻訳実績を有する竹本毅氏だ。
今春にも発売予定なので、出版されたら、ぜひ手に取って日々の診療の参考にしてほしい。既に、英語による原著は出版されているが、なんとも難解なブリテッシュ・イングリッシュで書かれている。編集担当として原著の英文と竹本氏の翻訳文を付き合わせながら、竹本氏の翻訳力に感嘆する毎日だ。医師は多才な方が多いが、竹本氏もまさに翻訳と医術の二物を神にもらった方なのだろうと、ひそかに思う。
英国の合理的な司法制度にも驚く。例えば医療過失で患者が死亡した場合、損害賠償金は1人当たり1万1800ポンド(約165万円)と決まっている。死亡した患者の子どもが幼く、養育を必要とする場合はその費用などが賠償額に追加される。また、過失により患者が後遺症を生じた場合は、その後の生活で必要となるケアの費用がその患者の余命を勘案に入れた上で決められるため、死亡した場合の損害賠償額よりも、はるかに高額な金額を支払うこととなる。一方、過失があったとしても、その過失が患者のその後の経過に影響しないと専門家が判断すれば、診断がつくまでに患者が受けた苦痛のみが賠償の対象になるため、賠償額は少額にとどまる。
提供される医療のほとんどが税金で賄われ、その医療による過失補償も税金でカバーされる英国ならではの、なんと合理的な取り決めだろうか。一方日本では、医療費が増え続け、患者家族が医療に期待することも膨張し続けている。日本の今後を考える際、英国におけるこのような割り切った考え方から学べることは多そうだ。
〔出典〕
医療過失の95%を回避する術、教えます:日経メディカル
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/eye/201702/550170.html?n_cid=nbpnmo_twbn


