父が私を呼ぶ回数は、めっきり減った。

今日はポータブルトイレに一度も行ってないし、
ポータブルトイレはベットから足を落とさないようにするための存在になりつつある。

足を落とさないように柵をつけたらいいのか?

って思ったけど、
なんだか柵に囲まれたベットでは、閉塞感があるし、気がすすまないので、

ポータブルトイレのアームに、座布団を置いて、さりげなく足がおちないようにしてみることにした。






「あぁぁぁ〜〜。。。。」




って声が聞こえてきて、部屋に行く。



私を呼びだすことがめっきり減ったのではくて、
私を呼びだすベルをならす力がなくなったからだ。
私を呼びだす方法が、絞るような父の声になった。




「お父さん、どうした?苦しい?」



ほんの少しだけ首を縦に振る。



「苦しい?」



ほんの少しだけ首を縦に振る。



「苦しいね。」




目を瞑ったまま首を縦に振る。




「少しだけ頭を上げようか?」




咳き込むのが辛いらしい。



続くような痛みがあるのなら、
その痛みを取り除くものを考えてもらうんだけど、
弱っていく身体の変化の苦しみはどうしようもない。






どうか穏やかな眠りを与えてください。








旅立ちの日は遠くないように思えてしまう。




どんなに苦しそうでも、私にできることがないんです。




今夜は私にも深い眠りを下さい。