仏エルメス、高級ブランドの勝者総取りモードに 4-6月期決算 - WSJ

 高級ブランド業界の直近四半期の増収分のうち、エルメスが100%以上を獲得する格好となった。高級品購入客がエルメスの各店舗で消費した金額は、前年同期を4億4000万ユーロ(現在の為替レートで約735億円)上回った。これに対し、バンク・オブ・アメリカの分析によると他の高級ブランド全てで消費された金額は計4億ユーロ減っている。

 興味深い。

 

 他のブランドを買うのをやめてエルメスを買う人が増えているのか、エルメスの客単価が増しただけ(すなわち景気減速・後退の影響を受けない顧客層)なのかはこの数字だけでは確定できないが、ここ数年の「価値が目減りしない物を買う」という世界中の消費者の堅実な傾向がより強く出ている気がする。

 

 お洒落番長的なシャネルさえもこの5年の傾向として、シーズンカラーより定番色、今季限りのオシャレなデザインのものよりも昔から続く定番品を求める人が増えている。

 

 値上がりペースが余りにも早いため、所得が追いつかない人達にとって、流行廃りの影響を受けたくないというのもあるだろう。定番品なら何年モデルなんて気にする必要もなく長く使えるから。いわゆる費用対効果の高さ。

 

 ブランド物のような贅沢品こそ、深層心理が見え隠れするもの。

 

 見通しが安定していて景気が良い時は「他の人と同じ色はイヤ」とかそういう心理が優位となり、季節・数量限定の物が良く売れる。

 

 個性とかアイデンティティ優先。そこにお金を払う「消費」の時代。言い換えるとお金と心の余裕・豊かさの表れでもある。

 

 一方、戦争や物価高、景気減速・後退などの先行き不安に見舞われると、人々はより手堅い物を選ぶようになる。個性とか二の次。むしろみんなが欲しがる物の方が「価値が高い」と感じ安心だったりする。シャネルもエルメスも定番モデルの「黒」と集中するように。

 

 「消費」というより「蓄財」(将来への備え)の時代。

 

 2年前、『有事のエルメス、ロレックス買い?』に書いたように、コロナ禍におけるエルメス・ロレックス大フィーバーはその代表例だろう。

 

 私から見れば、バッグに「資産価値」という言葉を使い始めた時点で、金銭的にも精神的にもゆとりがなく、高価な物を買うことにに対する不安の現れと受け止める。「価値が高い」「目減りしない」「無駄遣いじゃない」と自分や周囲を納得させられる材料が欲しい心理状態。

 

 その心理が働くのは、本人も周りもまだその生活水準に達してないから。「170万円以上もするバッグ買ったの?」と言われる可能性に対し自分で返答を準備している段階。

 

 センチュリオンのような年会費の高いクレジットカード然り、持ってて当たり前の集団の中にいると誰も何も言わないのでイチイチ建前を用意する必要もない。

 

 ※採用(選択)に理由付けが必要な層について理解を深めるには、イノベーター理論がすっきりあてはまるかと思う。

 

 こういった消費者心理を観察・分析すると、この数年のハイブランド人気でギラギラしたド派手な時代に見えつつ、その裏側で進行している現実が見えてくる。

 

 相場・時代の流れを読む上で重要な要素。

 

 将来的なかつ本質的な価値とは、一時的な増殖層を差し引いて評価する必要があるから。

 

 これを不動産に例えると、非常に人気があり競争率が高くかつ価格上昇率の高いエリアのマンションを買う場合、近所に「公立の学校が建設される予定です」と「超人気店が出店予定です」と言われた場合、ミーハーは後者を評価するが、本質的な価値としては前者の方が重要な意味を持つ。

 

 確かに「超人気店」が出店するということは、そのエリアの集客力・注目度が高いことを意味するが、マンションの価値低下の原因の1つに、過疎化による共益費・管理費の高騰や治安の悪化がある。すなわち中長期的に見れば定住性の高い物件ほど価値が安定する。

 

 20年、30年というスパンで見た場合、超人気店の存在及び人気は一時的なものであるのに対し、学校は明らかな人口増の推移がなければ建設されない上、少なくともその土地に眺望を遮る物件が建つ可能性が低くなり、かつ地域の治安が安定する。

 

 という具合に、価値・優位性を評価する上で、何をマスキングし、どこにマーカーを引くかが重要。

 

 エルメスやロレックスの場合も、蓄財組は差し引いて評価する必要がある。手放す可能性が高いから。

 

 

 私はというと、常に何も気にしない派(笑)。流行も追わないし、トレンドに左右されない。好きな色もスタイルも昔(子供の頃)から変わってない。ヴィンテージワインのようにそのまま熟成して(私は腐って?)いく感じ(笑)。

 

 世間の関心とブログネタとして引きが強いので今現在はエルメスを中心に書いているだけで、私自身の普段のファッションだけ見ればフェンディ率の方が高い。何気に。

 

 かといって私のベースはイタリアンではなく英国スタイルなので、大枠としては自分でデザインしオーダーして、細々したところにその時手に入る既製品の中からセンスの合うものを組み合わせて使う感じ。

 

 そこにスパイスを振るかのようにエルメスを織り交ぜている。

 

 何の影響も受けず我が道を行くタイプ(笑)。

 

 

 こういった消費者心理と昨今の相場のトレンド転換の様相を鑑みると、向こう1年くらいでエルメスの顧客層は蓄財組を中心に入れ替わるだろう。相場が荒れてくると早めに換金したい人達が殺到し、中古・転売市場が飽和するため価格が下落することからますますパニック売りを誘発し、新規購入を躊躇うようになるから。

 

 世界的な好況相場は今年04月が峠だったかなと思う。

 

 それでもエルメスは最新四半期決算も好調らしい。

 

エルメス、売上高が市場予想上回る-高級品需要減速の影響は限定的 - Bloomberg

 

 エルメスのような上場企業は定期的に情報が開示されるので「蓋を開けてみたら」のようなことは起きないと思うが、シャネルのように非上場企業は何があるかわからないという点で、個人的にやや不安視している。もちろん私には影響はないし余計なお世話なんだが。

 

 

 

via Charlie's Intelligence
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