自身の心に沁みた感動の風景を掲載するカテゴリ。今回はこの1枚の写真を語ります。2020年6月18日の早朝、スクーデリア・フェラーリの最新型F1カーが、彼らを育み共に発展してきた故郷の公道を走りました。写真は、シャルル・ルクレールの駆る「SF1000」がファクトリーから街の公道へ出ようとする場面です。この「出口」にも深い意味があります。

アルファロメオが提供するエンジンやシャシーでレースカーを造っていたフェラーリは、多くの試練と困難を乗り越え、完全自社製のクルマ「125S」を完成させます。その記念すべき1号車をエンツォ本人が運転し、公道へ乗り出たのが1947年3月12日。そのとき通過した出口と同じ場所から、2020年型F1カーを出発させたフェラーリの想いに、わたしは感動したのです。

 

メディアの記事によれば、フェラーリの長い歴史の中でも、F1カーをマラネロの公道で走らせたのは初めてだそうです。ファクトリーを出発し、F1カーや市販車を開発・製造する会社の中枢「ジェスティオーネ・スポルティーバ」と、ようやく一部開館したフェラーリ・ミュージアムの横を通過し、フィオラノのテストコースでゴールしたそうですよ。

まだ眠りから覚めないマラネロの街に、F1カーの轟音を響かせたこの走りに込めたイタリア人の想いを、ライバルたちは理解できるかなぁ…なんて、わたしはふと考えました。素人の個人的かつ勝手な想像と前置きし言わせてもらえば、まず、メルセデスはこうした行為自体を思いつきもしないでしょう。さらに、沿道が人で埋まる状況でなければ走らないレッドブルは、人影もまばらな早朝の街中で現行F1カーを走らせるなんて、絶対に理解できないでしょうね。

それは、想像を絶するコロナ災禍の苦難の最初の壁をなんとか突き破り、地元の誇りであるフェラーリは復活しましたよ…というメッセージをF1カーの咆哮に込めた彼らの意思表示です。なんかこう…やたらカッコいいと言うか、ロマンチックに感じてしまうんですよね。

 

何レース開催されるか解らない2020年シーズンでも、まぁなんとか3位に喰らい付き、中団チーム(とくにプチ・メルセデスのピンクチーム)に煽られることのないよう願うばかり。勝利などハナっから期待してないし、実際、今年はひとつも勝てないでしょう。

それでも、「これだから、フェラーリが大好きなんだよ」と強く思う風景に出逢えたことが、とても嬉しいわたしです。