スタ二スワフ・レム 浴槽で発見された手記  【サンリオSF文庫】

 

レムは砂の惑星、ソラリス等、好きな作家の一人だが、本書はかなり異質。別作家の作品といっても良いくらいだ。本当にレムの作品なのか。

 

物語は、符丁と暗号の交錯する迷宮の中をさ迷う男の話。全てが化かし合い、どれが真実かもわからない、暗号に彩られた世界に投げこまれたらどうなるのか。そんな作者の思考実験のたまものが本書である。

 

 
 

暗喩とか隠喩を使わない理知的な文体の作者だが、完成した魔宮は、そんじょそこらの密室・迷宮・ホラー映画よりも怖いかも知れない。

 

精神病とかで、こういう世界に行ってしまった人もいるかもしれない。私もかつてー瞬こういう迷宮に嵌まりかけた記憶がかすかにある。

 

 

 

一応、表面上は、大規模な諜報機関に潜入したスパイたちの話だか、案の定、サンリオSF文庫にありがちな、明確な筋のない難解な作品である。私にとっては、まだバロウズの方が読みやすかった。あちらは感性で読めるから。こちらは感性不要の世界で、チト辛い。

 

ただし、イライラする本作のページめくりを続けさせるために、素晴らしいリーダビリティ発生装置が、冒頭に用意されている。この前書きには、本書をSF仕立てにするある工夫が凝らされている。とても面白い設定で、これだけで一通りの物語を夢想してしまうほどの秀逸さだ。

 

だが、本作を文学作品として捉えるならば、結局の所、この前書きはなかった方が良かったのではないか。折角の実験小説を貶めているのではないか。そう思わずにはいられない。

 

思うにポーランドの編集者あたりが本書を売るために、あとからレムに書かせたのではないか。そんな気がしてしまう。それとも何か深い謎が仕組まれているのだろうか。

 

 

表紙を見てみよう。見ての通り、本作の表紙はサンリオSF文庫としてはかなり地味である。しかし一部白い領域があって、ー瞬万引き防止シールでも貼ってあるのかと手でさすってしまうほどの違和感を醸し出している。80年代に万引き防止シールってあったっけ。どういう意図が隠されているのだろう。はがすと何か書いてあるのか?それとも暗号なのか?形は五角形・・・。まさか、表紙までグルなのか・・・。