【改訂】定年欧州自転車旅行 目次

 

 

ジャジャ馬自転車との出会い
 午後、自転車屋を探す。よく歩いて3軒を訪ねたがどの店も実に高い。若者好みのマウンテンバイクはほとんどが12、3万円以上する。これに走行距離計や荷台を付けると14、5万円、日本で考えていた価格の2、3倍もする。迷いに迷って、年寄りには乗りにくそうに見えるマウンテンバイクはやめて、ごくスタンダードで頑丈そうな五段ミッション車に決める。それでも8万5千円。日本の約2倍である。
 この自転車には実は最後の最後まで泣かされることになる。約3時間を要して整備完了。お金を払うと店員が自転車を道路へ出してくれる。さあお乗りなさい、と。ところが乗ろうとするも、サドル(座席)がムチャクチャに高くてお尻がサドルになかなか乗っからない。無理して跨ると今度は足が地に着かぬ。そしてペダルを逆に踏んだものだから自転車がガクンと止まって途端に転倒する。この時初めて「ペダル逆転ブレーキ式」と知る。
 後日帰国後、年配の自転車屋のオヤジから、この方式をコスタータイプと呼ぶと教えてもらう。自分もたしか昭和25、6年の中学生の頃、1度友人のを試乗したことがある。あの頃は珍しくて嬉々としたものだ。ところがこの年になってみると慣れぬせいもあるが実に厄介な代物。お尻の位置を修止するのにペダルを踏んで腰を浮かせようとするとガクンときて体は前のめり、すぐに転倒する。これにはホトホト泣かされる。
 このタイプの欠点はこのほかにも沢山ある。スタートする時ペダルに足をかけて跨ろうとするが、この場合はペダルがペダル軸の垂線より前方にきていなければならぬ等。
 結局このジャジャ馬みたいな自転車でモロッコまで走る事になるのたが、もう1点どうしてもガマンならなかったのは変速第5速のスピード問題。これがあまりにも遅い。5速のスピードが全く感じられぬ。自分は自宅に3速自転車を持っているがそれよりも遅いように思える。せっかく5速車を買ったのにこんな自転車で何ヶ月も走るのかと思うととても我慢できそうにない。前輪のブレーキの利きもよくない。サドルの高さ調節も日本製と異なり、工具がないといじくれない…といろいろ不満が募る。
 何度も前のめりになりながら、それでもこのジャジャ馬を乗りこなすべくYHまで遠回りしながら練習を重ねてなんとか無事に乗って帰る。尻の痛いこと大変である。
 しかし結局、これではとても走り出せぬ、旅行には無理だ、明日自転車屋を再訪して交換を申し入れようと考えつつストックホルムの初日を終える。
 

 朝食後すぐに自転車屋へ。しかし昨日半日の練習だけで返品交換というのも大人げないのでさらに遠道をしながら練習に時間を割く。足が片方だけわずかに、それも尻を無理にずらせてやっと爪先が地面に接するという状態だからシリの痛い事おびただしい。ペダル逆転ブレーキ式も昨日と変わらず泣かされる。
 自転車屋に着き、お金を足すので買い替えたいと申し入れるが、昨日あれだけ英語でサービスの行き届いた30歳前後の女性が手のひらを返すが如くサッパリ応じてくれない。何を言っても英語はノーノーノーのみ。全てスウェーデン語で応じられて処置無し。その上他の来客に付きっ切りでこちらには見向きもしない。
 仕方なく整備工に直接訴える。サドルと前輪ブレーキはなんとかいじくってくれたが、第5速の再調整問題は、乗って確かめもせずに「工場へ送らねばならず5日を要す」とカレンダーを指差す。5日もここで足止め食らうわけにはいかずシブシブ引き取る。
 YHへの帰路、引き取った限りは練習あるのみと考えて練習に精を出す。遠路どこかでどうしてもガマン出来なくなれば、改めて買い替えるとするかとも考えつつ、昨日同様遠道をしてYHに戻る。

 

 

ストックホルム市内で昼食

定年欧州自転車旅行 1998.06.06(土)

 

 

昨日買ったこの自転車、なんと85,000円と非常に高い

コスタ―方式で、ペダル逆転で後輪ブレーキ、左手が前輪ブレーキで、右手は無し、実に乗りにくい

サドルを低くしてもらったが、猛練習がたたってお尻から出血しパンツが血で汚れる

定年欧州自転車旅行 1998.06.06(土)

 

 

(1998年)