レオン⇒アーセボ (El Acebo) 94.7km

1998年9月18日(金) 快晴、ほぼ無風

 

 

 

 

標高1507メートルの山越え

 アストルガの町で巡礼博物館を見学、その後ラバナル村からすぐに登坂路に入る。村の出口で登坂に備え休んでいると、農家の老人が、ポワール(洋梨)を2ケ接待してくれる。ありがたい事だ。四国遍路を思い出す。南無大師遍照金剛。

 この山越えはやはりすごい。これまでの小生の登山歴は昨夏(1997年)の北海道バイク旅行時に、日本百名山の第一座利尻富士(1719メートル)、第二座ラウス岳(1661メート ル)、第三座斜里岳(1545メート ル)に登っただけ。その時は1食分の弁当のみのリュックだけであったが、今回は自転車という大型荷物がある。

 この山越えは、珍しくも山の頂上付近で山頂方向にストレートに登る道になっている。通常の山越えなら、山間を通り抜けたりジグザグで山を登るものだが。よって頂上の手前約500メートルほどは実に厳しい登坂路。右手をサドルに掛け左手は左ハンドルを軽く支えて前傾姿勢で自転車を押し上げる感じで押す。5、6歩毎に止まって一呼吸する。

 山の中間くらいから蝿の大群にまとわり付かれる。耳やメガネにまでからまれて実に気持が悪い。蝿の発生源は想像がつかない。家一軒、牧場一面見当たらぬ。頂上に着いて風景写真を撮ろうとするがカメラにも群がってまともにシャッターを押せぬ。すごい大群。このため落着いて憩うという気になれずすぐに下山に向かう。

 頂上に巨大な立看板があった。それも実に文章量が多い。全文スペイン語なのでチラッと目をやっただけである。しかし見出し文の三文字、自動車、オートバイ、続いてサイクリストという単語のみは勘で読み取れた。

 この看板を過ぎてすぐ、前方の急坂を直視して仰天する。そしてすぐに先ほどの看板の意味を想像する。急勾配の下坂路のため運転、ブレーキの操作に気をつけよということであろう。一直線に下り坂になっている。これでは自転車は乗っては下りられない。小生の自転車ではブレーキがすぐにイカレてしまう。仕方なく、実にもったいないが、重力で自然に転がり落ちそうになる自転車を両足を踏ん張ってブレーキをかけて歩いて降りる。蝿がまとわりつくが手で追い払うわけにはいかぬ。大型犬に引っ張られてガニ股で踏ん張っている愛犬家、あのスタイルである。

 しばらくこうしてガマンして下ると、中年の2人組徒歩巡礼者が休んでいた。

「看板を読んだか? 読めなかった? そうか、あれには、昨年6月、ドイツの青年サイクリストがブレーキングに失敗して谷に転落死亡した、だから自転車族は乗っては下りるなと書いてある…」との解説あり。

 結局、標高差で200メートルほど下ったのであろうか、全路歩いてアーセボ村に着く。