自分はチャランゴという南米の民族弦楽器を長年弾いているんだが、先日クラシックギターのヤクザ氏(ここでいうヤクザはあまりにも演奏がうますぎる人を指す)経由で、チャランゴ製作をしている日本人がいることを知った。貝谷さんという方である。
クラシックギターのヤクザ氏は、練習でお会いするたびに、
「BBSはチャランゴ2台目買わないの? 買っちゃいなよYOU」と説得力のある圧力をかけてきた。
なるほど……確かに2台目のチャランゴが必要かもしれない……
実際2台目のチャランゴが欲しい気持ちはあって、というのも私の今使っているチャランゴはアホほど高品質なのだが、後述するが長所と表裏一体の短所があって、それは「音が綺麗すぎてつまらん」という問題である。
今持ってるチャランゴは料理で言うと黄金のコンソメスープで、黄金のコンソメスープは極上だが、必ずしも一番おいしい料理とは限らないというわけ
それを解決するために2台目のチャランゴ、それも音が汚い……汚いというか雑味の取り除かれていないチャランゴが欲しいという気持ちがあった。
するとチャランゴ製作者の貝谷さんが、即売会を含むチャランゴ展示会を開くというニュースが入った。
https://www.instagram.com/p/DAla0LNvh_z/?igsh=MTdtZHJsY3pobzA1Ng==
自分は瞬時に貝谷さんへ連絡を入れた。是非とも個展に伺わせていただきたく、云々。貝谷さんからの返信からは落ち着いた印象を受けたが、実際に個展で会った時は酒とつまみを買ってきた現れたひょうきんな人だった。
個展開催初日に万全を期した状態で凸するため、開店初日2週間前にコロナウイルスワクチン(ファイザー)を接種した。1日副反応で倒れた。
さて個展に行ったのだが、個展に入った直後から記憶があやふやである。素晴らしいチャランゴを取り替え取り替え試していたのは覚えている。そして気がついたらチャランゴを2台買っていた。
ンェ……?
つまり私のハウスにはチャランゴが3台あるということになる(腕は6本もない) 実家に眠る初代チャランゴを含めるなら4台になる(腕は8本もない)
あと個展の開催場所であるギャラリーでチャランゴを眺めていたら、外からスカイツリー(誇張)が入ってきた。知り合いのHさんである。個展の開催初日凸、会場1時間後に鉢合わせしたわけで、偶然とはいえ事実は小説よりもなんとらやらである。
(開催初日凸……さてはHさんも何か買いに来たな……)と思った。Hさんはポンチョを1着買い、その後追加でもう1着買い、更にアワイヨ(恐らく)を買っていた。
個展には時間差で貝谷さん本人も現れた。しばらくは貝谷さんとHさん、そして先客のSさん(フォルクローレの演奏歴は1年だが、長年聞き専をやっている方で、フォルクローレの音楽や楽器に対する知識が極めて深い方)と歓談したり、製作した楽器や取り寄せた楽器の試奏をさせて貰った。その後もう1人Hさんのお知り合いの方が来たが名前を失念してしまった。
「ATMから下ろしたなけなしの金が……」
「アッアァ〜いい楽器ですこれは……(その場に突如蹲る)」
「あのすみません、これはおいくらで……」
展示会とか個展というより同人誌即売会みたいな雰囲気だった。まあ実際同人の即売会ではあるかもしれないが
それで自分は一つのチャランゴに目をつけた。それは一般的な大きさのチャランゴなのだが、ボディ表面、ホール周辺の塗装が煌びやかな赤のチャランゴである。貝谷さんの作ったチャランゴで、ロゼッタ(ホールの円周に貼る、装飾的な紋様)も緻密である。すごe(素朴な感想)
チャランゴって種類によってはボディ下半分は茶色! 上半分は焦茶! 終わり! みたいな素朴なデザインも多い中、赤くて装飾的なチャランゴはド派手で良い
音はというと、今使っているお上品なチャランゴとかなり違う。でも上品さに欠けるわけでもない。今のチャランゴはシャキシャキとメリハリのある音がして、ソロ向けというか、なんかチャランゴというよりクラシックで使うような切れ味のある音がする。一方で貝谷さんのチャランゴは、シャランシャラン、チャランチャランと、アタック(音の出始め)が丸みを帯びた優しい音がする。
「貝谷さん……“これ”かもしれないっす」
「80,000円ね」
チャランゴとしては高いがチャランゴの完成度とか見た目の華やかさを考えると全然安い、むしろお買い得、買い物上手、チャランゴは買えば買うほどいい(自分に言い聞かせている)
こちらのチャランゴは個展の間は展示したいので、個展が終わってからの引き渡しということになった。恐らく今「売約済み」の札を下げられていると思う。
その後ワライチョ(こちらは貝谷さん作ではない)を弾いてみた。
くぐもったレコードの音が出た。
ウワーーーーーー!!!!!!
Cesar Palacios(チャランゴ奏者)の音がするーーーーーーー!!!!!!!
Cavourの音もするーーーーーー!!!!!!
「このワライチョもください」
「10,000円ね」
5回くらい聞き返したが10,000円だった。俺が騙されているのか貝谷さんが騙されている可能性はある
こうして私のチャランゴが2台(一台はワライチョだが)増えた。あえなく破産です
