齧りかけの地球 情報編

齧りかけの地球 情報編

メインのブログ「齧りかけの地球」を補填する具体的情報を載せています。過去にブログ全体を喪失したため、比較的最近の旅先についてしか情報がありません。

Amebaでブログを始めよう!

 

 

ライム病の体験と治療

 

 

2020年3月、ネパールでマダニに咬まれてライム病になりました。ライム病に関しては、いくぶんかの医療情報がネット上にありましたが、経験者の報告は見つけることができませんでした。ということで、そのことを書き残しておこうと思います。

 

 

ライム病は思っていたより様々な症状を発現させ、いま現在も完全に治癒したかどうかわかりません。将来的なリスクを残したままです。

それでもライム病だけですんだ(希望的観測)のはまだ運が良く、感染したのがツツガムシ病やSFTSなら、命があぶなかったかもしれません。

 

ライム病は、日本ではまだまだ珍しい病気ですが、欧米では何万という症例が報告されています。特にダニ咬まれたことに気がつかなかったり、関連づけることなく慢性化させて、長い間苦しむ人が多いのが問題になっています。

歌手のジャスティン・ビーバーも、この病気にかかったことをカミングアウトしています。

 

 

発症したときは、ライム病の病原体を持ったマダニに、「運悪く当たっちゃった〜」 という感覚だったのですが、治療開始から2か月以上がたったいまでは、慢性化させたら大変だから、なんとか完全治癒させねばと、ちょっとばかりシリアスです。

 

 

一通りの知識はあったのに、ここまで治療が長引くとは思わなかった。こんなに大変とわかっていたら、もうちょっと用心したかも。そういう思いをこめての報告になります。

 

 

マダニのいる環境とは

 

平成の終わり頃、日本でも立て続けにマダニに咬まれた人がSFTSという感染症でなくなる事例が続き、マダニの危険性はだいぶ知られるところになりました。

 

このマダニというのは、俗に草ダニとも呼ばれ、家のホコリの中にいてアレルギー等を起こすダニとはまったく違います。山や森の草や笹藪の中にいて、通る動物や人間に寄生して吸血します。

 

問題はその吸血過程で、病原体を人間に感染させるということです。

 

 

一般の山道やけもの道を歩いているぶんには、それほどやられることはありません。しかし草むらの中に突入すると、かなりの確率でやられます。

でもそれも季節やらいろんなファクターがあるようで、今回はともにジャングルに入った連中がみなやられました。咬まれた場所と日にちはバラバラです。

今回が3月で、前回咬まれたときは9月だったので、一般に初夏から秋と言われるシーズンには一致していますが、熱帯の場合、いつがシーズンかはよくわかりません。

 

 

やられる頻度は、ヒルのほうがずっと上です。ヒルは川辺の茂みや湿度の高い所にいて、そばを通る動物の体温を感知して取り付いてきます。それに対してダニの場合は、そういう特殊な場所ではなく、とにかく藪のなかです。

町から近い場所でも、そういうところにガサガサと入り込む犬は、よく何匹ものダニをくっつけて帰ってきます。

 

 

ダニに咬まれたときの自覚症状

 

ヒルもそうですが、ダニに咬まれても自覚症状はありません。これが面倒なところです。

 

ヒルの場合は、いるのが特殊な場所で、またクネクネと動くのを見つけやすいので、ときどき休憩時間をとっては全身チェックをします。靴下やメッシュの靴を通過して入り込むので、靴下を脱いでみたら足の指の間で血を吸っていたなんてことが珍しくありません。

 

一方でマダニは、まったくわかりません。まずダニそのものが小さい。人間に取り付く吸血前のマダニは、たいていサイズが2〜4mmしかありません。そして草から人間の体に移って、服のすき間から中に侵入してくるのですが、それを感知するのは不可能です。

 

私は必ず長袖長ズボン、靴下をはいてトレッキングシューズと、かなり服装には気をつけています。だから現地の連中のように、脇の下や脇腹をやられたことは一度もありません。マダニにやられたのは2度だけ、どちらもズボンの裾から入られました。

 

 

前回、ダニは足を登りつめて、足の付け根の内側にいました。今回はひざのちょうど裏側です。ダニは這い上がってくるわけですが、これがまったくわかりません。アリなら、どんなに小さくてもわかるのに、ダニは絶対にわからないんです。

 

 

そういう居心地のいい場所に到達したダニは、吸血を始めます。これがまた、チクリともしません。ヒルの場合も何も感じませんが、ヒルは充分に吸血すると、大きく膨らんでポロリと地面に落ちます。一方でダニはその場にとどまり、何日も何日も血を吸って巨大化します。その間、体が離れないように、吸血している口を特殊な成分で動物の体に固着させます。そうなるとひっぱってもはがれず、無理に取ろうとすると口の部分が残ります。

 

 

この無症状状態が何日か続くと、ダニの取り付いた部分に、独特の痛みというか、しびれのような感覚が出てきます。今回は「これはもしかして」と気がつきましたが、初めてのときは、南京虫に刺されたところが化膿したかなと思いました。下着姿になるまでチェックできない場所だったので、発見も遅れました。

 

 

今回はその痛みが出る前に、咬まれた翌日から妙な倦怠感やら風邪気のような症状が出ました。下痢症状も出て、横になって休んでいました。

これはライム病の感染初期の症状だったのか、ダニのせいか、いまだに不明です。

 

 

 

マダニを見つけた

 

独特の痛みが出て、私はようやくダニに寄生されたことに気づきました。ズボンを脱いで膝の裏を触ってみると、小さな草の実のようなものが触れます。ダニです。寄生されてから3日がたっていました(正確なところは不明だが3日以下ということはない)。

 

 

今回は自分ではまったく見えない場所なので、友人に取ってもらいました。ティックツイスターを持ってきていたので、除去は簡単でした。前回のときは、自分で見える位置だったので、自分でピンセットで取りました。


今回取り除いたダニ。背景にあるのはティッシュです。

 

 

ピンセットを使う場合は、絶対にダニの体をつままないこと。圧迫すると、ダニの体内にある毒や病原体が自分の体に注入されてしまいます。ダニの頭の部分を狙って、自分の皮膚ごとひっぺがします。痛いし血が出るけれど、そうしないとダニの口が体内に残ります。私は常にダニ対策で、眉毛抜き用のピンセットを携帯していました。トゲ抜きも兼ねていたから。

 

 

前回眉毛抜きで取り除いたダニ。皮膚ごとはさみ取りました。

 

今回持参していたティックツイスターは、プラスチック製で、すごく小さな釘抜きのような形をしていて、ダニを簡単に除去できます。もともと獣医が犬猫用に使うもので、日本のAmazonでも輸入品を500円以下で売っています。ティックは英語でダニの意味です。

ティックツイスター(Amazon)

 

 

 

ネット上には線香を使う、アルコールを使うなど、いろいろなダニ取り除き方法がでてきますが、やめたほうがいいです。いちばん大事なのはひっぺがす瞬間なので、いまのところはティックツイスターがベストです。そしてダニを除去した部分は消毒をしてください。

 

 

 

そして除去したダニは、必ず写真に撮っておきましょう。ちゃんと頭から除去できたか確認できるだけでなく、何か病気を発症したときに、どんなダニだったかは診断で大きな要素を占めます。寄生していたのがマダニではなく、ツツガムシだったら大変です。写真に撮っておけば、パソコン等で拡大してみることもできます。

 

 

 

ダニからの病気の感染は、ダニが取り付いてから72時間以上たつと、確率がずっと高くなると言われています。その日のうちに病院に行けるようなら、絶対に自分で取ろうとしないほうがいいですが、何日も動けない場合は、自分で除去したほうがいいと思います。

 

 

 

でもその場合も、あとで皮膚科には必ず行ってください。ダニの目に見えないほど小さい口の一部が皮膚に残っていると、半年くらい痒みや鈍い痛みが続きます。患部の皮膚を少し切り取ってもらうと、すごく楽になります。

 

 

 

またダニによる感染症はライム病だけでなく、致死性の高いものもあるので、とにかく病院です。

 

 

ダニに噛まれた部分の痛みは翌日も続き、腫れやむくみも見られました。

 

 

 

 

ライム病の可能性は調べられるか

 

 

結論から言うと、これは発症するまでわかりません。診断するうえで決め手になるのは、発症した時の症状に加え、ダニの種類と刺咬部の様子です。

 

 

ダニに咬まれてからなんらかの病気を発症するまでの期間(潜伏期間)は、3日〜32日とか、人によってまったく違います。海外で咬まれた場合、ほとんどのケースでは帰国後に発症して治療ということになるので、旅行保険を使うことを考えると、とにかくすぐに皮膚科に行っておいたほうがいいと思います。30日もたってから発症すると、ダニにどこで咬まれたかも怪しくなってしまいます。

 

 

最初にダニに咬まれたとき、私は帰国後、東京の新宿にある、国立国際医療研究センターを訪ねました。ネパールのその地域で、ライム病が多発していると聞いたからです。

 

 

 

 

国立国際医療研究センターの外観

(センターを訪れたときの日記ブログ)

 

 

行ってわかったのは、感染したかどうか、発症するまで調べる方法がないということでした。抗体検査等をしても、なかなか結果がでず、発症するかしないか、様子をみるしかないという。

ただその時に、いろいろ教わったことが、本当に役に立ちました。

 

 

今回は、ライム病を発症したのに、ロックダウンで帰国できず、すべてを自分で判断しなくてはなりませんでした。ネット上の情報は、非常に限られていて、同じようなものばかりでした。国立国際医療研究センターで聞いた知識がなかったら、間違った対処をしていたと思います。

 

 

それも、経緯をここに書き残そうと思った一因になっています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライム病の発症

 

それはダニに咬まれてからちょうど10日目のことでした。シャワーを浴びようとして、右足の裏側が、膝裏からふくらはぎにかけて、赤くなっているのに気づきました。すぐわかりました。

やっちゃった、ライム病の紅斑(こうはん)キターッという感じです。

 

 

ネットの医療情報ページでは、二重丸のような紅斑の写真をよく見かけます。「牛の目のような」という表現もありました。私の場合は、そこまできれいな二重丸ではありません。

しかし咬まれた場所を中心に、おみごとに円形に赤みが現れました。

 

 

この段階で、すぐ宿の友人に患部の写真を撮ってもらいました。この紅斑こそがライム病診断の決め手で、じきに消えるということを知っていたからです。

 

友人に撮ってもらった紅斑。この写真がその後ずっと、ライム病の診断に使われました。

 

 

 

この時点では、数日後に帰国して、日本で治療する予定でした。ライム病は数日を焦る病気ではありません。したがって深刻には考えませんでした。

ただ紅斑の写真を残しておかないと、もし紅斑が消えてしまったら、診断に手間取ることになります。

 

 

咬まれてから15日目。5日間で紅斑はかなり薄くなった。
 

 

次に紅斑とダニの写真を、メールに添付してオーストラリアの息子に送りました。息子は獣医なので、人畜共通感染症であるライム病の診断ができます(人間の治療はだめ)。そして「まずライム病であろう」という診断をもらい、手持ちのクラビット500mg/日(抗生剤)を飲み始めました。

これは治療というより、治療に入るまで病気の進行を抑えるためです。

 

 

タイとかマレーシアといったちゃんとした国なら、感染症はその国の病院で治療したほうが有利な場合があります。デング熱やマラリアなど、日常的に治療しているからです。日本だと、特殊な病院に行かねばなりません。それに旅行保険を使って、そういう国で入院した場合、病室から料理まで、めちゃくちゃVIP待遇ですからね(笑)。

 

 

しかしネパールの場合は違います。一番近い病院が宿から車で2時間以上。さらに、そこに行ってもなんの設備もない。たぶん英語も通じない。

首都まで行けば、少しはマシな病院がありますが、現地の友人は「ネパールにはライム病はない」と言います。これはブログに書いたのですが、ネパール人は小さい頃から散々ダニに咬まれていて、ライム病の免疫ができている。だからそんな病気を発症する者はいないという意味です。のちにこれが事実であることを思い知ることになります。

 

 

ライム病の症状が出る

 

 

帰国しての治療という目論見は、その翌日にいきなり方向転換せざるをえなくなりました。

新型コロナウイルスの流入を防ぐために、他国に先駆けてネパールは、国際空港を突然封鎖したのです。いつ帰国できるかまったくわからない状態では、ライム病をほっておくわけにはいきません。持っている抗生剤は限られています。

 

 

私は自己治療にとりかかることにしました。幸い友人(フランス人)が子供の感染に備えて、アモキシシリンという薬を少し常備していたので、服用を始めました。

 

 

しかしその夜から、独特の倦怠感、激しい頭痛、悪寒、ひどい下痢、微熱に襲われます。とにかく苦しく、倦怠感がすごくて、夜もなかなか眠れません。それだけでなく、軽いめまいや、激しい動悸といった症状もあります。食欲はゼロで、ただ無理して水分を摂るだけ。

 

 

友人は服薬による反応だと言います。彼女の父親もライム病にかかって、同じような症状で苦しんだと。私もそうだとは思うけれど、ここはフランスではありません。医師不在という状況下でこれはやばいです。しかも薬は限られていて、町に買いに行くにしても道路はロックダウンで検問だらけです。薬局が開いている保証もない。

 

 

翌日も症状は変わらず、夜中じゅう、雷雨がトタン屋根に叩きつける音を聞きながら、一人でのたうちまわっている状態でした。ついに私は首都カトマンズまで戻ろうと決めました。

 

 

このカトマンズ行きには、もうひとつの理由もありました。発熱、倦怠感、下痢‥‥、いまならみんなピンとくると思いますが、これは新型コロナの症状でもあります。私はその5日前に、スペインから来た観光客と接触していました。

ライムだけじゃなくてコロナにも感染していたら、周囲に感染を広げます。そういう思いもあったのです。

 

 

病院に行く前にやること

 

 

海外で病気になった場合、特にそれが後進国の場合、頼りになるものは2つだけです。

まずは海外旅行保険です。ただ使い方には、一点注意があります。

 

 

海外旅行保険は、医師の診断がおりた場合に適用されます。現地の病院にアクセスができない場合、「紅斑が出たからライム病だ」と自己判断だけではだめです。ここでマダニと紅斑の写真が重要になります。私の場合は息子がいましたが、知り合いに医師がいない場合は、かかりつけ医等に写真をメールで送るなりして、とにかく診断してもらいます。そして保険会社に電話します。保険会社サイドの医師でもいい。この事前の電話を入れることで、そのあとの選択肢はぐっと広がります。また保険会社が勧める病院は、大抵いちばん設備の整った病院ですし、のちのちの保険申請も簡単になります。

 

 

次に頼れるのは、各国の日本大使館です。後進国に向かう場合は、必ず事前にスマホに、現地の日本大使館の電話番号とメルアドを入れておきます。現地で交通事故にあったり、瀕死の状態になった場合、検索なんてしていられません。

実際にアフリカで横転したバスを見たことがありますが、死人と重症者は地面に並べられるだけで、救急車なんて永遠に来ませんでした。

 

 

奥地にいる場合、その地域をわずかでも知っているのは、保険会社より大使館です。今回はロックダウンという特殊な環境下で、レスキューヘリ(民間会社の経営)でカトマンズの病院に直行できました(微熱があるとコロナの疑いで国内線にも乗れなかった)。こういう手配は、大使館ならではのものです。

ただしそれに伴うとんでもない費用は個人持ちです。海外旅行保険と、さしあたっての費用が建て替えられるクレジットカードは必須です。

 

 

今回はキャッシュレスにならず、高額なヘリコプター費用を含む70万円以上の建て替えが必要でした。それはやはりネパールだから。病院とグルになって、ヘリコプター会社が暴利を請求したケースが過去にあったようです。

ただ私のケースは、ヘリコプターの調達が日本大使館の医務官(医師の資格を持った大使館員)経由だったので、後にもめることはありませんでした。

 

 

 

緊急を要するのに、高額をその場で支払えない場合や保険に入っていない場合は、たぶん日本の家族等に大使館から支払い能力について、問い合わせがいくと思います。

海外旅行保険は絶対に必要です。死体で帰国する場合でも、300万円(フィリピンから移送の場合)〜600万円以上がかかります。これは保険の「救援費用」から支払われます。

 

 

 

 

ネパールでの入院

 

 

首都の病院では点滴を打ち続けて、3泊で退院できました。

入院中はドキシサイクリンを処方されていました。倦怠感と頭痛と下痢が特にひどく、栄養は点滴で摂っていた状態です。熱は微熱レベルで、ネット上の情報とは違い、インフルエンザのような筋肉痛や関節痛は一切出ませんでした。

 

 

退院前日に頭痛がだいぶおさまり、少し食べられるようになりました。最後の晩は、初めてちゃんと眠れた記憶があります。

 

 

入院したのはネパールでもっとも最先端設備を誇る私立病院でしたが、主治医はやはりライム病そのものを知りませんでした。

予想以上にひどい病院で、日々が戦いだったのですが、詳細は日記ブログにあります。

(日記ブログへのリンク)

 

 

でも点滴で体力が戻ったのと薬の効き目か、以後はいろいろな症状が治まりました。ただ倦怠感は何日も残りました。

退院後は帰国の救援機が飛ぶまで、自分で買ったドキシサイクリンの服薬を続けました。

ネパール滞在は、ダニに噛まれてからまる1か月続きました。

 

 

ドキシサイクリンはごく普通の第一世代抗生物質で、オーストラリアやヨーロッパでは、抗生剤というと、よくこれが処方されます。子供のころから抗生剤漬けの日本人やアメリカ人には心細い抗生剤ですが、スピロヘーターなどにはよく効くそうです。

 

マラリアの予防薬としても有名で、アフリカを回るときは、これを毎日1錠服用します。他にも予防薬はありますが、ドキシサイクリンは一般的によく選択されます。そういう薬なので、後進国では薬局に行くと、かなり安く手に入れることができます。

 

 

ネパールで買ったドキシサイクリン。30錠で167円でした。

 

 

 

 

 

帰国後の治療

 

 

救援機が飛び、ようやく日本に帰国できました。しかし本来行きたかった「感染症科」は、どこもコロナ対応に忙殺され、外来患者を断っていました。

 

日本での病院の選び方ですが、単にダニに咬まれた場合は皮膚科で充分です。もし自分でダニを除去した場合は、そのダニの死骸か写真を持ち込みましょう。咬まれた場所とダニの種類は、診断に重要です。

 

その後、体調が不審だったり、ライム病等を発症した場合は、皮膚科で紹介状を書いてもらって、大学病院等の、皮膚科の外来に行きます。

 

今回私の場合は、以前行った国立国際医療研究センターをはじめ、ライム病に強いところが軒並みコロナ対策で外来を受け付けていませんでした。いろいろ調べて(自主隔離期間が14日間もあったし)皮膚科でも対処できることがわかり、近所の皮膚科で紹介状を書いてもらって、S大学病院の皮膚科に行きました。ここは1年半前に入院していたことがあり、院内の様子をよくわかっていたのと、比較的各科の横の連絡があるのを知っていたからです。

紹介状は、頼めば自分の行きたい病院に向けて書いてもらえるので、事前に自分で調べておきます。

 

今回はコロナウイルスの渦中だったので、他に選択肢がありませんでしたが、本来はライム病の症例を多く扱ったことのある病院がお奨めです。

これは後遺症が出た場合に、対応が違ってくるからです。

 

東京なら、新宿区の戸山にある国立国際医療研究センターです。ここは海外の感染症に詳しい、成田空港の検疫にいる医師のお勧めでした。地方の場合は、ネットでライム病について調べると、署名入りのウエブサイトが出てくるので、その医師の勤務先の大学病院に行くのがいいと思います。

 

今回のS大学病院は、初診時に部長先生も写真等を診てくださり(医師の指定のない紹介状だったので担当は若い医師)、診察も非常にていねいでした。

 

ただ担当医によると、ライム病の経験はこの皮膚科全体で過去に一例のみ。判断やアドバイスも、ことごとくが事前にネットで調べた範囲を大きくはでていませんでした。これは症例の少ない日本では当然のことです。ライム病というのは、非常に多岐にわたる症状を示すので、臨床例を複数知り、海外の研究に精通した、数少ないドクターのところに行くことを勧めます。

 

治療の内容

 

最初に訪れた街の皮膚科では、こちらから希望してアモキシシリンを出してもらいました。これはネパールで、ドキシサイクリンのアレルギーと思われる症状が出たからです(のちに違うとわかる)。

 

病院にはダニと紅斑の写真を持ち込みました。その写真でライム病が診断されました。また咬まれた日時や症状など、時系列で整理した書類を持ち込みました。こういうものがあると、紹介状の作成が簡単になります。紹介状には発症からの経緯を書く必要があるからです。

 

紹介状を持って行ったS大学病院では、やはり写真と経過説明が大事になります。作っておいた書類は、ここでも役立ちます。

この初診では、まず血液が採取されて抗体検査にまわされました。次に咬まれた幹部の視診があり、ダニの一部が残っている可能性があるので、皮膚の切開が行われました。膝裏で動く部分なので、4、5針縫ったと思います。

切除した皮膚片は生検にまわされました。

 

薬はクラビット(抗生剤)500mg/日が処方されました。これはちょっと???だったのですが、日本は強い抗生剤を常用するので、皮膚切開に対するクラビットなのかなと解釈しました。

 

この皮膚切開で驚いたのは、患部の痒みやわずかな痛みがいっきょに消え、体調がその日からどんどん良くなったことです。

前回ダニに咬まれたときは、痛痒いのが半年も続きました。やはり自分でダニを取ったのでは、残留物が出ることを思い知りました。

前回行った国立国際医療研究センターでは、治療は一切なかったので、こういう細かい対処は皮膚科ならではだと思いました。

国立国際医療研究センターは臨床よりも研究寄りですから。

 

ここから1週間は湯船禁止でシャワーだけで過ごし、毎日傷口に自分で薬を塗りました。

 

1週間後、再び受診。抗体検査の結果はまだでていませんでした。またクラビットが処方されました。

 

さらに1週間後受診、そして抜糸。抗体検査はネガティブでした。これは昔、国立国際医療研究センターで、あまり陽性には出ないと聞いていたので、想定の範囲内です。一方で生検のほうでは、切り取った皮膚から異物が発見されます。

検査結果には以下のように書かれていました。

 

「皮膚には潰瘍があり、壊死物、フィブリンなどの付着があります。真皮では、リンパ球や好酸球などの炎症細胞浸潤が見られました。潰瘍底には、わずかながら異物と思われる像を認めます。ダニの一部と推定されるものです」

 

リンパ球や好酸球は白血球の一部で、特に好酸球は、寄生虫や細菌などに感染した時に増加します。

ここでやっと、ダニに咬まれて感染があったことが、本当らしいということになります。しかしこの生検でライム病が特定できるわけではありません。

ライム病の診断では、紅斑がいちばん重要で、写真を撮っておくことが、いかに大事かということです。ただ紅斑が大々的に出ないケースもあるようなので、常に咬まれた部分と、微妙な体調の変化に注意をはらってください。

 

皮膚切開の跡は完全にふさがっていたので、医師に頼んで薬をクラビットではなくアモキシシリンにしてもらいます。これはライム病治療にはドキシサイクリンやアモキシシリンのほうが一般的なのと(担当医師はクラビットでも効果は同じと言う)、クラビットはかなり強い抗生剤なので長期服用は避けたいというのがありました。

 

その後2週間、アモキシシリンを服用して受診。この受診では、非常に迷うことがありました。この病院の受診後だけで4週間抗菌薬を服用しています。その前のネパールと自主隔離期間での服用を加えると、10週間以上の服薬です。これは非常に長期と言えます。

でもそのとき、私の右手の指にはまだ、わずかなしびれが残っていました。病原体がまだ残存している可能性があります。

そのことを担当医と相談して、あと2週間だけアモキシシリンを継続することにしました。その段階で、もし痺れが残っていても、服薬は一度休むことにして、次の受診予約はとらないことにしました。

 

この日はアモキシシリン2週間分に加えて、メチコバール(ビタミンB12)28日分が処方されました。これは抹消神経痛やしびれを改善する薬です。

 

 

 

指に起こったしびれ症状

 

ネパールで退院後、ダニに咬まれてから24日目、右手の人差し指に変なしびれがあることに気がつきます。いつから始まったのかは不明ですが、このころにははっきりと感じていました。正座をして足がしびれたときの、あの感じです。

 

 

これはだんだんひどくなり、帰国して日本の病院に行くころには、かなりの痛みになっていました。具体的には、手を伸ばして何かを取ろうとすると、指先に電流が走ったようになり「イタタタ」と声をあげてしまいます。

 

 

咬まれて46日目には、左手にもいくらかしびれが出ました。特に親指の付け根です。右手は中指にも違和感が広がりました。振り返ると、しびれはここがピークだったようです。

 

 

原因は不明ですが、日本の病院でアモキシシリンの投与を続けていると、じわじわと改善したので、やはりライム病と関連しているようです。

 

 

ライム病が関節炎や神経の麻痺などを併発する可能性があるというのは、広く知られているところです。有名なのは顔面神経麻痺です。

 

 

私の場合は関節の痛みや筋肉痛が一切なく、このしびれ症状が出ました。一般的には、このようなしびれは関節炎から発症し、整形外科の扱いとなります。しかし私の場合はライム病の発症や治療とシンクロしているので、関節痛がなくても、これは関節炎を発症しているか、神経症状のひとつと思われました。

 

 

ライム病の病原体はスピロヘータで、細菌の仲間ではありますが、かなり変わっています。

 

 

最近の研究では、この病気のしつっこさが言われています。

 

CDCライム病は本当に厄介な病気だ。マダニが媒介するこの感染症はかつて、抗生物質を数週間服用すれば治るだろうと考えられていた。だが米国疾病対策センター(CDC)はここ数十年で、ライム病患者の5人に1人が治療後も疲労や痛みなどの症状を引きずっていることに気付いた。これは「治療後ライム病症候群」と呼ばれ、原因は不明だ。」

(引用したサイトはこちら)

 

 

「多くのライム病患者は24週間の抗菌薬治療によって回復しますが、最終治療後にPTLDSを発症することの問題が指摘されています。PTLDS(ライム病治療後症候群)の原因は不明なのですが、一部の専門家は自己免疫反応や他の病原体の関与を指摘しています。また、ある専門家は抗菌薬の存在下でも生残する休眠状態の病原体(persister)の関与を指摘しています」

(引用したサイトはこちら)

 

 

私の治療が長引いたのは、このしびれが改善しないうちに服薬をやめることに不安を感じたからです。ライム病に関しては、既存の治療を鵜呑みにするのは危険です。医師側も経験がないのですから、自分で自分の体調をチェックしながら、治療に要望を加えていくことも大事だと思います。

 

結局私は12週以上抗生剤を服用し、どうにかしびれも感じなくなりました。ドキシサイクリンやアモキシシリンは、比較的長期に服用しても大丈夫なはずです。でもクラビットの長期服薬はまずいと思うんだよね。

 

 

関連が不明なアレルギー症状

 

ネパールにいるあいだ、食事はほとんどカレーで、肉といえば鶏肉がわずかに入る程度。魚は無縁でした。

そこに帰国するイギリス人から、貴重なツナ缶をもらいました。大喜びしてサンドイッチにして食べると、様々な症状が発現しました。

 

吐くまではいかなかったけれど嘔吐感、微熱、そして強い倦怠感。とにかく苦しくて、ベッドでひたすら横になっていました。いくらか回復して、残っていたツナサンド(貴重品ですから)を食べようとすると、もう口に入れただけでだめ。

そのときは、ホテルで借りたマヨネーズが痛んでいたのかなと思いました。

ダニに咬まれて29日目のことです。

 

 

次に体調を崩したのは、帰国したその日でした。久々の日本で特上うな重を頼んだところ、味は美味しいのに、半分くらい食べて気分が悪くなりました。ツナサンドの時よりも倦怠感が強く、微熱が出て、そのためか頭痛もします。

ベッドで横になっていると、手のひら、足の裏、ふくらはぎ周辺に痒みがあります。痒みはそのうち手の甲にも広がりましたが、発疹やむくみ等はありませんでした。

この段階で、これはアレルギーだと気がつきます。

 

いままで食物でアレルギーが出たことはいちどもありません。このうな重の3時間くらい前に食べた寿司では異変はありませんでした。アレルギーで持っているのは、散々刺されてなったアシナガバチだけ。

そこでこのときは、長期服用した抗菌剤、ドキシサイクリンのアレルギーだろうと思いました。

ダニに咬まれて32日目のことです。

 

その後、ときどき手のひらが痒いようなことがあっても、基本的に変化はありませんでした。そして弟と会い(うなぎ好き)再び上等なうな重を食べたところ、まったく同じ症状がでました。ダニに咬まれて、ちょうど60日目です。

これは食物アレルギーだと確信しました。

しかしその2日前に食べた寿司(マグロが中心)では、まったく何も起きていません。またカレイの煮付け、鮭などでも何も起きていません。さらに日本のツナ缶も問題ありませんでした。

 

アレルギーは免疫反応によって起こります。これまで食物アレルギーとは無縁で、親族にもそのようなアレルギーを持った者はいません。まずはライム病との関連を疑いました。病原体が体内にはいったことで、なんらかの免疫が過剰に反応しているのではないかと。

 

 

調べていくと、非常に面白い研究に行き当たりました。白血球の一種である好塩基球が、吸血ダニに咬まれると増えてダニを攻撃し、動物にダニに対する抵抗力を持たせるという説です。

(参考にしたサイトはこちら)

 

しかしこれは、一説にすぎません。本当のところは不明。たまたまウナギだけに含まれる何かが、ライム病の病原菌と同じタンパク質を持っているのか。

以来、ウナギは食べていません。安いものではないので、試してみる気になりません。ウナギだけなので、ラッキーと言うべきかもしれません。