なんの会話の途中だったか、クラスメイトのCが以前行った日本の話を始めました。
C「日本ではね、電車の中で電話しちゃいけないのよ。みんな下を向いて、メッセージを読んだり送ったりしてるの」
教師のジャスティンが目を丸くして、私を振り返ります。
「嘘だろ〜。なんでだ」
あっちゃー、めんどいの来ちゃった。
平成を装って答えます。
私「それが日本のマナーなの。ノイジーだから」
ジャスティン「それでみんないいのか?」
私「ストイックな社会なのよ」
日本のこのマナーは、今や世界で有名です。本当に。
でもって、同じようなマナーのある国の話を、聞いたことがありません。
みなさんに「郷に入らば」の典型例として語り継がれるだけです。
というわけで、電車のホームから落ちるような「歩きスマホ」の問題は、日本特有のものです。
ぶつからずにスクランブル交差点を渡れるだけでなく、目はスマホ画面を追っている日本人って、前方センサーでも付いているんじゃないかってほど、不思議な国の不思議な民であります。
一方でオーストラリアがどうなっているかというと、まさに日本の対極にあります。
電車の中だろうとスーパーの中だろうと、とにかくスマホで喋りまくります。
オーストラリア人は特別におしゃべり好きですから、全然止まらない。
スーパーの棚の前とか、邪魔なんだよね。
いきなり後ろから「元気〜?」なんて声がして、振り返ることもしばしばです。
このうるさいのは昔からです。まあ、慣れています。
ただね、シドニーではちょっと過剰です。
歩きながら、みんなが喋っているのよ。犯人はワイヤレスイヤホンとマイクの普及です。
道ゆく人がみんな、大声で笑いながら喋っている。
まあ、みんな前はちゃんと見ているから、危険なことはないんだけれど、男も女も、おじさんもお姉ちゃんも、とにかく喋りまくってます。
何をそんなに話すことがあるんだろうと、長電話が苦手な私は思います。
オーストラリア人はカフェが大好きで、毎日のように通っておしゃべりに興じるんだけど、ここでもコーヒーを抱えて、一人でおしゃべりする人を見かけるようになりました。
いいけどね、あのイヤホーン、絶対に外界の音を遮っているよ。
学校の昼休み、手を振っても反応しないヤツはたいてい電話中です。
電話が苦手な人間はどうすりゃいいんだ。
スマートフォンという、本来はしゃべるためのものを使ってメッセージのやり取りに夢中になる日本人は特殊だけれど、ハンズフリーをいいことに、喋り続けるオージーもまた異様です。
ちょっと想像してみてください。道の向こうからくる人々が、みんな大声で喋っているのよ。目は正面を見ているけど、焦点があっていないのがわかる。
次にはこれが、みんなウエラブルグラスになるわけだよね。スマホに接続しっぱなしの人間が、どこまで増えるんだろう。

