ゴールドコーストというと、青い海に沿って建ち並ぶ高層ビル群が有名です。
これが他のシティのビル群と違うのは、そのほとんどがタワマン、すなわち住居用だということです。
オーストラリアではこういうマンションを「ハイライズ」と読んで、憧れる人が少なからずいます。
アパート探しで、ゴールドコーストの中を車でグルグル回っていたときのことです。
ある交差点で停まった時に目に入ったビルがなんかね。
私「目の錯覚だと思うんだけど、あのビル斜めになっているように見えません?」
S「あ、あれ、本当に傾いているって噂があるんですよ」
私「マジか、ピサの斜塔かい」
S「そういえば似てますね、ハハハ」
いや笑い事じゃないんですよ。
今やスカイポイントとか言って、観光客にも人気のQ1ビル。
昔ゴールドコーストに住んでいたころ、建てていたんですけどね、なんか少し斜めになってるらしいってんで、工事が止まったという噂が流れたんですよ。
みんなで毎日眺めて「確かに工事が止まってる」って。
オーストラリアの建造物なんて、日本と比較するとおもちゃみたいなものです。
巨大な豪邸だって、ブロック積んでコンクリートで固めているだけなんだもん。
地震がないから、そんなんで良いわけなんですよ。
オーストラリアというのは、オーストラリアプレートのど真ん中にあります。
地震はプレートの境界、つまりプレートが沈み込むところで起きやすくなります。
日本なんか、3つのプレートが押し寄せてますからね。そりゃあ事情が全く違います。
ところが、オーストラリアも地震がゼロではありません。
その地震が今年の5月末にメルボルンで起きました。
マグニチュードは3.8だったんだけど、120年ぶりの規模の地震だとかで、オーストラリア人のみなさんは大騒ぎ。震度3くらいだと思うんだけど、騒ぎ方は震度5でした。
というわけで、ゴールドコーストでも可能性はゼロではありません。
S「ここで大きな地震が起きたら、無事なのは◯◯◯だけって言われてますね。
あそこは日本のハザマ組が建ててますから、鉄筋が太いんですよ」
S「ゴールドコーストってのは、なにしろ砂地に建ててますからね」
そうなんですよ。ここは砂地、湿地みたいなところに運河を作って宅地化した所です。
Sさんは元々日本の大手建設会社の社員で、そちらが専門です。
でも理系ってのは、これからそれを買おうという人間に気遣いがないんだよね。
こっちも理系頭だから、いいんだけどね。
私「真っ先は、やっぱりQ1ですか」
S「あれはもう、ひとたまりもないでしょうね」
30年以内に確実に来ると言われている、日本の首都直下型地震。
地中深く杭打ちがされているとはいっても、湾岸のタワマンが無傷で済むとは思えないんだよね。
でも地震が全く考慮されていないゴールドコーストも、なかなかスリリングではあります。
震度5くらい来たら、傾くヤツが結構出るんじゃないのかなあ。
頭の中に、立ち並ぶピサの斜塔のイメージ。
想像すると、なかなかシュールな光景であります。