更新がちょっと滞りました。
理由は新しく買うアパートの候補選びに集中していたためです。
毎日ウエブの世界を奔走し、その売主の代理人(不動産屋)に問い合わせ、インスペクション(内覧)の予定を打ち合わせ、そうこうしているうちにある物は売れ、ある物は買主のローンが成り立たず再び市場に戻り、あるものは好評で値が上がり・・・・。
そんなこんなで、ようやく12件のインスペクションのアポが確定し、各物件ごとのチェック事項をまとめた資料も作り、ボロボロに疲れた状態でゴールドコーストを目指したのです。
7月1日土曜日。この日はただの日ではありません。スクールホリデー、日本でいうところの夏休みの初日です。仕事の何十倍も休みを重視するオージーにとって、待ちに待った日でもあります。
いやあ、航空券高かったし、ホテルなんてほぼ満室だったよ。
3時40分に起きて荷物を作り、暗い中をシドニー空港に向かいます。着いたのは5時40分。
寒いシドニーから北へ(赤道方向へ)向かう人々で、空港はごった返していました。
事前にオンラインチェックインは済ませていますからね、機械にスマホをかざしてボーディングパスを出力するだけです。だけですが・・・、反応しないよ。なぜ?
そこにやたらデカいおばちゃんがやってきて、飛行機は欠航になった。あっちの列に並べと言います。
そんなの聞いてないよ〜。メールも来てないよ〜。
ウソでしょと思って電光掲示板を見ると、マジだ。やられた。
カートで混み合う列に並びます。
何が起きたの? この列はなんの列?
前後のオージーたちに聞きますが、みんなわからないと言います。
長い列は突き当たるとUターン、突き当たるとUターンを繰り返し、どうやらこの人混みは、見渡す限り列に並ぶ人々らしい。
これが国内線でよかったよ。こういうときオーストラリア人は、怒ったり割り込んだりしないからね。
もちろん、心穏やかではありません。この2週間、時間と体力を注ぎ込んでこぎ着けた、12件の内覧はどうなるのか。
でもね、もっと大きな不幸を前にすると、ショックは単なるため息に変わっていきます。
だって周りは子連れだよ。
眠っていたのを無理やり車に積み込まれ、空腹で寝不足で、めいっぱい不機嫌な子供たち。
これから始まる「ねえ、まだ〜」攻撃に備えて、親たちは必死の笑顔を振りまいています。
そのうち、伝言ゲームのように噂が流れてきました。
代わりの飛行機は水曜日になる!?
私の前にいる若いパパが、天を仰いで大きく両手を広げました。
けっきょくその列は、航空会社の仮設カウンターに繋がっていました。
航空券の振り替えです、私は1週間後のチケットに替えてもらいました。
不動産のインスペクションというのは、週末にやるのが普通なのよ。
帰ろうとすると、空港の中は押し寄せる人の波で、すごいことになっていました。
私の乗るはずだった便は、始発から1時間後のやつだったからね。今から来る連中は、いつまで並ぶことになるのやら。
何が起きたのか判明したのは、お昼になってニュースが一斉に報道をし始めてからでした。
そもそもの発端は、強風でシドニー空港の一部の滑走路が金曜日に封鎖されたこと。
土曜の朝にも強風は吹きました。
でもそれだけで、100便以上が欠航になったり遅れたりはしません。
テレビや新聞が伝えるように、その結果、ドミノ倒しが起きたんです。
つまりね、金曜にいくつかの便がシドニーから飛ばなかった。→そのため他空港では、来るはずの飛行機と乗務員が来なかった。
→土曜日にも風が吹いた。それで滑走路が1本封鎖されたのに加えて、他の空港から来るはずの便が欠航したり遅れた。→運悪くスクールホリデーの初日で、便数はマックスだった→不運が不運を呼び大混乱になった。→管制システムもパンク。
シドニーを起点に、午後になるころにはメルボルン、ブリスベンといった大都市に混乱が次々と伝播し、オーストラリア全体が大騒ぎになったわけです。
私はそんな報道より、とにかく疲れ果てていて、11時間くらい眠りました。
不動産は土日のインスペクションで売れますからね。
どの物件が残ったかとか、新しく市場に出る物件とかは、月曜にならないとわからないわけです。あー、また初めから何もかもやり直し。
そして本日は日曜日。
あきれたことに、事態はますます悪化しています。
ニュースが「カオス」という言葉を使っちゃってますよ。国じゅうが大混乱。
もうホリデー客だけではなく、月曜日に仕事で動く連中まで、どうなるかわからないんだって。あの水曜日のチケットを受け取った家族、再び中止にならなきゃいいけど。
日本だったら、こんなことは絶対に起きません。
オーストラリアの航空業界ではコロナ後、小さな混乱がしょっちゅう起きてきました。
去年、シドニーにアパート探しに来るときだって、ジェットスターが欠航になって、我々は初日のインスペクションを失ったんです。
息子の友人は、ケアンズに帰る便が欠航になって、もう一晩我が家に泊まったし。
だから今回はジェットスターを避け、わずかだけど高いヴァージンオーストラリア航空にしたのに。
なんでこんなことが起きるかというと、雇用形態の違いです。
コロナのロックダウンで、国内の行き来が止まったとき、オーストラリアの航空会社は大量に人員を解雇をしました。
解雇と言っても、失業者には国からたっぷりと手当が支払われたし、もともと離職と就職を繰り返すのが欧米の日常風景です。
クイーンズランド州の州境が開く前にオーストラリア舞い戻った私は、空港のカウンター職員たちが予行演習をしているのにびっくりしました。
みんな完璧にど素人だったんだもの。マックのバイトが挨拶を教わってるレベル。
新聞報道によると、今回の混乱では、パイロットや管制塔の人員不足まで言われています。
日本の航空会社は雇用を守るために、キャビンアテンダントたちをコールセンターや物販にまで派遣して話題になったけれど、だからこそすぐ元の業務に戻れたんです。
一方で、オーストラリアの元職員たちはどこにいっちゃったんでしょうか。
もっと楽しいと思える仕事についたか、ヨーロッパに行っちゃったか。
日本みたいに、手取りが半分になっても耐えてくれる従業員なんて、ここでは望めません。
今回の欠航は、いちおう天候が理由となっているので、泊まらなかったホテルの代金は弁償してもらえませんでした。
本当は航空会社の問題なのにさ。
働くのにはいいけれど、サービスを受ける側になると、これがオーストラリアの現実です。
さて次の土曜までに、混乱は終わっているんだろうか。