一度は慢性膵炎と診断された長男、家の近くの消化器内科クリニックに行ったはいいが、なかなか診断がおりない。
が、膵炎症状はあり、時々、食事が摂れなくなる。

血液検査とエコーでは慢性膵炎は否定的。CTで膵尾部に腫れが発見され、造影CTを撮った。
結果を聞きに行った長男、あきれ返ったような顔をして、淡々と報告する。
「それがさ、見事なまで真っ黒なんだよなあ…、その辺だけさ」
「黒い?そりゃ何だ?やばい物?」

「判らん。でさ、先生が『僕は癌研病院の出身なんだけどね、そこの部長が膵臓の第一人者だから、ちょっと診て貰って来るからね』ってさ」
「癌研?有明病院?え~、そうだっけ?」
「そうなのかな、よく判んね。『先生、それは膵臓じゃなくて、膵臓癌の第一人者じゃないですか?』って突っ込もうかと思ったんだけどさ」
「突っ込めばよかったじゃん。う~ん、しかし、何なんだろうなあ?先生が判らないもん、我々に判るはずもないけどねえ」

白状すれば、「ついて行かなくてよかった…」と思った。直接そんなことを聞いたら、間違いなくその場で顔面蒼白・思考停止する。
それだけならまだしも、取り乱して醜態をお見せすることになりかねない。

夕飯の仕度をしていると、長男がこそっと台所に入って来て「続き」を話し始める。一度には咀嚼しかねたのだろう。

「あのさ、『明日か明後日あたり聞いてみて結果を教えるから、携帯の番号教えろ』って言われたんだ」
「な、なに~~?」
「うん、多分、やばかったらすぐに入院とかしないといけないだろうからさ…」
「…まあ、そうなんだろうけど、部長先生だったらさ、マジでまずいとなったら、入院も検査もゴリ押しで突っ込んでくれるんじゃない?
そうだよ、ラッキーだよ、ラッキー。通常なら発見できない物が見つかって、早く治療できるんだから。大体、私がそう簡単に死なせるもんか、ふん」

実際には「私が~」云々と言った所で、何が出来るわけでもない。今回など低脂質の食事を作るのがせいぜいだ。
でも、そう思ってしまうのは、多分母親の本能だ。そして、その「母の一念、岩をも通す」が通じたのかどうか、長男に来た連絡は「癌じゃない」だった。

次の診察の時に、詳しい話が出るのだろう。「そのうち治る」が一番いいのだけれど、そう簡単ではなさそうな…。