右足足刀部の痺れから2日目、歩くと同時に右脚全体に疲労感が現れる。

歩行距離が長くなると痛みも併発してきた。後に分かったことだが、これは間欠跛行といって、wikiには「歩行などで下肢に負荷をかけると、次第に下肢の疼痛・しびれ・冷えを感じ、一時休息することにより症状が軽減し、再び運動が可能となること」とある。


 出勤して職場に着くまでに何度も休息をとった。お昼に社内の食堂への往復時にも同様に、休息をとりながらでないと職場へ戻れなかった。そんな私を見かねた上司が3日ほど有給を使って休んでみてはどうかと提案してくれた。そして3日間の有給に入った。



 3日間動けず。

当時まだ独身で、単身マンションに住んでいた私は、この有給期間中の食事は全て予めストックしてあった冷凍食品で賄うことにした。なにしろこの時すでに、間欠跛行の症状はより顕著になり、10歩も歩けば休息をとらなければ移動できないほどに右脚の痛みが強まっていた。自宅での移動は2足歩行から4足歩行へ…。スフィンクスの謎掛けに当てはまらない人間になってしまった。


 有給3日目

回復どころか悪化の一途を辿った3日間。次の日からの仕事も絶望的との判断で、上司に連絡を取り、有給の延長を申し出た。憂鬱な気分で夕食を済ませ、風呂に入る。湯船にて右脚をさする。指先が太ももにさしかかると…「!?」何だか形状がおかしいぞ!?視線を太ももに送ると、形状がおかしいと指先が教えた個所が凹んでいた。そして触れている感触も感じられなかった。

 

有給4日目

右足の痛みはピークに達していた。加えて太もも一部陥没に恐怖を覚えていた私は、インターネットで症状を検索した。『腰椎椎間板ヘルニア』これしかないと思い、と近所に住んでいた知人でヘルニア手術経験者に電話をかけた。そして知人が手術した病院が、自宅から比較的近い場所であることがわかった。電話を切り、食事を摂ろうと冷凍庫を開けた。冷凍食品は底を尽きていた。買い出しにも行くことができない。激痛。陥没。詰んだ状況の私には入院・手術しか頭に浮かばなかった。決意からの行動は早い。すぐに病院へ電話をかけて症状と入院希望を伝えると、快く了承してくれた。次に上司に電話をかけ、入院・手術の意向を伝えると、


 上司「そんな身体じゃあ運転して病院へ行けないだろ。仕事終わったら俺がつれていってやるよ」


有難いお言葉に甘えて身支度を済ませ、上司に連れられて病院へ向かった。病院では電話連絡もあり、入院への同意書を記入し、病棟へ。荷物を運んでくれた上司に感謝とお礼を伝えると、上司は励ましの言葉を私にかけて病院をあとにした。


病棟の看護師の話だと、すぐに手術にはならず、しばらく検査入院とのことだった。それよりも入院したことによって、食事が摂れる状況になったことに安堵を覚えていた。