島の家に帰ったときの写真が出てきた。 

もう手放してしまった場所だけど、 

画面の中では、まだ風が吹いている。

 

二拠点の暮らしが始まって、 

「帰る場所」がふたつあるって、 

こんなにも心が揺れるものなんだなって思う。

 

今日は、そのひとつの風景を、 

そっと置いておきます。

 

ここが、かつての“ただいま”の場所でした

 

門をくぐると、こんな庭が広がっていて…

 

台所からは、いつも湯気とお味噌の匂いがしてた。

今はもうない風景。でも、心の中では生きてる。

風の音も、光の匂いも、ちゃんとここに残ってる。

 だから私は、今日もふたつの場所に『ただいま』を言う。

かごの中で 茄子が笑う 

「今日はいい日だね」って 

花束も うんうんとうなずいて 

風に揺れる 黄色のデイジー

 

マルシェの通りは 小さな祝祭 

紙袋の音も おしゃべりみたい 

「これ、今朝とれたばかりよ」 

おばあちゃんの声が 陽だまりになる

 

うきうきは 足元からやってくる 

レジ袋の中で 未来が揺れてる 

今日のごちそうは きっと 

笑い声の味がする

 

A watercolor-style still life painting of a cheerful spring picnic scene. In the foreground, three glossy purple eggplants rest on a soft cloth. Behind them, a purple market bag with brown handles overflows with a vibrant bouquet of flowers, including yellow daisies, white daisies, and clusters of blue and pink hydrangeas. The background is bright and airy, with hints of a sunny day and a gentle breeze. The overall mood is light, joyful, and full of springtime energy.

一年ぶりの再会。 

茄子のつや、のらぼう菜の緑、花束のうた。 

マルシェの袋からこぼれた春を、 

うきうきのまま、絵にしてみました。

わたしの今日の台所には、春の恵みがそっと並んでる。 

とんがり帽子のような春キャベツは、きのこと一緒にオリーブオイルで炒めて、

白い平皿にふんわりと。 

きんかん「たまたま」は少し酸っぱくて、いちごは甘くてちょうど食べ頃。

ざるから手でつまんで、春をそのまま味わう贅沢。

 

スイスチャードの彩り、裏庭の長命草の新芽。 

その香りを摘んだ瞬間、わたしは深く息を吸い込む。 

かつて奄美の海岸で摘んだ長命草の記憶が、ふとよみがえる。 

治安の不安、環境の変化——その土地を離れた理由が、ようやく言葉になった。 

でも今、その記憶はもう、苦しみのままじゃない。 

香りに触れても、心は穏やかで、春の光の中にいる。

 

長命草をオリーブオイルでからっと炒める。 

それは、過去を抱きしめながら、今を生きるわたしの儀式。 

香りは変わらず、でも感じ方は変わっていく。 

それが、やさしい時間の流れ。