2年前のことですが……
2017年山おさめ 秩父の日向山
2017年、山おさめは、ハイキング程度の軽さで歩ける秩父の日向山(ヒナタヤマ)と決まった。
芦ヶ久保(アシガクボ)なる駅で降りる。
埼玉県在住30年にならんとするも、まだまだ全然埼玉のことを知らない私は、
「芦ヶ久保? どこそれ?」であった。
池袋駅から1時間半ちょい、やっと朝10時過ぎに着いた芦ヶ久保駅は、寒々しく閑散としていた。
でも、駅の脇には道の駅のようなものもある。
秩父周辺のパンフレットに、芦ヶ久保は極寒の冬は、滝が凍った「氷柱」が見どころだと宣伝されていた。
こんな感じ。
↓
(ネットより拝借画像)
大部分は今では人工的に水を撒く等などして作っているらしいが、
それでもこれだけの氷柱、なかなかの景観である。
しかし、我々がこの日歩くのは、氷柱のあるところではなく、(氷柱のあるところは駅からちょっと離れているようだ?)駅前の橋を渡った先にある日向山。
芦ヶ久保駅ですでに標高313m。そこから「農村公園」などを通って1時間15分ほどで日向山頂上633mへ到着。
多少無舗装の山道もあるものの、ほとんどがアスファルト舗装されており、
登山というほどの工程では全然なかった。
近くには果樹園などもあるらしく、季節季節にはフルーツを目当ての人々でにぎわうらしい。
歩き始めるや、
大きな観音さまも見え隠れ。
枯れ木の心地よい山道を進むと、巨大な滑り台のようなものが現れた。
50m、いや100mくらいあるんでない? だれが滑るのだろう? 外に遊具らしいものも見当たらず、公園だったのか、それとも何か工事のための滑り台(?)なのか、不明。
廃屋と化した社あり。
ところどころに〝廃れ“感漂う道は、それでも枯れ木の賑わいのある山道であった。
向こうに武甲山が望める。
枯葉を踏み踏み歩くハイキングは気持ちよいね。
武甲山は、なにやら形が変……。ギザギザになってる?
よーく見ると、きれいに段々になっている。
これはセメントを切り出した跡だとか!
後日調べたら、
「標高は1,304メートル。日本二百名山の一つ」というのに、
「武甲山は北側斜面が石灰岩質であり、石灰岩の採掘が盛んに行われている。石灰岩採掘により山容の変化が著しく、旧山頂は既に失われてしまった。
またこれにより旧山頂にあった縄文時代から近代までにいたる歴史のあった信仰遺跡、巨岩群も破壊され、完全に消滅してしまった。
天然記念物の高山植物群生地も大半が失われるなど植生の破壊も著しく、奥武蔵の名峰と称えられた往年の面影は既にない。」とな!
誰がそんなことしちゃったの? 馬鹿じゃなかろうか!
折角の山を台無しにしたのは、誰だ!?
麓の方にはセメント工場がいくつか見えた。
武甲山……その身を削って、セメント工場を支え、埼玉の人々を支えたというのか。
己の羽を抜いて織物を織った鶴のように、
武甲山はその容姿が変わってしまうほどにその身を埼玉の人々に捧げたのか。
経済的発展という名のもとに、人は長年慣れ親しんだ山をも食いつぶすのか。
……なんてことなど考えもせず、この時はただただ、寂しい〝廃れ“感をそこかしこに感じつつ、穏やかなほぼ舗装された山道を歩き、日向山の頂上633mに着いた。
呑気に記念写真。
風の強い日であったが、頂上の一角はその名の通り、日向で暖かく、周囲の山々もまぶしかった。
頂上でお昼を済ませ、トイレもないので早々に六番峠やマス釣り場などを通って武甲温泉(標高228m)を目指す。
途中無人の小さな社などもあり。「琴平大神」だって。
香川県の金毘羅(琴平)と関係があるのかな?
「ごみ捨て禁止」と看板がある道端の木の枝には、なんとボロボロになった赤い(赤かった)鳥居が捨てられているのであった。
「発砲注意」って、「熊に注意」「猪に注意」より怖い。
日向山のお陰か、一日中陽だまりの中を歩けた。
途中、猪がなん十匹も飼われている柵があった。……食用?
幅30㎝ほどの道の側溝には、なんとサンショウウオがっ!
(なぜか写真に撮っておらず。残念!)
廃れ感があちこちに感じられたけれど、その分、水がきれいなんだろうね。
卜雲寺や法長禅寺は立派なお寺だった。御朱印も味のあるいい手だった。(ハイキング途中なので、ゆっくり境内を見学する時間が全然なかったのだが。)
(卜雲寺)
(法長禅寺)
寺を過ぎると、武甲温泉の手前に「寺坂棚田」なるところがあるらしいのだったが、
道がちょっと反れて棚田は見られず。
武甲温泉で汗を流す。
ここはみなさん車でよく来るらしく、にぎわっていた。
大した山道でなくとも、山の後の温泉、どーしてこんなに気持ちがいいのだろう。最高だね。
そして、風呂上りに暮れ始めた空に見える白い月など、これもしみじみ目に沁みる。
枯れ木が月に手を振っているようだった。この風景を見られただけでも、日向山に来れてよかったなぁと思ったことだった。
山を歩くって、楽しいね。