2001年夫婦世界旅行のつづきです。8月半ば。バルセロナ5日目。火曜日。今日は「観光の日」と決めて、猛暑の中、歩き回っています。




part248 モンジュイックの丘


――地下道にご用心!




要約: バルセロナの街を一望できるというモンジュイックの丘に登ってみることにした。途中、地下鉄からケーブルカーの乗り場までの連絡地下通路で怪しい男2人にパスポートを取られそうになった。モンジュイックの頂上の眺めは予想外な面白さであった。









で、そこ(カサ・バトリョ)は早々に切り上げ、次の目的地、モンジュイックの丘(Montanya de Montjuic)へ向かった。バルセロナの街が一望できるという丘だ。




ガイドブックで行き方をチェック。なになに? まず、メトロに乗り、Paral-lel駅で下車し、フニクラ(ケーブルカー)に乗り、――これって「フニックリ・フニックラ~♪♪」と歌われる「フニクラ」なのかね~? などという疑問もフニフニ湧かせつつ――、さらにゴンドラに乗る? 





どれほど高い丘なのだ? って感じだが、とにかくレッツゴー。音譜




メトロを降り、ケーブルに乗り換えるべく地下道を歩いていた時のことだ。いきなり男が2人、我々の前に立ちはだかった。えっ




いかにも“係員”風情って感じ。ふんぞりかえって、「チケットを見せろ。パー」と威圧的に言ってきた。ガーン




チケット? メトロのチケットのことか? メトロのチケットは、今さっき改札を出てきたところなのだから、もう用はないはずだ。では、ケーブルのチケットか? しかし、我々はまだケーブルの「チケット売り場」にも辿り着いていない。こんな中途半端な場所で、一体何のチケットを見せろと言うのだ?はてなマーク




夫はメトロのチケットのことだろうと思い、鞄のポケットをごそごそ。すぐにメトロのチケットを出して見せた。




係員風情の男たちは黙ってメトロのチケットをチェックすると、そのチケットを我々に返しながら、今度は「パスポートを見せろ。グー」と言ってきた。むっ




もしその男がメトロの係員だとしても、どうしてパスポートなど見せなければならないのか。あきらかにおかしい。プンプン




大体メトロの改札を出た後でチケットを見せろと、そこら辺を歩いてきた男が言ってくること自体おかしい。思いっきりおかしいっ!パンチ!




夫がきっぱり「パスポートはNo!!爆弾」と言うと、意外にも男たちはスッと去って行った。よくよく見れば、着ている服も制服ではない。あああ、怪しいっ! あからさまに怪しいっ!!メラメラ





多分係員と思い込ませて、メトロのにしろケーブルカーのにしろ「チケット」を持ってもいないはずの観光客を狙って、「チケットを見せろ!」と脅し、最終的にパスポートを取り上げるつもりだったんじゃないか?えっ




我々の場合、夫が用済みのメトロのチケットをご丁寧にも捨てずに持っていたものだから、因縁がつけられなくて、おまけにパスポートの提示もはっきり拒否されたものだから、未遂で去っていったということだろう。むっ




 あああ。油断も隙もあったもんじゃないね。今日は――いやいや、「今日も」としておくか。特別サービス。――お手柄の夫であった。祝日




(これも、昔、2人仲良くバンコクで偽警官に思いっきり騙された苦い過去があったお陰だね。天使




さて、無事ケーブルに乗り込み、3分ほどでモンジェイク公園という駅に着いたはいいが、ケーブルの駅を出たところは、だたアスファルトの道が1本、右に左に伸びているだけ。





付近の地図もなければ、観光案内の詳しい説明があるわけでもなく、モンジュイック公園がどちらに行けばあるのかもわからない。(そこら辺すべてがモンジュイック公園だったのかもしれない。)




左に少し行ったところに観光用のバス乗り場があった。数十分置きに観光用の赤いバスが巡回しているようだ。赤くてかわいいバスだ。皆さん、そのバスへどんどん乗り込んでいく。ふむ。それに乗れば「公園」に連れて行ってくれるのだろうが、乗車代がえらく高い。ショック!




乗り込む人々もみんな裕福そうな中高年の白人ばかり。バックパッカーらしき若者はまるでデートでもしているように、勝手知ったるコースとばかり、バスには乗らず、そのまま道をぷらぷらと歩いていき、瞬く間に姿が見えなくなる。




とりあえず、まずはひたすら丘の頂上を目指すことにし、我々はゴンドラに乗り継いでみた。




ガイドブックをよくよく読むと、モンジェイクの丘は、途中のモンジュイック公園までケーブルが通っており、そこからはさらに別料金でゴンドラTelefèric に乗って頂上へ行ける方法が一つ。その他、港側の麓から丘の頂上を少し下った辺りまで、ロープーウエイで行く方法があるのだった。





お勧めのコースは、まずケーブルでモンジェイク公園まで行き、そこからゴンドラに乗って頂上へ。そして、少し丘を下って、そこからロープーウエイに乗って一気に麓まで降りてくるというものだった。




海を眺めながら丘肌を舐めるように一気に降りてくるのは気持ち良さそうだ。キラキラ




が、そうとは知らず、ケーブルのチケットを往復で買ってしまってあったので、残念ながらロープーウエイで降りてくる方法は取れない。残念。




しかし、ゴンドラだけでも充分楽しめた。ニコニコ




頂上に降り立つと、これまた右も左も分からないが、人々が移動していく方についていってみる。




既にそこはモンジュイック城Castell de Montjuicらしかった。すぐに要塞やら城やらが見えてきた。





モンジュイック城は要塞に囲まれたこじんまりとした古めかしい城で (一体何年に建てられたのか? 不思議とどのガイドブックを見ても城に関してもコメントがない。)、城の内部は今は軍事博物館Museu Militarになっている。「大砲、王の肖像がなどが展示されている」らしいが、そんなものに興味はないので、パス。





――中に入ってくれば、城の由来やらがわかっておもしろかったかもしれない。やっぱり入ってくればよかったと少々後悔。――




要塞からの眺めは最高だった。地中海が一望できた。地中海は紺碧に輝いて、麓の方の港は巨大な円柱形のタンクや色とりどりの倉庫がずらりと並んで、おもちゃの街を見ているようだった。コンビナートなのだろうか。宝石ブルー




赤茶色のレンガの要塞と緑濃い木々、青い地中海。時代がかった大砲に囲まれたモンジュイックの城。そんな風景からちょいと下を覗き込めば、埋立地の近代的コンビナート。丘の上と下とで別天地のアンバランスだが、不思議と嫌な感じはしない。宝石紫




反対方向はバルセロナの街が一望できる。ぎっしり詰まった街並みのなかから、サグラダ・ファミリア・教会がヒョヒョイとその先端を突き出してそびえている。宝石緑




海風が渡り、今となってはその用をなさない要塞の赤茶けたレンガ色の石壁と大砲の数々の静かさ。1トントラックの荷台を半分に切って、その中に大砲が一台取り付けてある。海の方に向けて“荷台”に開けられた穴に大砲の先が嵌められている。きっと海の向こうからは大砲のには見えないのだろう。爆弾




“荷台”に覆われておらず、海風に姿を晒している大砲もある。どれも小さな戦車ほどに大きい。これが大砲でなく、巨大な天体望遠鏡ならばよかったのに。世界には闘いの跡が常に残っている。海は敵がやってくるところでもあったことよ。爆弾




もはや敵艦を発見することもなく青く膨らんだ海と、近代的に開けたコンビナート(?)や街並みを見下ろす山頂でのひと時は、まるで気持ちのよいピクニックであった。キラキラ




夫は海を見てすっかり風邪が抜けたのか、元気溌剌でもっと歩きたそうであったが、今度は私の方が暑気負けか、ひどくだるくなってきてしまった。晴れガーン晴れ




気持ちはいいものの、体が気持ちについていけない。夫は風邪に弱く、妻は暑さに弱いのであった。専ら「徒歩」旅の夫婦なのに、体が脆弱な「とほほ」な夫婦であることよ。ガーン




で、仕方なく、城界隈を一通り見物したら、そのままモンジュイックの丘を降り、遅いランチを取って、おとなしくホテルに帰ったのだった。


つづく


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