２００１年夫婦世界旅行のつづきです。８月半ばのバルセロナ４日目。月曜日。今日も快晴。
ｐａｒｔ２４３ バルセロナのおいしい優しさ。
要約： 路地裏の美味しいパン屋で、見た目通りにおいしいパンを食べた。気さくなおじさんのお勧めのパンだ。ちょっとした触れ合いがとても優しいスペインなのであった。
今日は月曜日。パンが美味しい路地裏のカフェは営業していた。小さなショーウィンドーに焼き立ての調理パンが並んでいる。狭い間口に、今日も行列が出来ている。どれが美味しいかなぁ。どれも美味しそうだ。
アンチョビとブラックオリーブがふんだんに乗っている長方形のパンが目に留まった。「あれ、おいしそうだね？」 と指差して夫と相談していると、後ろに並んでいたおじさんが、我々の間にひょいと首を突っ込んできて、うんうん頷きながら親指をぐっと立てて、「ビエン（ｂｉｅｎ）、グゥード（ｇｏｏｄ）
」とのたまう。
「本当に？」 びっくりしながら聞き直す我々に、「うん、うん。うまいぞぉ！
」 と、イタリア人がよくやるように口をすぼめてその口に指先を持っていって食べる真似（「おいしい～♪ 」の仕草）をする。
おじさんは別に店の人ではない。我々と一緒に行列を作っているただの客だ。そのお方がお勧めとあらば、食べなくちゃ！ だ。グラシアス！ おじさん。
で、迷わずおじさんお勧めのアンチョビと黒オリーブのパンを頼んでみた。店員さんが皿に取り出してくれる。店の奥のカウンターのレジへ行く前におじさんを振り返ると、にっこり肯いている。目が「うまいぞぉ。♪」と笑っている。もう一度、グラシアス、おじさん。いい一日を。
こういうちょっとした気さくさは実に優しい。こうした優しさが我々にはとても嬉しい。こうしたちょっとした“触れ合い”は他のヨーロッパではありえなかった。大抵の街で、人々は「人のことなど、自分には関係ない。」って感じだった。
何か尋ねられてもいないのに、勝手に首を突っ込んで自分の意見を言ってくるなんて、まずありえない。（向こうから声を掛けてくる場合は、大抵ちょっと妙な人か、悪い奴だ。）
自分の知っていることは伝えたくなる、一緒に喜びたくなるという性格はスペイン独特ではないだろうか。ラテンの血ゆえか？ い～なぁ。好きだぞ、スペイン！
さて、おじさんに別れを告げ、間口の割に奥はかなり広い店のテーブル席に着き、頂く。やはりうまかった＾＾。特に黒オリーブがうまいっ。（“この店は席料を取らない”という嬉しさも、うまさに拍車をかけている。）
日本にいるとき、オリーブ好きの私でも、黒オリーブはあまりたくさんは食べられなかった。ちょっと瑞々しさに欠ける感じで、エグミさえ感じていた。
が、ヨーロッパ、特にスペインに入ってから、黒オリーブもバクバクいくつでも美味しく食べられてしまう。黒オリーブといえども瑞々しいのだ。オイリーなのだ（脂っこいという意味ではない）。全然エグクないのだ。まろやかなのだ。
スペインは本当～にオリーブが美味しい。日本で買うオリーブの瓶詰めだって多くはスペインからの輸入物なのに、全然味が違う。酸っぱ過ぎる。少々エグイ。輸出用の漬け汁に問題があるのだろうか？
スペインのスーパーで全く同じような瓶詰めのオリーブを買って食べたって、酸っぱいなんて思ったことはない。 （オリーブの種類も同じなのだが。）
スペインのオリーブは、まるで……クルミ！ クルミの風味に似ている。漬け汁の味が少しも邪魔しない。オリーブのこっくりと濃厚な木の実の風味。オリーブの木からの大切な贈り物を頂いているような感謝の気持ちに満たされる。柔らかい果肉を食べているという充実した歯ごたえ。あ～。オリーブがおいし～～～～～～っ！ 
オリーブに限らず、バルセロナには、ちょっとした温かいパンと飲み物が気軽にとれる店があって嬉しい。日曜日以外は、確実に美味しい店が開いている。人もいい。いいぞ、バルセロナ。
腹はごきげんに満ちたが、銀行口座から引き落とせる資金は底を着いてきた。日本から2箱分（84包）持ってきていた風邪薬も底を着いた。――ほとんど夫が服用したのだ。飲みすぎじゃないか？―― 
夫は風邪がぶり返したのか、今日はかなりだるそう。そこで、まず風邪薬を買い、それから、シティバンクの口座に資金を移動させるための手続きを今日の課題にし、あとは、ゆるゆるとその他の事務的な手続きをこなすにした。観光はお預けだ。
つづく
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