2001年夫婦世界旅行のつづきです。8月半ばの日曜日。バルセロナ3日目。やっと3つ星ホテルをチェック・アウトして……。




part236 闘牛チケットの選び方




要約: 新しいホテルにチェック・イン。早速街へ繰り出す。今日は闘牛の日。闘牛場へチケットを買いにいった。闘牛場の席は太陽(あるいは影)に支配されているのであった。







さぁ、気を取り直して、次なる宿へ移動だ。今度はメインストリートには面していないが、メインストリートから路地に入ったところにある1つ星ホテル。地の利はいい。チョキ




新しいホテルでのチェック・インも無事済ませて、まずは“腹ごしらえ”と街へ繰り出す。今日もいい天気だ。晴れ




しかし、昨日見つけた“パンが美味しい路地裏のカフェ”はお休みだった。ありゃりゃ。そうだった。今日は日曜日。日曜は、街はお休みなのだ。そうだ。ヨーロッパは徹底して「休むときは休む」のだ。グー




その他のカフェも軒並みシャッターを降ろしている。休みである。頼みの綱のエル・コルテ・イングレス・デパートも休みである。みーんな、休みである。




漸く見つけた小さなカフェは、びっくりするほど高かった。その上、パンもケーキも雑巾臭くて食べられたものではなかった……。大・失・敗。(もちろん残さず食べたが。)ガーン




スペインでは日曜日に働こうなんて奴は、“まとも”な奴ではないのかもしれない。




 またもや気を取り直して、闘牛のチケットを買いに行くことにした。「日曜だ」とがっかりしている暇はない。バルセロナでは、闘牛は日曜日の夕方にだけ催されるのだ。ドキドキ




で、チケットはというと、日曜日当日に闘牛場のチケット売り場まで直接買いに行かなければならないという。さぁ、闘牛場へレッツゴーだ。ニコニコ




闘牛場はサグラダ・ファミリア(聖家族教会)の近くにあった。旧市街のカタルーニャ広場からメトロで3つ目と近いのだが、メトロの乗り換えの地下道が長いこと、長いこと。




天井も低く、かなり曲がりくねった狭い地下道は、逃げ場がない。挟み撃ちにあったらアウトだ。人気(ひとけ)も少ない。




のんびり歩いていると、周りに人影がなくなる。あれ? 人が全然いなくなっちゃった? と思うと、向こうの曲がり角辺りに風(ふう)の悪い若い男がちろちろと体を壁に隠すように見え隠れしたりする。かなり物騒な感じ。ドクロ




で、なるべく他の人々に歩調を合わせ、乗降する人々の波に遅れないようにする。




我々はパリのメトロで慣れていたから、なんとなくやり過ごせたが、初めての海外旅行で利用するとしたら、結構びびったかもしれない。全部が全部物騒というわけではないが、ところどころかなり雰囲気の悪い一画があるのだ。




少々緊張しながらも、結局挟み撃ちにされることもなく、無事地上に出ることができた。




地上に出ると、そこは新市街地。くっきりと区画整備された碁盤の目の通りの向こうに、円形の闘牛場がすぐ目に入った。順調、順調。音譜




さて、まん丸の闘牛場(闘牛場は円柱形をしている)。どこがチケット売り場かと外壁に沿ってぐるりと周ってみる。と、人が列を作っている窓口があり、そこがチケット売り場と分かった。幾つか窓口はあるのだが、そのたった1つの窓口しか開いていない。




窓口のガラスに料金表が貼り出されているのだが、スペイン語の表記しかないので、どんな席なのかよく分からない。ガイドブックで予め席の種類などを勉強してきたので、それを頼りに見当をつける。




闘牛場の席は、闘牛場(グラウンド?)からの距離によって値段が違う。そして、さらに面白いことに、日向のソル席Sol)と日陰のソンブラ席(Sombra)、日向と日陰の半々のソルイソンブラ席(Sol y Sombra)との3種類に分かれているのだった。ショック!





夕方から始まる闘牛なのに、日が当たるか否かで、席料が変わるほど大きな違いがあるのか? と、びっくりだ。




日向席は安いが、陽射しが照り付けて暑く、写真も逆光でうまく撮れないという。日陰席はそうしたことがない分、料金が高い。しかし、曇った日に日陰席を買うのはスペインでは「田舎者」だという。




さて、空を見上げると、やや曇り勝ちながら午後の陽射しはサンサンと照りつけている。風が強く吹いているので涼しいが、風が止むや、ムァッと暑さが立ち上がって来る。晴れ




間をとって、最初は日が当たるが、太陽が移動して途中から日陰に入るというソルイソンブラの席にした。太陽も日陰も堪能できる。“1粒で2度おいしい”(?)席だ。ラブラブ




で、次は闘牛場(グラウンド)からの距離を選ぶ。“一番いい席”は1人11,000ペセタ(7,590円)もする。で、闘牛場のグラウンドに最も近い席の方は7,000ペセタ(4,830円)。こちらの方が“かぶりつき”で見られて迫力が味わえるだろうのに、安いのだ。やはり“危険”だからだろうか? 





余り財布に余裕もないことゆえ、我々は2番目に安い3,300ペセタ(2,277円)の「アンダナーダ」と呼ばれる席にした。一番安い席は800ペセタ(552円)であったが、余りに安いので“見にくい”ことが懸念されるのでやめておいた。





さて、買う席を心に決めたら、列に並ぶ。我々の前の客は韓国人らしい若いカップルだったが、ソルの2,000ペセタくらいの席を買ったらしい。彼らが買い終わると、料金表のその欄に赤いシールが張られた。売り切れたんだね。赤いシールを見ると、どうやら安い席からどんどん売れ切れて行くようだ。





そのカップルが窓口でチケットを買っている間に、列を無視して窓口に割り込もうとする男達2人、右から左からズイッズイッと体を寄せていた。




きちんと列が出来ているのに、どういうつもりか。韓国人カップルがチケットを手にして列を去るや、案の上、我々の前に左右から男達が割り込んできて、窓口の人に何やら言い始めた。




夫は「順番を守れっ!」と大声で注意したが、「わかった、わかった~。」という仕草をちょいとしてみせるだけで、一向身を引こうともしない。爆弾




男たちは窓口の人と二言三言(ふたことみこと)言葉を交すとすぐにいなくなったが、夫は昨日今日と相次ぐ“横入り野郎ども”にうんざりしていたのだろう。「もう~誰にも横入りはさせないぞっ!」とばかり、がばり、ピタリと窓口に食いついて、料金表に表示されているスペイン語をびしっと指差しながら、その席名をたどたどしくも大きな大きな大きな声で読み上げ、チケットを注文したのだった。




「今はっ・俺がっ・注文してい・る・ん・だ・か・ら・なっ! 誰も横から入ってきては、いけないっ! 寄るな、触るな、口出すなっっ!」 ってな雰囲気を思いっきり発散させながら、全身全霊振り絞るようにチケットを注文した。メラメラ




夫の大声がおかしかったのか、調子っぱずれのスペイン語がおかしかったのか、窓口の係りの人はやたらおかしそうに笑い出した。なんだ、なんだ? そんなにおかしかったか? 何がそんなに……? えっ




何か笑われていることは分かっても、何がおかしいのか問い正すのも面倒だ。とにかく“爽やかな暖かい笑顔”なのでよし!として、チケットも無事買えたのであった。




――窓口に突進してきて、ふごふご鼻息荒く、目も血走るばかりに大声でチケットを注文する夫の姿は、「闘牛の牛」を窓口の人に思い起こさせたのかもしれない? ま、「受けた」ようだから、いいや。――ニコニコ




           


つづく


        前へ
     次へ


Copyright © 2005 Chanti coco. All Rights Reserved.