8月29日、30日の二日間、
神奈川県秦野市の温泉旅館で行われた
王位戦第6局
第5局では
伝家の宝刀「四間飛車穴熊」採用で
堂々勝利した広瀬王位。
勝てば初の防衛という一局
しかし本局は
羽生二冠に形勢を渡し、
防衛はおあずけ。
戦いは最終局までもつれこむことになりましたね。
さて第6局2日目、
私はお昼休憩のあとに旅館に到着。
その頃控え室では圧倒的に
「広瀬有利」の声。
戦いが長くなるのかそれとも短いか、
旅館の準備を気にする女将さんにも、
「このぶんだと夕方4時には終わるかもしれません。」
と伝えられました。
しかし
旅館大広間で
大盤解説会が始まり、少しした頃…
「あれ?広瀬さん、そんなに有利じゃなくなっちゃった…?」
との検討が…。
(大盤解説は飯島栄治七段がメイン。)
解説会で次の一手を予想する
「次の一手クイズ」で出された49手目。
解説会では2六歩ではないか?
いやいやそれとも…?
と予想がでていましたが、
広瀬王位の一手は…「7八角打」。
飯島七段もびーっくりしていらっしゃいました。
しかし、あとの検討を聞きますと、
実はこの手は
あまりよくなかったのではないか…とささやかれ、
気づくと
もはや形勢がよくわからない状態に。
控え室の検討も、
長い時間、「よくわからないね」との声が
あがっていました。
★★★★★★★★★★★★★★★★★
それにしても、対局室の近くに用意された控え室は
両対局者の息づかいまでも感じられるような空間です。
すぐそこの扉をあけて廊下を行くと、
頭をつきあわせて考慮する両対局者が
いるんですものね
夕方6時頃、
再び大盤解説会場に行こうとすると、
廊下で女将とすれ違いました。
女将「どうなんでしょう」
私「よくわからないらしいです。」
女将「毎回、何時頃に終わると言われても
そこからだいたい2~3時間は伸びるんですよ」
と笑っておられました。
勝負の行方によって
従業員への業務指示が変わるんだと思います。
遅くなれば夜食の準備もあるし、
解説会場のコーヒーやお水の交換も続けるし
そしてやがて羽生二冠の形勢有利がはっきりとし、
午後7時すぎ、広瀬王位投了。
私は対局室に向かってすぐ走り出しましたが、
後ろから女将も走ってきた…
そしてフロントの奥で働く方々に向かって
「投了~!!」
と叫んでおられました。
きっと厨房の方などにもすぐ伝えられるんでしょうね。
旅館側のみなさんは
勝負をかげで支えているんですよね。
なんだかそれを強く思いました。
★★★★★★★★★★★★★★★★
対局室に向かうと、
もう女将がいらっしゃいました。
熱戦を終えた両対局者を
ねぎらっているかのようなたたずまいでした。
★★★★★★★★★★★★★★★★
ところで、
私が今回の第6局で拍手を送りたいのは
じつは飯島栄治七段です。
ずーっとお一人で
5時間以上も
大盤解説を引き受けておられる姿、
とても大変そうでした。
8月30日は
C級2組の順位戦があったため、
現地に棋士が少なかったのです。
塚田九段がときどき様子を見にいらしていましたが、
控え室での検討があるので
上にもどらなくてはなりません。
飯島七段は立ちっぱなし
しゃべりっぱなしで
お疲れになっただろうなあ…と
思いました。
でも、雑談でお客様が笑ってくれると
ほっとするとおっしゃっていましたよ
ぜひ今度大盤解説を見にいらっしゃる方は
積極的に質問したり、笑ったりすると
解説の先生がよろこぶかもしれません
ふう、少し長くなりました。
全然観戦記じゃないのですが…
現地に行かないと
感じられなかったことをかいてみようと思ったんです
ともかくフルセットに持ち込まれることになった王位戦。
勝負の行方をみんなで見守りたいですね