「ホーリー・モーターズ」

映画好きが映画の世界の凄さや奥深さや面白さを表現したら、こんなの出来ちゃいました...。

っていう作品。

真夜中にホテルの一室で目覚めたレオス・カラックスは、その部屋にある不思議な隠し扉を見つけた...。
汽笛とカモメの鳴き声が響いているその扉の中は、顔が分からない大勢の観客で埋め尽くされた映画館への入り口だった。
彼等が観ていた作品は、とても大変だが何でも自由に出来る芸術の世界を表したものだった...。

いやぁ〜、これはちょっと衝撃的な作品。

これほど映画の凄さをストレートに表現した作品は観たことがない。

あらゆる手法や技術を用いて、文学、美術、哲学、音楽、思想などを自由に表現して、映画というものは何でも出来る総合芸術の塊なんだ!っていうことを強く訴えている。
中でも凄いのは、一人で11役もの役を演じる役者のオスカー(ドニ・ラヴァン)。
年齢や立場の違う11人、金持ちの銀行家や物乞い女、ありふれた父親や殺人鬼などの役をリムジンの中で着替えながら気持ちを入れ替え、次々と苦もなく完璧に演技して見せている...。
唸ってしまうほどのとんでもない演技力。
これほど役者さんというものは凄いんだ...、芸術家でもあるんだ...と、感心してしまった。
さすがに一日で撮ったものではないだろうが、リムジンの中でオスカーが見せる表情は役者さんの苦労や厳しさ、その凄さを余すことなく観せてくれる。
ほんと、オスカーに値する演技。
さらには、特殊メイクや衣装なども、作品の中の一つの芸術として見ることも出来る。
モーション・キャプチャやアニメを使ったことも面白い。
各短編の中で完成された脚本や、映像、セット、ロケーション...。
全てがバラバラの物語なのだが、どの短編もその一つ一つの完成度はとても高い。
映画というものはいろんな複合的な要素が絡み合って一つの作品が成り立っている。
その表現方法は自由で何でも可能であり、好きなことを好きなだけ好きな形で作ることが出来る。それが映画という世界の魅力だということだろう。
途中で挿入された「ゴジラ」のテーマ曲には痺れた...。動物たちの演技もいい...。

総合芸術としての映画の凄さ、素晴らしさ、奥深さ、難しさ、役者さんの凄さをまざまざと見せつけられた。

この作品はカラックス監督が自身の映画愛、映画に対する情熱のありったけをぶつける為に作った作品だろう。

これは明らかに、映画好きによる映画好きの為の「映画礼賛作品」。

映画好きならこの凄さを納得してしまう...。
やっぱり映画ってのは素晴らしいと思い知らされる作品。

(あくまでも個人的な見解ですのでご了承ください。)

「ホーリー・モーターズ」 (2012年 フランス・ドイツ)

監督 レオン・カラックス
主演 ドニ・ラヴァン


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