フィクション小説「風の息」読み切りました

 

 

こちらのオール讀物6月号は、松本清張賞発表の号でした

選考委員の選評、受賞者の受賞記念エッセイ、有栖川有栖さん、宮部みゆきさん、北村薫さんによる、清張氏の歴史時代短編を選ぶ鼎談が載っていました

 

松本清張賞を受賞した井上先斗さんのエッセイが面白く、松本清張さん読んでみたいなあと思ったのでした

けれど膨大な作品の中からどれを読めばいいのだろうと思っていたところ

 

全く別のルートで、昭和27年に起きた「もく星号遭難事件」のことを知りました

 

この遭難事件

1985年に日本で起きた大きな墜落事故と非常に似ているのです

 

そしてこの「もく星号遭難事件」をノンフィクション、フィクションと両方で書かれた作家が松本清張氏なのです

 

540ページにわたるフィクション小説「風の息」には、登場人物達が情報を集め、事故の原因、背景を解き明かしてゆく姿が書かれていました

 

知識ゼロからのスタートでしたが、小説ということもあり、大枠についてはなんとか理解することができました

 

ふたつの事故の類似点は

 

デマが流れたこと

米軍が絡んでいたこと

一個人、企業など特定のものに原因が絞られたこと

重要な人物が搭乗していたこと

事故のデータが出されなかったこと(生データ含む)

事故の場所が近かったこと

 

どちらも事故の報告書などは出ています

けれど不明な点、不可解な点があります

それについては分かりようがないので置いておいて

自分が印象に残ったのはこの文章です

 

517p

軍が或る謀略を行なおうとするときは、たいてい民間人を使うものである。これはかつての日本陸軍を含め、世界各国の軍部がやってきたことである。

 

100嘘をついて、君(民間人)だけに本当のことを教えてあげる

と言われて聞いた話は

誰もが真実と思い込んでしまう

それを見越した上で「嘘」を流す

 

この作戦は今でも使われているのでしょうか

自分には分かりません

 

SNSが浸透し、もく星号遭難事件の時とは全く環境も変わりました

けれど、SNSを使ったデマは後を絶ちません

 

本当の情報などどこにあるのだろう

そんなものにたどり着けるのだろうか

 

辿り着けないようにできているのかもしれない

 

そう思いました

 

清張氏の「日本の黒い霧」という本には、様々な事件について記されています

膨大な資料を読み込み記述することは並大抵のことではありません

松本清張という作家の、凄まじい調査、筆力には心底頭が下がります

清張氏の他の作品も読んでいこうと思います