山田詠美さんのエッセイです
2018年8月から2021年6月までの「女性セブン」で連載されたものをまとめています
この時期といえば激動期
令和になった時と新型コロナウイルスによる混乱期がまるっと入っています
当時の記憶を呼び起こす、大事な保存版エッセイになりそうです
だって、読み返すとすでに過去のものになり忘れかけていたワードがざくざく
東京アラート
セクスィー環境大臣
復興五輪(いつの間にか五輪はコロナに打ち勝ったあかしに変化)
あったなあー今全然使わへんわ!というワードが他にもたくさん
大臣も世代交代して、過去の云々はもう話題にもなりません
足掛け4年のエッセイを一気読みするのはなかなかええもんです
さて、詠美さんのエッセイ、本当に気持ちがいいです
物事の判断基準がクール
全てにおいてかっこいい
差別を許さない毅然とした態度、無駄と思われる空間を愛でる、その心の豊かさ
どれも本当にそうだべ・・と共感できるものばかりでした
相手の立場に立って考える
その姿勢が随所に見られ、だからこそ詠美さんは高飛車になったりしないし(女王様にはなる)、人に対して偏見がなかったりするのだろうなと思いました
言葉尻番長と名乗る詠美さんは、言葉使いに大変厳しく、間違っていたり、いい大人が使う言葉でないものには容赦しません
そして英語のカタカナ表記がネイティブなのもかっこいい
ヴィタミン
ヴイジュアル
サンドウィッチ
下唇を噛んで発音するネイティブなヴィの発音で書かれた表記
さすが詠美さんです
文中には難解な漢字がたくさんできてきます
真摯(左上の漢字、辛だと思ってたら幸でした)
喧々諤々(けんけんがくがく)
未曾有(みぞう A元総理がみぞゆうと発音した言葉)
罵詈雑言(ばりぞうごん)
隔靴掻痒(かっかそうよう 靴の上から痒いところを掻くとうまく掻けないことから、もどかしい、はがゆいという意味 初めて知りました)
なんと詠美さんは原稿を手書きしてらっしゃいます
この漢字をサラリと手書きするって只者ではありません(実際只者ではない)あとがきに手書きの原稿がそのまま載せてあるのですが、物凄い漫画文字というか丸っこくて小学生が書いたのか?
という文字なのです
そしてきっちり!ええ、きっちりと漢字で書かれています
サインペンのような太いインクのもので書かれているのですが、
書き損じなど一つもありません
もしも下書きなしで直接書いたのだとしたら、とんでもなくすごい原稿だと思います(自分には修正の効かない一発書きは絶対できません)
文章のプロの恐ろしいほどの実力を見せつけられました
この本で、ヘェ〜と驚く知識を仕入れましたのでざっくりご紹介します
アンデスメロンの語源は「安心ですメロン」(アンデス山脈原産だからだと思っていた)
お酒のハイボールのハイは「輩」からきている
ビロウの語源は「尾籠(おこ)がましい」で、尾籠を音読みする人が圧倒的に多くなり定着したらしい わざわざ音読みかい!
何々「が」輩出する、が正しくて、何々「を」輩出するは間違い(自分も「を」が正しいと思ってました)
アラートは、軍隊なんかに警戒態勢を取らせるときの警報だそう
国民に対して使う言葉なのかな?この本で詠美さんは終始ユリコに厳しかったです(当然か)
潮時は「退け時」みたいに使われているけれど、本来は「ちょうど良い時期、好機」という意味 使い方を間違えると正反対になりますね
読みながら、知識を得たり、政治家への感想に深く同意したり、自分の価値観を押し付ける人に一緒に憤ったり、最後まで楽しく読みました
詠美さん、誕生日の関係で、配偶者の方との年齢が40代と60代だった時期があったそうです
かなり年下の配偶者なんですね(詠美さんは還暦)
でも読んでいて、全然歳の差は感じませんでした
配偶者の方は医療従事者とのことで、今もきっとご多忙でしょう
次に出るエッセイは、コロナ終息したエッセイが入っていますように