Bump of killer kids -46ページ目

バケツ

とても暑い日だった。男は近くの湖に飛び込みたくなった。
水着は持って来ていないが、周囲に人はいない。男は服を脱ぐと、水に入った。
冷たい水の中で泳ぐのはとても気持ちよい。

老婦人が二人、岸辺をこちらにやってきた。
男は慌てて水から上がると、砂浜に落ちていたバケツをつかんだ。
バケツで体の前を隠すと、やれやれとため息をついた。

老婦人たちは近くまで来ると、男をジロジロと見た。
男はきまり悪く、その場から消えてしまいたかった。
老婦人のひとりが言った。
「ねえあなた、わたし、人の心を読むことができるのよ」
「まさか」困惑した男が答えた。
「本当にぼくの考えていることが分かるんですか?」
「ええ」と老婦人。

「あなた、持っていらっしゃるそのバケツに底があると思っているわ」

ホクロ

子「ねぇお父さん、人間にはどうしてホクロがあるの?」
父「うん、いい質問だね。まず、私達が生きているこの宇宙。これは神様のホクロの
  1つに過ぎない。つまり、同じような宇宙が神様の体中にたくさん存在するんだ」
子「へぇ。僕たち神様のホクロの中に住んでるの?」
父「そうさ。そして私達人間のホクロもまた、1つ1つが小さな宇宙なんだ」
子「ええっ!?これ全部宇宙なの!?」
父「そうだよ。例えば知らない間にホクロが増えてることがあるだろう?」
子「うん、あるある」
父「あれはいわゆるビッグ・バンだ。こうして話してる今も、新しい宇宙、新しい命が
  私達の中で次々と生まれているんだよ。どうだ、素晴らしいと思わないかい?」
子「ふーん。じゃあ、おでこにあった大きなホクロを“かっこわるい”という理由で
  取っちゃったお父さんは最低の人間なんだね」
父「・・・・」
子「最低の人間なんだね」
父「・・・・」
子「無職かつ最低の人間なんだね」
父「無職は関係ないんじゃないか?」
子「寝るねおやすみ」
父「なぁ無職は関係ないんじゃないか?」

オチ屋

『オチ屋』という看板の店があったので入ってみた。


「いらっしゃい」
「ここは何を売ってる店だい?」
「ここは『話のオチ』を売ってるんですよ。恋人同士が結ばれるようなオーソドックスなものから、
宇宙が消滅するなんて荒唐無稽なものまで、どんなオチでも揃ってますよ」
「面白そうだな、ひとつ買ってみるか。一番安いのはどれだい?」
「一番安いのはこの『夢オチ』ですね。200円になります。毎度あり」

そこで私は目を覚ました。今までのことは全て夢だったのだ。