
郷里の先輩から句集を頂きました。差し向かいで鍋をホクホクつついてましたら、鰯のつみれも思わず飛び跳ねました。風の便りに初句集を発行されたと聞いてから密かに所望しておりました。合掌。
それから暫し時を待ち、栗満月の絹光を拝借して拝読しました。詩歌は月あかりのもとで味わうにかぎります。春は曙光、夏に蛍の光、秋月光、冬、窓の雪。
気配から先に倒れし春の斧
手が肩に髪が手に触れ雪蛍
書は散なり~すべからく心を境物に遊ばしめ懐抱を散逸す~弘法大師空海は書の真髄をあらわしましたが、これ万事一通。歌も散なり。
つるまずに一人行く身や秋の空
無常観こそ風雅の肝なり。
独り生まれ出で独り死に帰する理。その由を知らず流れ行く独りぼっちの命。
歌は人なり~役人、政治家、教育者という仕事を巡りながら、写真、文芸、落語、武道をたしなむ多才な石倉俊紀さんの句集「帰還」。人肌の燗酒を傍らに味わいたい歌の数々です。